講演情報

[27-O-A004-06]「もう一度、口から食べたい」願いを叶えた多職種連携~家族の思いに寄り添った短期回復の一例~

岡山県 藤原 みどり, 玉木 晴菜 (老人保健施設 倉敷藤戸荘)
PDFダウンロードPDFダウンロード

<はじめに>
人は何のために生まれ、どう生き、どのように最期を迎えたいのか
そう考えたとき、多くの人が「最期まで元気で、好きなものを口から食べたい」と願うのではないでしょうか。

今回は、元々は離床して3食経口から自力摂取できていたご利用者が、入所中に誤嚥性肺炎で病院へ搬送され、経口摂取が不可となって退院後、当荘に再入所されるにあたり、ご家族の思いを尊重し、多職種連携での介入により短期間で車椅子に離床して3食経口摂取が出来るまでに回復された一例を報告する。

<方法>
(1)[ご家族の思い]の尊重
急変して救急搬送後、入院中に経口摂取すると誤嚥性肺炎を再発することから絶飲食となり、点滴処置のみでお看取り対応と判断されたご利用者。再入所前の面談時、ご家族はそれを受け入れることができていなかった。支援相談員やケアマネージャーとの面談で本当にお看取りの状態なのか、口から食べることはもうできないのか、胸の内をぽつりぽつりと話されるご家族。ご家族のお気持ちを聞き取ったうえで、身体機能や嚥下機能などをアセスメントさせていただき、ご本人にあったケアやリハビリなどの支援をさせていただくことを説明、再入所に至った。

(2)各職種の役割と取り組み
◯看護師
体調面の管理、医師の指示による点滴、バイタルチェック、口腔ケア
◯リハビリ
OT・PT:ベッド上対応で柵把持し声かけで寝返り、ベッド端座位→ティルトリクライニング車椅子への移乗動作訓練、座位保持練習などの身体機能リハ   
ST:嚥下評価、姿勢調整、食事形態UP、ミールラウンド
◯介護士
定時の体位交換、生活面援助、清拭、入浴、排泄ケア
◯週1回、訪問歯科診療より歯科衛生士の介入 

 →→→【当初の目標はお楽しみ程度でも経口摂取が可能になること!】

(3)経過 
再入所当初、絶飲食・点滴のみで1ヶ月程度経過していたため口腔内乾燥強く、汚染もあり。とても食事が摂れる状態ではなかった。まず医師と看護師が連携を取りながら体調面の管理や点滴投与、そのほかPTによるリハビリなども行われ、ご家族が安心できるよう状態報告もこまめに行っていた。

・再入所初日:改定水飲みテストや食物テスト施行、嚥下あり、むせなし、呼吸変化・嗄声なしを確認。
・2日目:水分濃いトロミ100mlから開始してみたところ全量摂取、高エネルギーゼリーも全量摂取可能だった
・4日目:昼食ミキサー粥半分量で摂取
・5日目:昼食時のみ離床・ミキサー食半量摂取開始
・8日目:昼食時に合わせてリクライニング車椅子での離床開始
・12日目:夕食(ミキサー食半量)とおやつも開始
・20日目:朝食(ミキサー食半量)開始、離床して3食プラスおやつ2回摂取可能

再入所後すぐに訪問歯科による歯科衛生士の介入のほか、STによる口腔内刺激(アイスマッサージ等)なども行っていた。この間発熱・ゴロ音なく、呼吸状態も問題なしで、体調面も安定、大きなトラブルなく経口摂取がスムーズにすすんでいった。

<結果・考察>
顔なじみの職員達の日々の声掛けと関わり、ご本人に合わせた個別ケアにより、体調面が安定し、徐々に水分だけでなく食事が摂れるようになった。今では3食離床して食事介助は必要なものの、全量摂取できるまでに回復しており、再入所から2ヶ月後には5秒程度の立位も可能となっている。
再入所前、経口摂取ができないだけで本当にお看取りの状態なのか疑問を感じられていたご家族も、経口摂取できるようになったご本人の様子をご覧になり大変喜ばれている。
お看取り対応で再入所されたが、徐々に以前のご本人の状態に近くなり、スタッフ一同も多職種連携で介入した効果を実感している。

他の症例でも認知症の進行により食事を拒否したり、高齢で老衰に近い状態の利用者も家族からの呼びかけや、日々の面会や差し入れにより食べる意欲が出たり、ふつうに食べられるようになったご利用者もいる。
誤嚥性肺炎を繰り返す利用者に対してもSTが介入し、水分・ゼリー等摂取の介助を行い、「口から食べる」楽しみを感じてもらえるよう取り組んでいる。

〈おわりに〉
体調を崩したり、身体機能が低下したとしても食事は栄養を摂取するための手段であると同時に、大きな楽しみの一つでもある。
老健施設では、さまざまな職種が連携して入所者を支える体制が整っている。私達にとってこれは大きな強みである。現在、当施設ではSTが3人おり、嚥下評価もその都度行うことが可能であり、ご本人の状態に合わせた食事やコミュニケーションのサポートが充実している。今後も「その人らしい」生活が送れるように、ご利用者一人ひとりに合わせた個別支援を、多職種で連携しながら続けていきたいと思う。