講演情報
[27-O-C001-03]海外の家族に会いたい~最後の思いを叶えるACP~
東京都 ○吉村 美幸, 中山 美紅, 管野 菜々子, 武藤 久子, 鈴木 麻希, 島田 健 (医療法人社団健育会 ライフサポートねりま)
はじめに
本人の思いに寄り添ったACP支援と最後の思いを実現出来た関りにより、「医療に頼らない健やかなターミナルケア」を実現出来た経過を振り返る。
症例紹介
A様 90代 女性 要介護4
入所期間:1年3ヶ月
疾患名:気管支喘息、逆流性食道炎、うっ血性心不全、大腸癌、不眠症、難聴
入所経緯:受傷前は家族の支援を受けながら独居生活を送っていた。自宅で転倒し骨折受傷後リハビリを含めた転帰先検討目的で入所。持病の悪化と共に意欲・耐久性のを認低下認め、本人の希望もあり看取りとなる。
入所中に聞かれた本人の発言
1自分で植えたお花を見ると元気になるから、お花を眺めて生活したい
2(コロナにおける感染対策のため)無理だけど海外の家族や孫に会いたい
3知らない人と最後は過ごしたくない
大好きな職員さんがいるここで最後を迎えたい、ここの施設で看取ってほしい
4辛いのは嫌だけど、高いお金がかかる治療(積極的な医療行為)はして欲しくない
ケア目標
1お花を愛でることが出来る環境を整え、笑顔のある生活を送る事が出来る
2海外・遠方の家族と本人のコミュニケーションを維持し、孤独感を軽減出来る
3当施設で親しくなったスタッフと一緒に過ごし、終末期を迎える事が出来る
4終末期における経口摂取困難に対して、医療行為に頼らないケアを受ける事が出来る
ケア計画
1ガーデニングチームと共同し、本人の鉢植えを用意し水やり等の日課を設定し介助する
2多職種でメッセージアプリを活用し海外・遠方の家族との時間を提供、面会調整を行う
3終末期における不定愁訴等にチームと協同しながら適時対応し、最後の時間を過ごす
4嗜好に合わせ食べたい物を食べたい時に本人のペースに合わせ提供する
喫食困難時は一口アイスを離床時に複数回提供する
結果
A様は自律心の強い性格で、集団レクレーションなど他者との関りが苦手であった。「私なんて」「家族も私を見捨てた」と悲観的な言動が多く見受けられスタッフとのコミュニケーションも円滑には進まなかった。関係性構築の為、居室にこもりがちな本人が離床の度にユマニチュードを用いて声かけを行い、孤独感を感じない様に関わりを継続した。スタッフとコミュニケーションを重ねる中で1-4の発言がみられ、体調不良後には4の発言を担当スタッフへ吐露していた。
1チューリップの鉢植え提供を行った事で、毎日自身の体調が良い時間を見て車椅子を自走し、ベランダでお花鑑賞後「辛い事があっても自分で植えたチューリップを見ると元気になる」と発言が聞かれた。表情も明るくなり笑顔で過ごされる事やスタッフとの会話も増加し感謝の手紙を頂いた。
2体調変化の中で難聴が悪化し電話でのコミュニケーションが困難となった。代替案としてメッセージアプリを活用した事で家族との繋がりを提供し「顔が見れて良かった。電話だと声が聞こえなくて困っていた」と話され、以後家族から見捨てられたという発言は消失した。
3終末期になり再現性のない疼痛訴えや気分不良等の不定愁訴を認めた。都度主治医と共有し診察を重ね、診察後は「先生がすぐ診てくれたの。良かった」と笑顔と安心の発言が見られた。
4食事摂取量の低下時には本人の発言を尊重し点滴加療等の医療行為は行わない方針となった。
摂取量低下直後は、元々の嗜好品である柿の種や、ラングドシャクッキー等と甘いコーヒーを補食提供しティータイムを楽しまれていた。
喫食困難後も一口アイスは好んで摂取出来た為、時間等に制限を設けず夜間でも多職種で複数回にわたり提供を行い「美味しい」「うれしい」と発言が聞かれた。
海外家族が帰国するまでに2週間程の期間を要したが、アイスによる水分・栄養補給を継続し“思い”を繋いだ。
家族到着後は20日間に渡り一緒の時間を穏やかに過ごされ、最後は家族に見守られながら安らかに逝去した。そして家族もエンゼルケアにも参加して頂け、退所後にはスタッフへ感謝のお言葉を頂いた。
考察
今回スタッフとの関係性構築のポイントとして鉢植え提供が一つのきっかけ作りとなった。高齢者における役割獲得は生きがいの創出やQOLの向上に繋がるとされており鉢植えのお世話という役割獲得が実現した事で、本人の発言からもQOLが向上したと考え、他者評価としても表情の変化や笑顔の増加を認めスタッフとの関係性構築が促進された。
A様は難聴悪化による、通話困難をきっかけにご家族様との連絡手段が途絶えた状態であった。
難聴によるコミュニケーション障害は、孤独感・孤立感を招きうつ病の発症リスクを伴う。メッセージアプリによるビデオ通話で遠方家族との連絡手段も獲得でき、家族との繋がりが再開した事で本人の発言からも孤独感・孤立感の消失へ繋がったと考える。
不定愁訴に対して、共感や傾聴対応が精神的ケアも含めて効果的であるとされており、特に主治医を中心に対応した事で不安感が軽減され、訴えの持続が緩和され最後の時間を穏やかに過ごす事が出来たと考える。
食べたい物を食べたい時に食べたい量だけを提供継続した事で、家族が到着までの2週間を乗り越えられた事が「医療に頼らない健やかなターミナルケア」の実現と「家族に会いたい」という最後の思いを叶える事が出来た。
最後に
本事例を通して、ACPにおける「本人の小さな声」を丁寧に拾い上げることの重要性を再認識した。今後も本人主体の穏やかな看取りを目指したACP支援を継続し、our teamでご利用者様の「輝きの一日」を提供していく。
本人の思いに寄り添ったACP支援と最後の思いを実現出来た関りにより、「医療に頼らない健やかなターミナルケア」を実現出来た経過を振り返る。
症例紹介
A様 90代 女性 要介護4
入所期間:1年3ヶ月
疾患名:気管支喘息、逆流性食道炎、うっ血性心不全、大腸癌、不眠症、難聴
入所経緯:受傷前は家族の支援を受けながら独居生活を送っていた。自宅で転倒し骨折受傷後リハビリを含めた転帰先検討目的で入所。持病の悪化と共に意欲・耐久性のを認低下認め、本人の希望もあり看取りとなる。
入所中に聞かれた本人の発言
1自分で植えたお花を見ると元気になるから、お花を眺めて生活したい
2(コロナにおける感染対策のため)無理だけど海外の家族や孫に会いたい
3知らない人と最後は過ごしたくない
大好きな職員さんがいるここで最後を迎えたい、ここの施設で看取ってほしい
4辛いのは嫌だけど、高いお金がかかる治療(積極的な医療行為)はして欲しくない
ケア目標
1お花を愛でることが出来る環境を整え、笑顔のある生活を送る事が出来る
2海外・遠方の家族と本人のコミュニケーションを維持し、孤独感を軽減出来る
3当施設で親しくなったスタッフと一緒に過ごし、終末期を迎える事が出来る
4終末期における経口摂取困難に対して、医療行為に頼らないケアを受ける事が出来る
ケア計画
1ガーデニングチームと共同し、本人の鉢植えを用意し水やり等の日課を設定し介助する
2多職種でメッセージアプリを活用し海外・遠方の家族との時間を提供、面会調整を行う
3終末期における不定愁訴等にチームと協同しながら適時対応し、最後の時間を過ごす
4嗜好に合わせ食べたい物を食べたい時に本人のペースに合わせ提供する
喫食困難時は一口アイスを離床時に複数回提供する
結果
A様は自律心の強い性格で、集団レクレーションなど他者との関りが苦手であった。「私なんて」「家族も私を見捨てた」と悲観的な言動が多く見受けられスタッフとのコミュニケーションも円滑には進まなかった。関係性構築の為、居室にこもりがちな本人が離床の度にユマニチュードを用いて声かけを行い、孤独感を感じない様に関わりを継続した。スタッフとコミュニケーションを重ねる中で1-4の発言がみられ、体調不良後には4の発言を担当スタッフへ吐露していた。
1チューリップの鉢植え提供を行った事で、毎日自身の体調が良い時間を見て車椅子を自走し、ベランダでお花鑑賞後「辛い事があっても自分で植えたチューリップを見ると元気になる」と発言が聞かれた。表情も明るくなり笑顔で過ごされる事やスタッフとの会話も増加し感謝の手紙を頂いた。
2体調変化の中で難聴が悪化し電話でのコミュニケーションが困難となった。代替案としてメッセージアプリを活用した事で家族との繋がりを提供し「顔が見れて良かった。電話だと声が聞こえなくて困っていた」と話され、以後家族から見捨てられたという発言は消失した。
3終末期になり再現性のない疼痛訴えや気分不良等の不定愁訴を認めた。都度主治医と共有し診察を重ね、診察後は「先生がすぐ診てくれたの。良かった」と笑顔と安心の発言が見られた。
4食事摂取量の低下時には本人の発言を尊重し点滴加療等の医療行為は行わない方針となった。
摂取量低下直後は、元々の嗜好品である柿の種や、ラングドシャクッキー等と甘いコーヒーを補食提供しティータイムを楽しまれていた。
喫食困難後も一口アイスは好んで摂取出来た為、時間等に制限を設けず夜間でも多職種で複数回にわたり提供を行い「美味しい」「うれしい」と発言が聞かれた。
海外家族が帰国するまでに2週間程の期間を要したが、アイスによる水分・栄養補給を継続し“思い”を繋いだ。
家族到着後は20日間に渡り一緒の時間を穏やかに過ごされ、最後は家族に見守られながら安らかに逝去した。そして家族もエンゼルケアにも参加して頂け、退所後にはスタッフへ感謝のお言葉を頂いた。
考察
今回スタッフとの関係性構築のポイントとして鉢植え提供が一つのきっかけ作りとなった。高齢者における役割獲得は生きがいの創出やQOLの向上に繋がるとされており鉢植えのお世話という役割獲得が実現した事で、本人の発言からもQOLが向上したと考え、他者評価としても表情の変化や笑顔の増加を認めスタッフとの関係性構築が促進された。
A様は難聴悪化による、通話困難をきっかけにご家族様との連絡手段が途絶えた状態であった。
難聴によるコミュニケーション障害は、孤独感・孤立感を招きうつ病の発症リスクを伴う。メッセージアプリによるビデオ通話で遠方家族との連絡手段も獲得でき、家族との繋がりが再開した事で本人の発言からも孤独感・孤立感の消失へ繋がったと考える。
不定愁訴に対して、共感や傾聴対応が精神的ケアも含めて効果的であるとされており、特に主治医を中心に対応した事で不安感が軽減され、訴えの持続が緩和され最後の時間を穏やかに過ごす事が出来たと考える。
食べたい物を食べたい時に食べたい量だけを提供継続した事で、家族が到着までの2週間を乗り越えられた事が「医療に頼らない健やかなターミナルケア」の実現と「家族に会いたい」という最後の思いを叶える事が出来た。
最後に
本事例を通して、ACPにおける「本人の小さな声」を丁寧に拾い上げることの重要性を再認識した。今後も本人主体の穏やかな看取りを目指したACP支援を継続し、our teamでご利用者様の「輝きの一日」を提供していく。
