講演情報
[27-O-C004-07]NEWSスコアを用いた急変徴候評価の有効性-2年間の事例分析から-
宮崎県 ○小森 有芙子, 山本 直美, 宮永 陽亮, 上床 俊一, 中野 裕子, 野津原 勝 (介護老人保険施設ひむか苑)
【はじめに】
2024年の介護報酬改定では、「医療と介護の連携」が重点項目として掲げられ、特に「急変時の対応」「医療的ケアの充実」「看取り」が重要視されている。中でも、高齢者施設と医療機関との実効性のある連携体制の構築は喫緊の課題であり、「協力医療機関連携加算」が新設された。しかし、高齢者施設において協力医療機関を定めている施設は増加傾向にあるが、加算の取得率は低い状況である。
当苑では協力医療機関との連携を円滑にするために、協力医療機関の患者支援室と共同で入院相談のルートや基準を整理することで、実効性のある連携体制の構築を目指している。
【研究目的】
当苑では2023年度より、協力医療機関との間で、入所者の状態悪化時の対応として、抗生剤治療7日目で改善がみられない状態や酸素投与量3Lから減量不可もしくは増量が必要な状態、循環動態が不安定な状態などのケースは入院治療の打診をおこなうことと、治療終了後は最短の日時で受け入れをおこなう取り決めを交わした。状態の評価は、協力医療機関と共通の早期警告システム(以下、NEWS)を用いておこなうこととし、NEWSスコア4点以上で入院治療を検討することとした。
本研究では、入院治療の必要性の判断にNEWSスコアを取り入れた2年間の事例を振り返り、連携体制と運用上の課題を明らかにすることを目的とする。
【研究方法】
2023年4月から2025年3月までの2年間で、当苑から協力医療機関等に入院した利用者のうち、胃ろう造設、転倒による骨折などの整形疾患、新型コロナウイルス感染症による誤嚥性肺炎などのケースを除いた56名を対象に、(1)入院時NEWS平均スコアとリスク分類、(2)転帰別のNEWSスコア、(3)再入所者のリスク別スコア、(4)入院在院日数、(5)リスク別在院日数の5項目について後ろ向き研究で分析をおこなった。
また、当苑看護師に対し、NEWS評価導入後の変化についてアンケート調査を実施し、医療機関への入院相談ルートについて年次比較をおこなった。
【結果】
・入院時のNEWSスコアの平均は3.29点だった。リスク別スコアは、低リスク(0~4点)が43名、中等度リスク(5~6点)が4名、高度リスク(7点以上)が9名だった。
・協力医療機関からの転帰先別の入院時NEWSスコアは、再入所が2.1点、医療機関での死亡が6.64点、医療療養型病床への転棟(転院)が4.63点だった。
・再入所者の入院時NEWSリスク別スコアは、低リスクが27名、中等度リスクが0名、高度リスクが4名だった。
・入院在院日数は、再入所が24.8日、医療機関での死亡が65.5日、医療療養型病床への転棟・転院(転棟・転院までの日数)が35.0日だった。
・入院時NEWSリスク別の入院在院日数は、低リスクが26.3日、中等度リスクが59.8日、高度リスクが51.7日だった。
看護師へのアンケート調査では、NEWS評価は概ね10分以内で実施可能であること、利用者の発熱時や呼吸状態の悪化時にNEWS評価を実施していることがわかった。利用者の状態変化を医師に報告するタイミングについて、NEWSスコアが1点でも報告をしている者と、評価項目のうち1項目でも2点以上に加え症状がある又はトータルで5点以上を報告・相談の目安としている者もおり、そのタイミングにはばらつきがあることがわった。
また、NEWS評価を導入したことにより、医師に状態を報告する段階で重症度や緊急性を伝えやすく、ためらいが減った、転院となった場合、協力医療機関に状態を伝えやすくなった、点数化することで状態の比較がしやすくなったなどの肯定的意見が聞かれた。
一方で入所者の元の状態によっては意識レベルが評価しづらいとの意見も聞かれた。
医療機関への入院相談ルートの年次比較では、外来受診からの入院は2023年が12件だったのに対し2024年は4件と減少し、医師同士の相談で入院が決定したケースは、2023年が3件だったのに対し2024年は9件と増加した。
【考察】
分析結果から、入院時NEWSスコアが低い段階で入院したケースほど、再入所率が高いことがわかった。また、再入所につながったケースは、死亡や医療療養型への転棟・転院という転帰を辿ったケースよりも在院日数が10日以上短いことがわかった。NEWSが低リスクスコアの段階で入院治療を依頼することで概ね一か月以内には再入所でき、予後が良好であることが明らかとなった。これらのことから、NEWSを用いた急変徴候評価の有用性が示唆された。
また、アンケート結果からは、入所者の状態を点数化することで状態の把握や比較がしやすくなったという肯定的意見が聞かれたが、状態変化を医師に報告するタイミングにばらつきがみられた。急変リスクが低い段階で医師に報告し対応を検討することで、施設内での治療完結や入院治療期間のさらなる短縮化につながる可能性もある。
NEWSは、客観的データをもとに入所者の急変徴候を把握することができるため、看護師以外の職種でも評価が可能である。そのため看護師が常駐していない高齢者施設での急変徴候評価にも活用ができると考える。
【まとめ】
介護老人保健施設では、入所者に提供するサービスに医療も包括されているが、健康診断や経過観察目的での定期的な採血等の検査は費用の面から実施しづらい状況がある。そのため、入所者の体調が悪化した時にはすでに重症化しているケースもある。NEWS評価は、採血結果や画像データがなくても、入所者の急変徴候を察知する有用なツールであることが示唆された。
さらに急変リスクが低い段階で入院治療を検討することで、短期間での再入所がしやすく、予後も良好なケースが多くみられた。今後は、これらのデータをもとに、医師への報告基準の標準化や、実効性のある連携体制の構築を推進していきたい。
2024年の介護報酬改定では、「医療と介護の連携」が重点項目として掲げられ、特に「急変時の対応」「医療的ケアの充実」「看取り」が重要視されている。中でも、高齢者施設と医療機関との実効性のある連携体制の構築は喫緊の課題であり、「協力医療機関連携加算」が新設された。しかし、高齢者施設において協力医療機関を定めている施設は増加傾向にあるが、加算の取得率は低い状況である。
当苑では協力医療機関との連携を円滑にするために、協力医療機関の患者支援室と共同で入院相談のルートや基準を整理することで、実効性のある連携体制の構築を目指している。
【研究目的】
当苑では2023年度より、協力医療機関との間で、入所者の状態悪化時の対応として、抗生剤治療7日目で改善がみられない状態や酸素投与量3Lから減量不可もしくは増量が必要な状態、循環動態が不安定な状態などのケースは入院治療の打診をおこなうことと、治療終了後は最短の日時で受け入れをおこなう取り決めを交わした。状態の評価は、協力医療機関と共通の早期警告システム(以下、NEWS)を用いておこなうこととし、NEWSスコア4点以上で入院治療を検討することとした。
本研究では、入院治療の必要性の判断にNEWSスコアを取り入れた2年間の事例を振り返り、連携体制と運用上の課題を明らかにすることを目的とする。
【研究方法】
2023年4月から2025年3月までの2年間で、当苑から協力医療機関等に入院した利用者のうち、胃ろう造設、転倒による骨折などの整形疾患、新型コロナウイルス感染症による誤嚥性肺炎などのケースを除いた56名を対象に、(1)入院時NEWS平均スコアとリスク分類、(2)転帰別のNEWSスコア、(3)再入所者のリスク別スコア、(4)入院在院日数、(5)リスク別在院日数の5項目について後ろ向き研究で分析をおこなった。
また、当苑看護師に対し、NEWS評価導入後の変化についてアンケート調査を実施し、医療機関への入院相談ルートについて年次比較をおこなった。
【結果】
・入院時のNEWSスコアの平均は3.29点だった。リスク別スコアは、低リスク(0~4点)が43名、中等度リスク(5~6点)が4名、高度リスク(7点以上)が9名だった。
・協力医療機関からの転帰先別の入院時NEWSスコアは、再入所が2.1点、医療機関での死亡が6.64点、医療療養型病床への転棟(転院)が4.63点だった。
・再入所者の入院時NEWSリスク別スコアは、低リスクが27名、中等度リスクが0名、高度リスクが4名だった。
・入院在院日数は、再入所が24.8日、医療機関での死亡が65.5日、医療療養型病床への転棟・転院(転棟・転院までの日数)が35.0日だった。
・入院時NEWSリスク別の入院在院日数は、低リスクが26.3日、中等度リスクが59.8日、高度リスクが51.7日だった。
看護師へのアンケート調査では、NEWS評価は概ね10分以内で実施可能であること、利用者の発熱時や呼吸状態の悪化時にNEWS評価を実施していることがわかった。利用者の状態変化を医師に報告するタイミングについて、NEWSスコアが1点でも報告をしている者と、評価項目のうち1項目でも2点以上に加え症状がある又はトータルで5点以上を報告・相談の目安としている者もおり、そのタイミングにはばらつきがあることがわった。
また、NEWS評価を導入したことにより、医師に状態を報告する段階で重症度や緊急性を伝えやすく、ためらいが減った、転院となった場合、協力医療機関に状態を伝えやすくなった、点数化することで状態の比較がしやすくなったなどの肯定的意見が聞かれた。
一方で入所者の元の状態によっては意識レベルが評価しづらいとの意見も聞かれた。
医療機関への入院相談ルートの年次比較では、外来受診からの入院は2023年が12件だったのに対し2024年は4件と減少し、医師同士の相談で入院が決定したケースは、2023年が3件だったのに対し2024年は9件と増加した。
【考察】
分析結果から、入院時NEWSスコアが低い段階で入院したケースほど、再入所率が高いことがわかった。また、再入所につながったケースは、死亡や医療療養型への転棟・転院という転帰を辿ったケースよりも在院日数が10日以上短いことがわかった。NEWSが低リスクスコアの段階で入院治療を依頼することで概ね一か月以内には再入所でき、予後が良好であることが明らかとなった。これらのことから、NEWSを用いた急変徴候評価の有用性が示唆された。
また、アンケート結果からは、入所者の状態を点数化することで状態の把握や比較がしやすくなったという肯定的意見が聞かれたが、状態変化を医師に報告するタイミングにばらつきがみられた。急変リスクが低い段階で医師に報告し対応を検討することで、施設内での治療完結や入院治療期間のさらなる短縮化につながる可能性もある。
NEWSは、客観的データをもとに入所者の急変徴候を把握することができるため、看護師以外の職種でも評価が可能である。そのため看護師が常駐していない高齢者施設での急変徴候評価にも活用ができると考える。
【まとめ】
介護老人保健施設では、入所者に提供するサービスに医療も包括されているが、健康診断や経過観察目的での定期的な採血等の検査は費用の面から実施しづらい状況がある。そのため、入所者の体調が悪化した時にはすでに重症化しているケースもある。NEWS評価は、採血結果や画像データがなくても、入所者の急変徴候を察知する有用なツールであることが示唆された。
さらに急変リスクが低い段階で入院治療を検討することで、短期間での再入所がしやすく、予後も良好なケースが多くみられた。今後は、これらのデータをもとに、医師への報告基準の標準化や、実効性のある連携体制の構築を推進していきたい。
