講演情報
[27-O-C004-04]通所リハビリテーションにおける終末期支援~「最期までデイケアに通いたい」~
京都府 ○福井 瞳 (介護老人保健施設フェアウインドきの)
【はじめに】
フェアウインドきの通所リハビリテーションは定員55名で、要支援1から要介護5までの幅広い介護度の方が利用されている。平均介護度は2.3であり、要介護3~5の利用者様が38.5%を占めるため、中重度ケア体制加算を算定している。看取り対応は行っていないため、入院後に逝去するケースが多く、最期まで見届けることはできない現状であった。
本稿では、「最期までデイケアに通いたい。」と願った利用者様とその家族様の思い、様々な工夫やスタッフの連携により、安心して通所できるように支援した当施設の取り組みについて報告する。
【ケース紹介】
対象はK氏、男性、90歳、要介護3(利用当初は要介護1)。平成30年7月に急性心筋梗塞と右脳梗塞を併発、同年12月に大動脈弁狭窄症による弁置換術を受けた。入院後の体力低下に伴い、平成31年1月19日より当施設通所リハビリーションとショートステイを要介護の奥様と一緒にご利用することとなった。性格はとても穏やかで、日常より奥様のことを気にかけ、奥様のリハビリの様子を見守るほどであった。
令和5年6月2日体調増悪に伴う入院で在宅復帰が見込めず一度利用中止となるが、自宅で看取りたいとする家族様の思いで自宅に帰られることとなり、令和5年8月10日利用再開となった。
【経過】
K氏はその後、入退院を繰り返した。
1.入退院の繰り返しとADLの変化:令和4年1月7日に誤嚥性肺炎で入院。退院後、同年8月29日には転倒による左大腿骨頚部骨折にて再び入院された。同年12月22日よりデイケアを利用再開されたが、この頃からADLが低下し、徐々に認知面の進行と発語の減少が見られ、移動も杖から車椅子へと移行した。
2.利用中止と再開の決断:その後も心不全の影響で寝たきり状態となり、デイケアの利用が一時中止となった。しかし、K氏の「デイケアに通いたい」という強い希望と、家族様の「自宅で看てあげたい」という意向を受け、デイケアの利用再開へ向けた調整を行った。
収縮期血圧が80~90台で不整脈があり、座位耐久性は2時間程度。排泄はオムツ対応。食事形態は全粥、キザミトロミ食、水分は胸水貯留により制限中であった。
再開にあたっては、リスク管理としてケアマネジャー、家族様、デイケア間で密に連携を取った。リクライニング車椅子の使用、日中のこまめなバイタル測定、負担軽減の為の個別送迎と自宅ベッドまでの誘導を行った。
易感染状態で皮膚が脆弱であり、バイタルの関係で入浴が出来ない事も多く、その際は清潔保持に努めた。
3.終末期の個別ケアと関わり:再開時は臥床時間が多かったが、食事は馴染みの利用者様のいる席へ案内し、楽しく召し上がっていただく事を心掛けた。利用者様の中には久しぶりの再会を喜び、ベッドサイドまで向かい談笑される様子が見受けられた。
周りの利用者様やスタッフからも愛されたK氏は、奥様とも非常に仲が良く、「いい夫婦の日」にK氏ご夫妻を表彰したことをきっかけに、毎年11月22日にはご夫婦で利用頂いている方への表彰式イベントを実施している。令和5年の11月中は入院され、その後も来所が難しい状況だったが、いい夫婦の日の表彰式の為に体調の調整を行い、12月に来所された時にご夫婦の表彰式を執り行った。このとき、自宅でインタビューの練習までされたとの事だった。
その後、令和6年2月10日帰宅後、家族様に対して「最高やった。」との言葉を最後に、尿路感染による発熱や心不全の為通所できなくなり、令和6年3月25日に逝去された。
後日、家族様からは「最期まで自宅で看る事が出来ました。病院ではなく大好きな母と一緒に過ごせ、デイケアではお友達と会う事が出来ました。私も悔いはありません」という言葉があった。
【まとめ】
今回の終末期のケースでは、日々変化する利用者様の状況や体調に対し、家族様との密な情報共有が不可欠であり、さらに、ケアマネジャー、看護師、リハビリスタッフ、介護スタッフ間の連携が極めて重要であった。利用時に細やかな個別対応を行うことで、慣れた場所や信頼できる人の中で最期まで過ごしたいというK氏の思いを最大限に尊重できたと考える。長年の通所リハビリテーションやショートステイの利用を通じて、当施設の職員と家族様の間に築かれた信頼関係も、この支援を可能にした大きな要因であった。
【おわりに】
通所リハビリテーションは単に来所された時だけサービスを提供するための場所ではなく、利用者様や家族様の人生背景や想いを深く汲み取り、寄り添い、生活全体を支援していくことの重要性を改めて認識した。近年、最期まで自宅で過ごしたいと願う人が増加しており、在宅サービスが整備される中で、地域における役割を柔軟に考慮し、活用され、必要とされる存在であり続けたい。
