講演情報

[27-O-C002-05]最後まで生きることを尊重する看取りケアを考える施設でのデスカンファレンスからの振り返り

高知県 西村 沙矢香, 野町 清佳, 野村 裕子, 小田 邦子 (介護老人保健施設リゾートヒルやわらぎ)
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【はじめに】
2006年看取り加算算定が始まって以降、当施設でも38名の看取りケアを行ってきた。そこで、これまでのデスカンファレンスを振り返り、今後の看取りケアの充実を図れるように示唆を得たいと考え、この研究に取り組んだ。
【方法】
38名中18名のデスカンファレンスの議事録から、利用者の属性の他、本人の言葉、家族の思い、最期の状況、職員の思い、実施したこと、反省点に分けて整理し更に分析【職員が良いケアを提供できたと思っていること】【今後どのようなケアを充実させていく必要があるのか】について当施設の強みと弱みを抽出した。【倫理的配慮】利用者・家族及び職員の個人が特定されないように配慮を行った。
【結果】
【職員が良いケアを提供できたと思っていること】は<本人とのコミュニケーション><安楽な姿勢や日常の環境を整えた><生きる心身のエネルギーとしての食事介入><自然のままの皮膚・身体状態の保持><家族が家族として最期まで寄り添えるようにサポート><多職種で関わっている意識を持つ>の6項目。【今後どのようなケアを充実させていく必要があるのか】><痛みのコントロール><ケア方法の工夫><ケア介入の不足><家族も一緒に看取りを行なえる工夫><職員のアンガーマネジメントや陰性感情の対応の仕方、グリーフケアについての教育支援>の6項目が抽出された。
【考察】
1. 職員が良いケアを提供できたと思っていること デスカンファレンス開始当初は、職員の思いが強い内容であった。次第に家族の思いを汲み取った内容に変化してきた。具体的には、<家族が家族として最期まで寄り添えるようにサポート >では、「家族の要望を出来る限り受け入れて、ギリギリまで食事の経口摂取やリハビリを行った。」「家族がゆっくり落ち着けるように、個室の提供に努めた。」「全身状態を把握して、家族に小まめに連絡・報告した。」等。このような変化は、小松らが、デスカンファレンス導入による看取りに関する意識の変化の中で、「…自分が提供してきた看護や介入の仕方、接し方を認めてもらうことで看取りにおいて患者や家族と積極的に関わりを持とうとする意識に変わったのではないか。」1)と、述べていることと一致している。その他、<安楽な姿勢や日常の環境を整えた>の中には、「最期まで体位変換や安楽なポジショニング、清潔の保持等、丁寧な関わりをした。」等のように、本人の思いを汲んだケア、普段通りの生活を維持することに価値を置いたケアを実践しているところが、当施設の良さであり、強みと考える。食に関しては、「素麺が食べたいという本人の思いに寄り添い、売店の素麺を時々購入して食べていただいた。」「本人が食べると言う意思表示に寄り添い、亡くなるギリギリまで食事介助した。」と言うように、<生きる心身のエネルギーとしての食事介入>を積極的に行っており、<自然のままの皮膚・身体状態の保持>では、「褥瘡、傷を作らなかった」と職員の思いとして多く抽出されており、ケアの質の指標にしている様子が伺える。2.今後どのようなケアを充実させていく必要があるのかこれは、先に述べた家族への対応も「たまたま個室を確保して提供できたが、いつも上手くいくとは限らない」「家族も3ヵ月の間に気持ちの変化が出てくるので傾聴し、カンファレンスを繰り返すことが必要である。」といった<家族も一緒に看取りを行なえる工夫>や、「家族より、ずっと付き添っているのに声がけがなく寂しかったと言われた。職員は、遠慮していた。」など<ケア介入の不足>といった改善点が示唆された。<本人とのコミュニケーション>は、「本人がお話し好きな方で、ぎりぎりまで車椅子へ移乗をして、ホールで一緒にお話をした。」「再々手を握った。」と言うように言語的、非言語的コミュニケーションの介入は行っているが、本人の言葉の記録が少なく、人生最期と向き合う本人の思いを受容する関係性の構築には至っていないのかもしれない。<痛みのコントロール>については、医師、薬剤師への相談や、緩和ケアの充実が課題として見えてきた。食に関しては先に述べた通り、「全量摂取」を当たり前と思う風潮はぬぐえず、「嚥下状態が悪いのか、覚醒状態が悪いのか、呑み込みが可能なのか見極めが難しかった。」や、<グリーフケアについての教育支援>では、「食事介助中に嘔吐、心停止が起きた事例は、誤嚥ではなく心停止が先に来たと説明を受けたが、食事介助中の出来事で気づいてあげられなかったと悔やまれる。…」という内容があり、最後まで生きることを尊重することと食事介助とのジレンマだと捉える。これらのことから、当施設は、<多職種で関わっている意識を持つ>ことは出来ているが、各専門職の専門性が十分看取りで活かされているとは言えない現状があるといえる。各専門職が看取りケアを追求し実践するようになると、各利用者の個別性を活かしたケアの更なる充実に繋がるのではないだろうかと考える。
【まとめ】
今回、デスカンファレンスの議事録を分析し直すことで、当施設の強み、弱みが明確化してきたので、これを今後の看取りケアに活かしたいと考えている。
【引用文献】
1) 小松朋子ら:デスカンファレンス導入による看取りに関する意識の変化、第47回日本看護学会論文 慢性期看護、p49、2017.
【参考文献】
2) 和田圭子:家族の「心の揺れ」を支援する“看取り期”に望まれる実際のケア、全国高齢者施設看護師会、2003年7月版・第3回-AB、3) 小川糸:ライオンのおやつ、(株)ポプラ社、2020.4.7. 第13刷、発行4) 長谷川未帆子ら:介護保険における栄養ケア・マネジメントのあり方と「低栄養リスク」「誤嚥性肺炎による入院」「経口維持の看取り」「在宅復帰」との関連:2019年度全国施設横断調査から」、日本健康・栄養システム学会誌、p18-19、Vol.20、No.2、2021.