講演情報

[27-O-D003-03]認知症専門棟における集団音楽療法~多職種協働によるBPSD緩和に向けた取り組み~

高知県 鈴木 芽衣, 雫 裕子, 國本 大介 (介護老人保健施設 ピアハウス高知)
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【はじめに】
 当法人では1998年より音楽療法を導入し、現在は音楽療法士2名が常勤している。所属する介護老人保健施設では、一般棟および認知症専門棟において集団音楽療法を継続的に実施しており認知機能の維持・向上やBPSD(周辺症状)の緩和、活動性の賦活、自己表現の増加、社会的交流を目指し実施している。本報告では認知症専門棟での実践を通じて、多職種協働によるBPSD(周辺症状)の緩和の試みについて紹介する。
【目的】
 今回、認知症専門棟における集団音楽療法を通して、認知機能の維持・向上およびBPSD(周辺症状)の緩和を図ることを目的としている。また、本取り組みにおける効果を検証する為に、活動に参加した他職種を対象にアンケート調査を実施した。音楽活動中に観察された肯定的な反応を、多職種による協働体制のもとで日常のケアに般化させ、参加者の生活の質の向上につなげることを目指した。
【方法】
 対象は認知症専門棟の利用者で、日々の体調により人数の変動はあるが、約20名が参加している。年齢は69歳~98歳であり、評価指標としては要介護度2~5、日常生活自立度IIIa~IV、寝たきり度A2~B2、HDS-R:0~24点、NMスケール3~25点、N-ADL:7~43点である。音楽療法実施の頻度は月3回、時間は40分で、活動には音楽療法士1名、言語聴覚士1名、介護福祉士1名~2名が関わり、多職種協働体制で実施している。
 活動内容は、1)童謡・歌謡曲を用いたストレッチ・歌体操、2)呼吸法・早口言葉・「パ・タ・カ・ラ」発声法などによる発声練習、3)季節やテーマに沿った歌唱活動、4)写真を活用した回想法、5) 打楽器・トーンチャイムを使用した楽器演奏、6)複数課題を組み合わせた二重課題の6つの活動で構成し、参加者の反応を観察しながら内容や順番を適宜調整し活動を実施している。
 アンケート調査の内容は、1)日常生活でみられない反応が音楽活動中にはみられるか?、2)音楽活動中は参加者の周辺症状や不活動(傾眠等)が緩和されたと感じるか?、3)音楽活動終了後も周辺症状や不活動(傾眠等)が緩和しているか?、4)音楽活動中にみられた反応を普段のケアに取り入れるか?の4項目とした。
【経過および結果】
 音楽活動中の反応として、音楽療法への参加誘導時に拒否を示す参加者は見られないものの、日頃は自発性や発動性が乏しい対象者が多くみられた。しかし、体操や歌唱活動の場面で、自発的な身体の動きや発声、歌唱への反応が確認された。また、発言が少ない参加者においても、回想法をきっかけとして、楽曲や歌手の話題、自身の経験談などを交えながら過去を回想する発言が聞かれた。楽器演奏では、音色の響きに反応して表情が変化したほか、参加者に合った難易度に調整することで、満足感や達成感に関する発言も聞かれた。
 アンケート調査を通じて得られた他職種からの意見として、「普段落ち着きのない参加者が音楽療法中は傾眠や離席することなく活動に参加できている」また、「音楽療法終了後には、活動参加をきっかけに利用者同士のコミュニケーションや社会的交流が促進されている」さらに、「入浴脱衣、トイレ誘導時には歌を歌いかける事で拒否なくスムーズな対応が可能となった」等の意見が得られた。
【考察・まとめ】
 結果および他職種へのアンケート調査から得られた意見を総合すると、主に4つの点において効果が認められたと考察する。まず馴染みのある音楽の使用により、安心感や懐かしさが喚起され、不安・興奮・拒否的行動の緩和につながった。これにより参加者の情緒面が安定し、活動への主体的な参加が促された。
 次に楽器演奏や二重課題の場面では、参加者に合った難易度に調整することで成功体験の積み重ねが可能となり、自己効力感の向上および活動への積極的な関与が促進された。また、歌唱や楽器演奏を通じて参加者が他者と話題や感情を共有する機会が得られ、孤独感の軽減やコミュニケーションの増加、他者への称賛などの社会的交流が促された。
 加えて、環境面の工夫として多職種が連携しながら配席を調整した結果、参加者の集中力が維持され、落ち着いた環境で活動に取り組むことが可能となった。さらに、言語聴覚士や介護福祉士による個別の声かけや促しによって活動内容が明確化され、意欲の高まりや離席・配席の減少にも寄与したと考えられる。
 今回の取り組みにおいては、自由記載形式のアンケート調査を通じて得られた主観的な評価のみであったため、今後はBPSD評価尺度を用いた客観的評価を取り入れ、参加者の反応の記録・分析・フィードバックが行える環境の整備が必要であると考える。今後も多職種協働による音楽活動を継続しながら、BPSDの緩和と生活の質の向上を目指し、音楽活動中に観察された反応を日常のケアへ般化する取り組みを推進していきたい。