講演情報
[27-O-C003-02]眠りSCANによる死亡時期の推定の試み~円滑な看取り介護を目指して~
福岡県 ○久保 真一 (ケアセンター ひまわり苑)
【はじめに】
介護老人保健施設(老健)は、要介護高齢者が自宅復帰を目指すための施設であることは言うまでもない。一方、超高齢社会の到来のなか、老健が、人生の最期を看取る役割を担うことが求められており、2006年には、看取り介護加算も導入されている。医療と介護の役割分担が進むなか、地域医療構想のもと病床数が制限された結果、病院・診療所での死亡数は年間100万人程度にとどまっている。一方、病院外での死亡数は増加しており、50万人を超え、60万人に達しようとしている。今後、老健における看取りが一層求められるものと考える。
しかし、医療資源が限られている老健では、看取りの対応は負担となる。私たち、ひまわり苑は、認知症専門棟40床、一般病棟60床の利用者100人に対し、夜間帯は看護師1名、介護福祉士4名で対応し、入眠後は1時間に1回の呼吸確認の巡視を行っている。このような現状で、円滑な看取りの体制を築くことは大きな課題である。
ひまわり苑では、令和6年4月より、シート型体振動計(以下、眠りSCAN)を導入し、利用者の見守りの利用を開始している。眠りSCANの導入を機会に、睡眠や心拍・呼吸のモニタリング機能を看取りに利用できなかを検討したので報告する。
なお、本研究の一部は、令和6年9月の第7回日本法医病理学会全国集会で発表した。
【研究方法】
1.症例
令和6年7月以降、看取りの対象となった入所者のうち眠りSCANを装着した12名を対象とした。性別は男性1名、女性11名で、年齢は平均92.3歳(標準偏差5.12歳)、要介護度は平均4.4(標準偏差0.6)であった。対象となった看取り症例12例全例が、認知症や脳血管障害から、嚥下障害・拒食となり、看取りとなった症例だった。
2.眠りSCANデータ
眠りSCANから、睡眠状態・心拍数・呼吸数のデータを得た。眠りSCANの睡眠・呼吸・心拍の画面では、睡眠では紺色が睡眠、茶色が覚醒である。呼吸は、毎分30回以上が赤、8回以下が青、心拍は、毎分120回以上が赤、40回以下が青色となっており、回数により、赤から黄色、緑、青の順となっている。睡眠状態、呼吸数・心拍数が視覚的に把握でき便利である。
3.血圧・体温・SpO2・Body mass index(BMI)
看護業務で得られたバイタルデータは、電子カルテほのぼのNEXTから入手した。
【研究結果】
12例中死亡前の睡眠状態が異なる2例を例示する。症例2では、睡眠は覚醒時間が多く、呼吸では連日、呼吸数が多い状態が繰り返されている。心拍は死亡前に頻拍となり、死亡直前には心拍は減少している。症例4は睡眠状態が長く、呼吸は死亡前に回数が増加し、死亡直前に減少している。心拍は頻拍の時間帯が死亡の前日、前々日にも認められる。
1.心拍数
全例で、死亡前では心拍数は不安定で、死亡時期を予測させる明らかな特徴を認めなかった。
2.呼吸数
12例中9例において呼吸数が30~40回/分と上昇し、その後減少に転じてから死亡してした。そこで呼吸数のグラフから、増加した呼吸数が減少に転じた時点から死亡時点までの時間を求めた。その結果、呼吸数が減少に転じてから死亡までの時間は、21.8分から130.9分で、平均で58.4分、中央値で49.1分であった。即ち、眠りSCANの呼吸数の画面で、赤色から黄色、さらに緑色に変化したら、死期が迫っていると予測できるものと考えられた。しかし、症例によっては呼吸数の画面で赤色から黄色に変化する場面が繰り返し認められるものもある。そこで、死亡を予測することができる他の情報がないか、さらに検討した。
3.体温
12例中9例で死亡24時間以内に体温が37.5℃を超えていた。このうち8例は死亡前12時間以内で、7例は38℃を超えていた。37.5℃を超える発熱があると、死期が迫っていると予測できるものと考えられた。一方、心拍数と同様に、死亡前24時間の血圧、SpO2の変化に死亡を予期させるような、明らかな特徴を認めなかった。
4.BMI
呼吸数が低下して死亡するまでの時間が短い症例と長い症例の違いについて検討した。そこで、BMIと呼吸数低下から死亡までの時間の関係を分析した。その結果、死亡前半年間のBMIの減少率が少ない人、即ち、もともと痩せている人の方が、死期が早い傾向があった。
5.血圧・SpO2
血圧・SpO2の変化に、死亡時期を予測させる明らかな特徴を認めなかった。
【まとめ/眠りSCANによる看取りの進め方】
(1)「呼吸」のモニター画面を確認するこ。(2)「呼吸」が赤色が持続または赤色が頻発すると死期が近いと判断する(家族に連絡する・職員で共有する)。特に、体温が37.5(38)℃の以上となった場合は、死期が近いと判断できる。(3)「呼吸」が赤色から黄色に変わったら死亡が間近に迫っていると判断する(家族に連絡する・職員で共有する)。(4)心拍と呼吸の停止時刻は、死亡時刻と考えられる。
(5)BMIの死亡前半年間の減少率が少ない人、即ち、もともと痩せている人の方が、死期が早い傾向があった。
【さいごに】
眠りSCANは、死亡時期の予測、死亡時刻の判断に有効と考える。ひまわり苑では、看取り介護において、医師・看護・介護職員とも、眠りSCANのデータを見ながら業務し、データをもとに、家族への連絡など、看取りの対応に当たっている。引き続き、眠りSCANの看取りへの活用方法を検討する予定です。
介護老人保健施設(老健)は、要介護高齢者が自宅復帰を目指すための施設であることは言うまでもない。一方、超高齢社会の到来のなか、老健が、人生の最期を看取る役割を担うことが求められており、2006年には、看取り介護加算も導入されている。医療と介護の役割分担が進むなか、地域医療構想のもと病床数が制限された結果、病院・診療所での死亡数は年間100万人程度にとどまっている。一方、病院外での死亡数は増加しており、50万人を超え、60万人に達しようとしている。今後、老健における看取りが一層求められるものと考える。
しかし、医療資源が限られている老健では、看取りの対応は負担となる。私たち、ひまわり苑は、認知症専門棟40床、一般病棟60床の利用者100人に対し、夜間帯は看護師1名、介護福祉士4名で対応し、入眠後は1時間に1回の呼吸確認の巡視を行っている。このような現状で、円滑な看取りの体制を築くことは大きな課題である。
ひまわり苑では、令和6年4月より、シート型体振動計(以下、眠りSCAN)を導入し、利用者の見守りの利用を開始している。眠りSCANの導入を機会に、睡眠や心拍・呼吸のモニタリング機能を看取りに利用できなかを検討したので報告する。
なお、本研究の一部は、令和6年9月の第7回日本法医病理学会全国集会で発表した。
【研究方法】
1.症例
令和6年7月以降、看取りの対象となった入所者のうち眠りSCANを装着した12名を対象とした。性別は男性1名、女性11名で、年齢は平均92.3歳(標準偏差5.12歳)、要介護度は平均4.4(標準偏差0.6)であった。対象となった看取り症例12例全例が、認知症や脳血管障害から、嚥下障害・拒食となり、看取りとなった症例だった。
2.眠りSCANデータ
眠りSCANから、睡眠状態・心拍数・呼吸数のデータを得た。眠りSCANの睡眠・呼吸・心拍の画面では、睡眠では紺色が睡眠、茶色が覚醒である。呼吸は、毎分30回以上が赤、8回以下が青、心拍は、毎分120回以上が赤、40回以下が青色となっており、回数により、赤から黄色、緑、青の順となっている。睡眠状態、呼吸数・心拍数が視覚的に把握でき便利である。
3.血圧・体温・SpO2・Body mass index(BMI)
看護業務で得られたバイタルデータは、電子カルテほのぼのNEXTから入手した。
【研究結果】
12例中死亡前の睡眠状態が異なる2例を例示する。症例2では、睡眠は覚醒時間が多く、呼吸では連日、呼吸数が多い状態が繰り返されている。心拍は死亡前に頻拍となり、死亡直前には心拍は減少している。症例4は睡眠状態が長く、呼吸は死亡前に回数が増加し、死亡直前に減少している。心拍は頻拍の時間帯が死亡の前日、前々日にも認められる。
1.心拍数
全例で、死亡前では心拍数は不安定で、死亡時期を予測させる明らかな特徴を認めなかった。
2.呼吸数
12例中9例において呼吸数が30~40回/分と上昇し、その後減少に転じてから死亡してした。そこで呼吸数のグラフから、増加した呼吸数が減少に転じた時点から死亡時点までの時間を求めた。その結果、呼吸数が減少に転じてから死亡までの時間は、21.8分から130.9分で、平均で58.4分、中央値で49.1分であった。即ち、眠りSCANの呼吸数の画面で、赤色から黄色、さらに緑色に変化したら、死期が迫っていると予測できるものと考えられた。しかし、症例によっては呼吸数の画面で赤色から黄色に変化する場面が繰り返し認められるものもある。そこで、死亡を予測することができる他の情報がないか、さらに検討した。
3.体温
12例中9例で死亡24時間以内に体温が37.5℃を超えていた。このうち8例は死亡前12時間以内で、7例は38℃を超えていた。37.5℃を超える発熱があると、死期が迫っていると予測できるものと考えられた。一方、心拍数と同様に、死亡前24時間の血圧、SpO2の変化に死亡を予期させるような、明らかな特徴を認めなかった。
4.BMI
呼吸数が低下して死亡するまでの時間が短い症例と長い症例の違いについて検討した。そこで、BMIと呼吸数低下から死亡までの時間の関係を分析した。その結果、死亡前半年間のBMIの減少率が少ない人、即ち、もともと痩せている人の方が、死期が早い傾向があった。
5.血圧・SpO2
血圧・SpO2の変化に、死亡時期を予測させる明らかな特徴を認めなかった。
【まとめ/眠りSCANによる看取りの進め方】
(1)「呼吸」のモニター画面を確認するこ。(2)「呼吸」が赤色が持続または赤色が頻発すると死期が近いと判断する(家族に連絡する・職員で共有する)。特に、体温が37.5(38)℃の以上となった場合は、死期が近いと判断できる。(3)「呼吸」が赤色から黄色に変わったら死亡が間近に迫っていると判断する(家族に連絡する・職員で共有する)。(4)心拍と呼吸の停止時刻は、死亡時刻と考えられる。
(5)BMIの死亡前半年間の減少率が少ない人、即ち、もともと痩せている人の方が、死期が早い傾向があった。
【さいごに】
眠りSCANは、死亡時期の予測、死亡時刻の判断に有効と考える。ひまわり苑では、看取り介護において、医師・看護・介護職員とも、眠りSCANのデータを見ながら業務し、データをもとに、家族への連絡など、看取りの対応に当たっている。引き続き、眠りSCANの看取りへの活用方法を検討する予定です。
