講演情報

[27-O-C003-06]看取りケア~心通う支援を目指して~

東京都 若林 呼夏, 鈴木 悠介 (介護老人保健施設 東大和ケアセンター)
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【はじめに】  
介護老人保健施設における看取りケアでは、医療的視点だけでなく、介護福祉士としての生活支援の視点から、どのように「その人らしい時間」を支えるかが重要な課題となっている。より質の高い看取りケアと家族の満足度向上を目指すため、現状を見直す必要があると感じ課題解決に向けた取り組みを報告する。

【目的】  
看取りケアにおける介護福祉士の支援のあり方を見直し、家族との心の通った関わりを実現することを目指す。

【方法】
看取りケアに対しての抵抗感や利用者・家族とのコミュニケーションについてのアンケートを職員へ実施したところ、コミュニケーションが充分に取れていないと感じている職員が多かったことから「家族との連絡ノート」を導入した。
職員・家族の負担を考え、ノートはB6サイズとし、形式やルールを設けず、日常の様子や会話内容、家族へのお願いなどを自由に記載。専門用語を避け、温かみのある表現を心がけた。
家族へはより良いケアにつなげる事を目的として、利用者への関わり方・してあげて欲しい事・今の気持ち等、自由に記載してもらうようお願いした。2か月後、再度職員へのアンケートを行い、ノートの記載内容とともに評価した。

【事例1】
Aさん(91歳・女性)看取り期間4ヶ月経過。発語は少ないが声かけには反応がある。自宅で飼っていた犬の写真を居室に飾り、写真を見ながら話しかけるといつもとは違う笑顔が見られた。この様子をノートに記載したところ、後日、お孫さんから「ばあちゃんだいすき」というメッセージ付きの数枚の写真をコラージュしたパネルが届けられた。ニコニコとうれしそうに眺めている様子をノートに記載したところ、家族に喜んでもらうことが出来た。以後、ノートには行事に参加した際の写真貼付やスタッフの創意工夫による記録が日常化した。家族からは「普段の様子がわかって嬉しい」との声があった。

【事例2】
Bさん(94歳・男性)看取り期間1ヶ月経過。ベッド上での生活となり、全介助の状態。ノート導入後数日で、家族から「体位交換表と体の向きが逆の時がある」「水分補給はどう行っているのか」との質問が記載された。直接尋ねずノート経由であったことから、「ケアに対する不信感があるのではないか」「職員が忙しそうにしていた為、聞きづらかったのではないか」などの意見が上がった。忙しい中でも積極的に家族とコミュニケーションを取ることの重要性を改めて認識する機会となった。

【結果】 
ノートの活用に関して職員からは、「家族から感謝の言葉をもらえて嬉しかった」「また頑張ろうと思えた」「看取りケアに前向きな気持ちになった」との声が多く聞かれた。ノートという間接的な情報共有を通じて家族からの安心感や感謝の気持ちが職員に伝わる機会が増えたことは、職員の喜びや、やりがいに繋がった。
一方で「毎回同じ内容になりやすい」「ノートを記入する時間が十分に取れない」「記載者が偏る」といった課題も明らかとなった。
家族とのコミュニケーション時間に関するアンケート結果は「~5分以下」と回答した職員が約7割であった。これはノート導入前と後でも変化がなかった。

【考察】
ノートの導入により、「自分は今、利用者と家族の大切な時間に関わっている」という意識が高まったと言える。
ノートの活用以前は、看取りケアを“看護師中心”のものと捉えがちであった職員も多く、利用者の最期にどう関わるかが明確でないまま、業務の一貫としてケアを行っていた職員もいた。この取り組みを通して介護福祉士として出来る事、自分だからこそ気づけたことに意識を向けることが出来る職員が増え、看取りケアへの主体的な関わりに繋がった。
ただ看取りケアをするのではなく、「最期の時間をどう共に過ごすか」「家族が安心して最期を迎えられるか」という視点に立ち返ることが出来た点は、施設全体の看取りケアの質の向上に大きく影響を与えた。
介護福祉士は日常の中にある温もりや個別性を見逃さず、家族とともに“終末期”を支えていく支援者であるべきだと実感した。連絡ノートはそのための1つの有効なツールであり、今後も活用を継続していく必要があると感じている。
記録の簡素化や共有のルール化、記入の役割分担などを工夫し、日常業務と両立できる継続可能な体制づくりが求められる。

【まとめ】
看取りケアとは、人生の最終段階を迎えた利用者が安心して過ごし、家族が納得のいく形で見送ることができるよう支援する、人間的なケアである。そのため、医師、看護師が行う医療的支援だけでなく、その人の人生を尊重し、「最期までその人らしく生きる」ことを支援することは介護福祉士が深く関わる意義があると言える。ノートの活用は継続しつつも、利用者・家族と直接的なコミュニケーションをとる機会を増やす努力も必要である。利用者と家族に寄り添い、心通う看取りケアの提供ができる施設として今後も取り組んでいきたい。