講演情報

[27-O-C004-05]褥瘡は日々のケアが大切~チームで取り組む大切さ~

愛知県 井上 莉那 (老人保健施設ケア・サポート新茶屋)
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【背景・目的】
褥瘡の外科的治療後は保存的に治療した場合と比較して再発率が高く、特に仙骨部は圧の集中によって再発しやすい。今回、これ以上の改善がむずかしいと思われた褥瘡が治癒の見込まれる状態まで改善した事例について報告する。
【事例の概要】
70代女性、20XX年にクモ膜下出血で入院加療、在宅介護が困難なため老人保健施設に入所となった。入所後間もなく時期に罹患したインフルエンザを機に仙骨部に褥瘡が発生した。褥瘡は急激に悪化、入院しデブリードマンと陰圧閉鎖療法が施行された。再入所後は軟膏処置を継続し、褥瘡は徐々に改善してきたものの、角化し白色の硬い組織が中心部に残り、創緑は皮膚が巻き込むような形となっていた。
【取り組み内容】
形成外科への定期的な受診と軟膏処置を継続していたが、一進一退の状態であった。職員の間では難治性褥瘡であり治癒困難例としての認識が共有され、「この褥瘡はこれ以上よくならない」ため「褥瘡を悪化させない」ことに重点が置かれたが、ケアに関わる職員から「このままでいいのか」「何とか治せないのか」の声が上がった。排泄物による創部汚染の防止、リハビリ職員による移動や体位交換方法の指導、栄養士の介入、おむつ交換や陰部洗浄のケア方法について話し合い、統一したケアが提供できるよう話し合いを行った。排泄物による褥瘡部分の汚染防止に繊維の毛細管現象により尿や下痢便を素早く吸収できるコットンを使用した。栄養面は栄養士に相談し栄養補助食品を追加した。陰部洗浄については、おしり洗浄液を使用することで今まで行っていた石けんでの擦り洗いをしなくても容易に洗浄することができた。洗浄後はしっかり拭き取ろうとせず、皮膚への刺激を最小限にするため押し拭きに変更した。栄養補助食品を追加することで褥瘡の治癒に必要なカロリーは摂取できた。摂取カロリーの増加による体重増加はなかった。移乗や体位交換については、スライディングシートや対象者にあった移乗方法や体位変換を指導してもらった。今までは力任せになってしまうこともあったが、正しい方法を実践することで対象者だけでなく職員の負担軽減にもつながった。
【結果・評価】
取り組み開始後、すぐに角化した部分の軟化がみられた。創の状態がよくなってくると「このまま改善する」とケアに力が入ったが、悪化すると「一生懸命ケアしているのに」と結果に結びつかないことに無力感を覚えた。葛藤の中でもケアを継続したことで、約8か月後には治癒が目指せる状態となった。
【考察・結論】
褥瘡の治癒に向けて継続的な処置、体圧分散や栄養管理、スキンケアなどは大切であるが、それを支えるチーム連携の大切さを学んだ。
【まとめ】
これまでは「悪化しなければ、このままでよいのでは」と同じケアを行っていた。老人保健施設には医師がいるが専門的な対応はむずかしく、褥瘡が悪化し医療機関の受診が頻回になると送迎にかかる家族の負担や、医療費など施設側にとっても負担が大きくなる。日々入所者の生活に責任を持っている看護師や介護士にとってはケアの無力さも感じる。しかし、今回の事例を経験したことで、私たちの思いに変化が起きた。「これ以上なにもできない」から「どうしたらよくなるか」に取り組みよい結果を共有できた。施設での対応には限界があるが、よりよいケアに繋げるためチームで取り組んでいきたい。
【今後の課題】
今後の課題は褥瘡状態評価スケールDESING-R2020を用いて褥瘡の評価を行うことである。褥瘡の重症度だけでなく、治癒過程を数量化できるため職員間での共通した経過観察ができケアや治療方針を検討することができる。職員間での記録内容のばらつきも減らせ、教育や事例検討のツールとしても有用である。治癒過程を見える化することでケアの効果も多職種で客観的に情報共有ができる。評価結果を介護計画に取り込み、予防やポジショニング、栄養管理の具体的対策に活かしたい。