講演情報

[27-O-D003-02]認知症マフでその人らしい生活を!

北海道 菱谷 栄太, 漆原 稜太, 高山 大輔, 児玉 志帆, 白石 歩, 池川 拓 (介護老人保健ガーデンハウスくりやま)
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【キーワード】
BPSD、認知症マフ
【用語の定義】
認知症マフ:円筒状のニット小物で、手を通してニットの内外に付けられたアクセサリーを触ることで、認知症の人が安らいだ気分になると言われている。イギリスの高齢者施設や病院で使用されており、日本でも鈴木1)らにより提唱され、今日まで主に認知症における身体拘束の低減を行えるツールとして報告されている。
【はじめに】
当施設の認知症専門棟は個々の状態に合わせて穏やかな生活を送ることができる様にその人らしい生活支援をしている。しかし、認知症の周辺症状(以下「BPSD」という)がある利用者様に対し、日常ケアを行うことが困難な場合もある。そこで2025年2月よりBPSD軽減を目的とし、穏やかに過ごすことができるように、Twiddle muff(以下「マフ」という)を導入した。当研究はBPSD25Qを評価スケールとして使用し、利用者様の生活に変化を見ることができるか検証を行ったのでここに報告する。
【目的】
(1)マフを使用することで利用者様のBPSDが減少する。(2)マフを使用し、穏やかに過ごすことができる。
【方法】
(1)日常生活の記録を毎日行う。(2)定期的にBPSD25Qを実施する。
データ収集方法:開始前中後にBPSD25Qの評価を実施、生活の変化を日常記録から収集する。
期間:2025年2月~2025年5月
対象者:BPSDが認められる当施設認知症専門棟入所者10名。(男性1名、女性9名)
【倫理的配慮】
研究で対象となる利用者様には個人を特定するような情報は公開せず、研究の発表を目的としていることを利用者様・家族様に説明を行い、同意を得た。
【結果】
マフの使用拒否  2名
BPSD25Q変化なし 6名
BPSD25Q変化あり 2名
変化のあった2名に対する報告
(1) A氏 80代 女性
BPSD25Q 変化項目
・盗られたという、嫉妬する、別人という 重症度2→1 負担度1→0
使用前の行動面では終日落ち着きなく歩いており夜間眠られない、1週間に1回ほど放尿が見られることがあった。精神面では物盗られ妄想が月に2~3回ほどみられた。導入にあたって利用者様・家族様から趣味や好きな色などを聞き取りマフを作成、「これに手を入れると暖かいですよ」と声かけし渡した。使用中は顔をマフにうずめる動作や、「かわいい」と話し、10分程度集中してマフを触る様子が見られたため、座っている時間が増えた。妄想の発言がみられない月もあった。夜間は良眠となり放尿は見られていない。また職員へ話しかける様子や利用者様同士で「あなたのマフ奇麗だね、可愛いね」といった会話を楽しんでいる様子が見られた。
(2) B氏 80代 女性
BPSD25Q 変化項目
・うろうろする、不安そうに動き回る 重症度2→1 負担度1→1
・心配ばかりする 重症度2→1 負担度1→1  
使用前は帰宅願望が多い日で1日に10回以上聞かれる日もあった。マフを作成するまでの工程はA氏と同様だが、B氏には作成したものをB氏のために作りましたと伝え職員と会話した。使用中はマフに触れながら他利用者様に昔編み物をしていたという会話をされるなど、穏やかに過ごす時間が増え、帰宅願望が1日に0~2回程度に減少した。その後も穏やかに過ごされマフを大事に抱えたりA氏との会話を楽しんだりする様子がみられた。
【考察】
BPSD25Qに変化のあった2名が共通している変化として、職員との会話、他利用者様との会話量が増加した点がある。マフは暖かい刺激によって認知症高齢者と職員が共に癒され、その感情を共有することで穏やかなコミュニケーションが取れるようになった。A氏、B氏においても、マフを通して他者との交流機会が増えたことでBPSDの低減につながった。また、B氏においては過去の編み物の記憶を他者へ話す機会となったことが好影響へ繋がったと考える。
鈴木1)はマフの導入プロセスとして「ケア提供者はマフやアクセサリーに触れながら、笑顔で認知症の人のマフに対する反応を観察し、共感を示し、本人の過去の思い出を引き出しながらコミュニケーションを進める」「マフがその人にとって大切な存在になるまで寄り添い、コミュニケーションを促進していく」と述べている。
A氏、B氏においてはマフ利用者様同士の会話量が増えていることから、変化なしの利用者様も含め、使用時にはマフの会のような小集団を作り、手触り、色合いを通した声掛けやふれあいを持つことで変化のなかった利用者様へも効果を波及することができると考える。また変化なしの利用者様6名については、マフに触れたり、身につけようとしたりする様子があり、興味を示していた。
【結論】
マフを使用することで2名の方にBPSDの変化がみられた。6名の方に関してはマフの使用方法は変わった方もいたが、使用することで穏やかに過ごす時間があった。
【おわりに】
今後は通所リハビリテーション利用者様や地域のボランティアの方に作成を依頼し、作成したマフのお渡し会を行うなど施設全体が町内地域に根差した活動に繋げていきたいと考える。
【引用・参考文献】
1)「鈴木みずえ ミトン装着低減を目的にTwiddle muffを活用した主観的効果と安全性の検討, 日老医誌 2023年」 (日老医誌 2023;60:414-423)
【参考文献】
2)「Twiddle muff(認知症マフ)活用ケアガイド(制作 浜松医科大学臨床看護学講座 鈴木みずえ 金盛琢也 稲垣圭吾)」
3)「中村勝美,発達障害児支援における認知症マフ(Twiddle muff)の活用と可能性, 広島女子大学論集 2025年2月」 (Bulletin of Hiroshima Jogakuin University72:1-12,Feb.2025)