講演情報
[27-O-A003-06]国境を越えて~共に築く介護~
大阪府 ○篠崎 開智, グェンドゥック チェン (介護老人保健施設 牧すこやかセンター)
【はじめに】 令和5年10月時点で、我が国の総人口は1億2,435万人、うち65歳以上の人口は、3,623万人となり、総人口に占める高齢化率も29.1%となった。ますます、高齢者が増加することが見込まれる中、日本介護福祉士養成施設協会は2024年度の介護福祉士養成施設への入学者の外国人留学生は、3,054人と前年度比1.7倍に増加したと発表した。一方で日本人の新卒者は、同21.5%減少、3,084人となっており、日本人介護職の人材不足が大きな課題となることが予想され、福祉現場で、外国人労働者が必要不可欠の状態となっている。 当施設では、10名の外国人介護職がともに働いている。そこで、現場を通じて、外国人職員との関わり方や業務に対する向き合い方に対して、自己研鑽シートを活用し、外国人職員をどう育成していくのか、新人教育の一つの方法として、ここに発表する。【目的】 外国人介護職の育成の中で、介護職としての当施設での役割や社会人としての意識が足りない部分があった。そこで、今年度5月より、評価期間を決め、対象の職員を選定し、自己研鑽シートを用いて、自己評価を行ってもらった。その内容に対して上司評価として、各フロア階の責任者が評価とコメントを記載し、フィードバックを行い、外国人職員がどのような努力をしているのか、何に困っているのかを調査、今後の指導の方向性の一つの目安とした。また、上司評価としてフィードバックすることで、教育する側の指導方法の見直しを目的に実施した。【内容】 今回の自己研鑽シートの項目は、新人教育として、『社会人としての自覚』、『介護の基本』、『自己研鑽』の基本となる内容で目標を設定し、実施した。 各フロア階に所属している、外国人介護職を対象にそれぞれのフロアで、評価を行い、自己分析を行ってもらった。 当施設の療養階は、2フロアで構成されており、各階に特色がある。2階では、身体介護を必要とされる利用者様が多くおられ、3階では生活リハビリを強化したフロアを目指しており、在宅復帰を目的とした利用者様が多くおられる。 それぞれのフロアで月初めに対象職員へ自己研鑽シートを配布し、2週間程度の期限を設け、自己評価を行ってもらった。その結果をもとに、月の後半で上司評価を行い、評価とコメントを記載して、フィードバックを行った。2階は、身体介護が必要となる場面が多く、利用者様のペースで介護を提供できているのか、身体機能と身体構造を把握して、安全に介護技術を提供できているのかが必要となる。利用者様のADL 把握のため、先輩職員とともに支援にあたり、身体介護技術の基礎の習得と現場での応用の習得を目指して教育を行った。2階では外国人介護職が多く在籍しているため、日本語の聞き取りが苦手な職員に対して、日本語の聞き取りが得意な外国人職員が母国語で説明する姿が見られた。 自己評価のフィードバック後、同じ目標で1か月間評価した結果、自己評価が上昇した。特に、業務に対して、自信を持って仕事ができていることが伺えた。外国人介護職が何に悩んでいるのかに関しては、特に日本語の聞き取りや言葉の理解に不安があることが分かった。3階は、利用者様の思いを汲み取り、ADLを低下させないよう生活リハビリを行っていく必要があり、臨機応変が求められる。コミュニケーション能力が必要で、日々の業務に加えて、利用者様の思いを聞きだし、それを先輩ワーカーに伝えることが求められるが、利用者様の言葉が聴き取れなかったり、意味が理解できなかったりと聞き流してしまっていたケースがあった。フィードバック後、積極的な利用者様との関わりが伺え、先輩ワーカーへの伝達や上司への報告する姿を多く見る機会が増えた。また、家族様の面会時の挨拶や内線の電話取次ぎする姿が多少見て取れた。【結果・考察】 それぞれのフロア環境は異なるが、両フロアに共通していた内容は、フィードバック後に各項目の自己評価が上昇していたことである。上司のコメントと評価を読んで、業務への向き合い方や自信につながった結果だと思われる。 課題としては、家族様への対応や電話の取次ぎ等の伝達が難しく、日本語の聞き取りや申し送り内容の漢字の読解力があげられる。外国人職員が抱える悩みと、上司評価での今後の課題となる内容は同じとなっており、外国人育成の大きな課題となった。 しかしながら、評価を行うことで、上司のコメントを意識した業務への取り組みの姿勢や業務内での伝達や積極的コミュニケーションの姿勢がみられ、いきいきとした現場の雰囲気になった。【おわりに】 今回改めて、フィードバック評価を行い、外国人介護職の真摯さに触れるきっかけとなった。今後の介護現場で外国人職員の力は必要であり、現場に向き合う姿勢は、我々日本人職員にとっても良い刺激になる。利用者様と向き合う姿勢であったり、正しい言葉の使い方であったり、見直す必要がある。 また、できないこと探しではなく、できることを伸ばしていくような、お互いに良い相乗効果となるような教育を目指していきたい。そして、利用者様や家族様との関わり方、専門用語や敬語の使い方等の教育方法を模索し、介護福祉士資格取得をサポートできるよう指導方法にも力を入れていきたい。 相手の思いに寄り添い、その方のその人らしい生活を支えていく介護の姿勢は、国境を越えても同じである。ともに築く介護の実現を目指して、自己研鑽に努め、今後の介護の在り方についても模索していきたい。ご清聴ありがとうございました。
