講演情報
[27-O-D003-06]認知症状と水分摂取量の関係性水分摂取量の増加がBPSDに与える影響
東京都 ○奥田 慧介, 有馬 樹里 (介護老人保健施設 武蔵野徳洲苑)
【はじめに】
認知症高齢者に見られる行動・心理症状(BPSD)は、本人の生活の質(QOL)や施設職員のケア負担に大きく影響している。その中でも「帰宅願望」「見当識障害」「無気力」「夜間失禁」「言動の異常」といった症状は、生活リズムの乱れや混乱を招きやすく、日々のケアにおいても対応が求められる重要な課題である。一方、脱水による意識混濁や疲労感は、こうした症状の悪化に関与している可能性があり、水分摂取量との関係が注目されている。そこで本研究では、水分摂取量の増加によって、これらの認知症状にどのような変化が生じるのかを検証した。
【目的】
認知症高齢者において、水分摂取量の増加が帰宅願望・見当識障害・無気力などの認知症状に与える影響を明らかにし、日常ケアの中で取り組める非薬物的支援の一手段としての有効性を検討することを目的とした。
【方法】
当施設に入所する認知症高齢者のうち、医師の判断により水分制限のない方6名を対象とし、8週間にわたり水分摂取支援を実施した。対象者はいずれも帰宅願望や見当識障害や無気力、夜間の尿失禁、言動の異常といった症状を有していた。
水分摂取の目標量は1日あたり1500mlとし、食事以外の時間帯にも定期的に声かけや誘導を行った。個別の嗜好に合わせた飲み物の提供、(カルピス、ココア、梅昆布茶、コーヒー、紅茶など)提供時間の調整、(起床後や就寝前、雑談中、リハビリ後など)本人の生活リズムに配慮した対応を行い、継続的な摂取を促した。
(評価基準)
観察項目 A:時間によっての行動(帰宅願望)、B:見当識障害(トイレの場所がわからない)C:無気力、D:覚醒(夜間失禁)E:言動の異常。
症状の強さ:1→軽い、2→普通、3→強い
職員が日々の記録と認知症周辺症状チェック表を用いて変化を共有し、介入前後での傾向を評価した。
【結果】
・時間によっての行動(帰宅願望)
研究前:月平均水分量が900ml 研究後:月平均水分量1300ml程度
毎日夕方16:00頃より自室に戻り、荷物をまとめ「私今から帰ります」と不安な表情で職員に訴えていたが、水分量が増えるにつれて荷物をまとめることがほぼなくなり、「帰らないと」と訴えることも減少した。「今日、泊まる部屋は大丈夫か?(施設で)」と訴えの内容も変わっていった。
・見当識障害
研究前:月平均水分量500ml~600ml程度 研究後:月平均水分量800ml程度
トイレの場所がわからず廊下などの床に放尿されていた方、水分量が増えるにつれて、トイレの場所を認識されるようになり、自身でトイレに行かれるようになった。また、他利用者の居室に入ってしまうことはあるがベッドで寝てしまうといったことは減少している。
・無気力
研究前:月平均水分量900ml程度 研究後1200ml程度
日中傾眠傾向で全介助にて食事を召し上がっていたが、研究を始めるにつれて食事に手を伸ばし、自己摂取する姿が観られるようになる。また、覚醒時間が増えるにつれて、活気ある表情や発語も増えている。
・覚醒(夜間失禁)
研究前:月平均水分量1000ml程度 研究後1200ml程度
夜間は寝入ってしまいパット内で排尿されていたが、研究後では、夜間にトイレのために起きてこられることが増え、日中も含めて尿意を訴えられることが増えた。
・言動の異常
研究前:月平均水分量500ml~600ml程度 研究後800ml程度
職員や他利用者の手を強く引っぱってしまう行動に対して、水分量の確保が難しく、行動の改善はみられていないが、声を出して笑う、言葉を復唱するなどの変化が見られた。
6名中6名に何かしらの改善がみられている。特に無気力については自力摂取ができるまで大きな改善となった。夕方から夜間にかけての帰宅願望が減少したことによって他利用者への不安の伝染がなくなり就寝時間までお茶と会話を楽しんで過ごされている。職員からは「水分摂取量が増えることで、活動的になった。」「夜間トイレに行って排尿できるようになった。」「帰宅願望が減り立ち上がりからの転倒リスクが軽減した」といった声が聞かれた。言動の異常については、水分量確保の方法、タイミングなど今後も工夫が必要だという課題が出た。
【考察】
水分摂取量の増加により、脱水傾向による軽度の脳機能低下が軽減され、結果として「帰宅願望」や「見当識障害」「無気力」などの改善につながったと考えられる。水分は身体機能だけでなく、精神状態や行動面にも影響を与える重要な要素である。特別な器具や薬剤を使用せず、日常ケアの延長として実施可能な点からも、施設内のBPSD対策として継続的に取り組む価値があると感じた。
【結論】
今回の取り組みにより、水分摂取量の増加が認知症高齢者の帰宅願望、見当識障害や無気力といったBPSDの軽減につながる可能性が示唆された。水分補給という基本的なケアが、非薬物的な認知症支援として有効であることが実感できた。今後はより多くの対象者を視野に入れ、職種間連携やモニタリング体制を強化しながら、科学的根拠に基づいた継続的な実践に発展させていきたい。
認知症高齢者に見られる行動・心理症状(BPSD)は、本人の生活の質(QOL)や施設職員のケア負担に大きく影響している。その中でも「帰宅願望」「見当識障害」「無気力」「夜間失禁」「言動の異常」といった症状は、生活リズムの乱れや混乱を招きやすく、日々のケアにおいても対応が求められる重要な課題である。一方、脱水による意識混濁や疲労感は、こうした症状の悪化に関与している可能性があり、水分摂取量との関係が注目されている。そこで本研究では、水分摂取量の増加によって、これらの認知症状にどのような変化が生じるのかを検証した。
【目的】
認知症高齢者において、水分摂取量の増加が帰宅願望・見当識障害・無気力などの認知症状に与える影響を明らかにし、日常ケアの中で取り組める非薬物的支援の一手段としての有効性を検討することを目的とした。
【方法】
当施設に入所する認知症高齢者のうち、医師の判断により水分制限のない方6名を対象とし、8週間にわたり水分摂取支援を実施した。対象者はいずれも帰宅願望や見当識障害や無気力、夜間の尿失禁、言動の異常といった症状を有していた。
水分摂取の目標量は1日あたり1500mlとし、食事以外の時間帯にも定期的に声かけや誘導を行った。個別の嗜好に合わせた飲み物の提供、(カルピス、ココア、梅昆布茶、コーヒー、紅茶など)提供時間の調整、(起床後や就寝前、雑談中、リハビリ後など)本人の生活リズムに配慮した対応を行い、継続的な摂取を促した。
(評価基準)
観察項目 A:時間によっての行動(帰宅願望)、B:見当識障害(トイレの場所がわからない)C:無気力、D:覚醒(夜間失禁)E:言動の異常。
症状の強さ:1→軽い、2→普通、3→強い
職員が日々の記録と認知症周辺症状チェック表を用いて変化を共有し、介入前後での傾向を評価した。
【結果】
・時間によっての行動(帰宅願望)
研究前:月平均水分量が900ml 研究後:月平均水分量1300ml程度
毎日夕方16:00頃より自室に戻り、荷物をまとめ「私今から帰ります」と不安な表情で職員に訴えていたが、水分量が増えるにつれて荷物をまとめることがほぼなくなり、「帰らないと」と訴えることも減少した。「今日、泊まる部屋は大丈夫か?(施設で)」と訴えの内容も変わっていった。
・見当識障害
研究前:月平均水分量500ml~600ml程度 研究後:月平均水分量800ml程度
トイレの場所がわからず廊下などの床に放尿されていた方、水分量が増えるにつれて、トイレの場所を認識されるようになり、自身でトイレに行かれるようになった。また、他利用者の居室に入ってしまうことはあるがベッドで寝てしまうといったことは減少している。
・無気力
研究前:月平均水分量900ml程度 研究後1200ml程度
日中傾眠傾向で全介助にて食事を召し上がっていたが、研究を始めるにつれて食事に手を伸ばし、自己摂取する姿が観られるようになる。また、覚醒時間が増えるにつれて、活気ある表情や発語も増えている。
・覚醒(夜間失禁)
研究前:月平均水分量1000ml程度 研究後1200ml程度
夜間は寝入ってしまいパット内で排尿されていたが、研究後では、夜間にトイレのために起きてこられることが増え、日中も含めて尿意を訴えられることが増えた。
・言動の異常
研究前:月平均水分量500ml~600ml程度 研究後800ml程度
職員や他利用者の手を強く引っぱってしまう行動に対して、水分量の確保が難しく、行動の改善はみられていないが、声を出して笑う、言葉を復唱するなどの変化が見られた。
6名中6名に何かしらの改善がみられている。特に無気力については自力摂取ができるまで大きな改善となった。夕方から夜間にかけての帰宅願望が減少したことによって他利用者への不安の伝染がなくなり就寝時間までお茶と会話を楽しんで過ごされている。職員からは「水分摂取量が増えることで、活動的になった。」「夜間トイレに行って排尿できるようになった。」「帰宅願望が減り立ち上がりからの転倒リスクが軽減した」といった声が聞かれた。言動の異常については、水分量確保の方法、タイミングなど今後も工夫が必要だという課題が出た。
【考察】
水分摂取量の増加により、脱水傾向による軽度の脳機能低下が軽減され、結果として「帰宅願望」や「見当識障害」「無気力」などの改善につながったと考えられる。水分は身体機能だけでなく、精神状態や行動面にも影響を与える重要な要素である。特別な器具や薬剤を使用せず、日常ケアの延長として実施可能な点からも、施設内のBPSD対策として継続的に取り組む価値があると感じた。
【結論】
今回の取り組みにより、水分摂取量の増加が認知症高齢者の帰宅願望、見当識障害や無気力といったBPSDの軽減につながる可能性が示唆された。水分補給という基本的なケアが、非薬物的な認知症支援として有効であることが実感できた。今後はより多くの対象者を視野に入れ、職種間連携やモニタリング体制を強化しながら、科学的根拠に基づいた継続的な実践に発展させていきたい。
