講演情報
[27-O-D004-02]やさしさを伝える心動かす認知症ケア
神奈川県 ○花方 涼香, 桑原 美穂, 飯田 綾子, 益本 由美 (介護老人保健施設 グリーンワーフ東戸塚)
【はじめに】
当施設の認知症専門棟では、少人数で馴染みの関係をつくるグループケアなどの認知症ケアに取り組んできた。しかし、認知症を抱えるご利用者は一般療養棟にも多く入所しており、その方達へどのように接すれば良いのか不安や疑問を感じる職員もいた。又、職員は多忙の中ゆとりが持てず、認知症ケアを十分に実践することが難しい状況であった。
このような状況を踏まえ、職員が安心して実践できる認知症ケアに施設全体で取り組むため、令和6年3月に「認知症ケアプロジェクト」を立ち上げた。プロジェクトでは、『ユマニチュード』の技法を参考にしたケアを「やさしさを伝えるケア技法」と名付け、施設内研修を行った。
『やさしさを伝えるケア技法とは』
ユマニチュードの4つの柱から「見る」「話す」「触れる」の3つに重点を置いたケアを行う。
正面から水平に視線を掴むように「見る」。あなたに会いに来たというメッセージを「話す」。広い面積で徐々に「触れる」。これらを「やさしさを伝えるケア技法」とした。(以下、ケア技法とする。)
【課題】
・一般療養棟で働く職員の中には、認知症を抱えるご利用者への対応に不安や疑問を感じる職員が多い。
【目的】
・認知症専門棟で勤務する職員だけでなく、全職員が技法を習得し、実践する。これにより、認知症を抱えるご利用者の症状の緩和と不安の軽減を目指す。
【実践内容】
1.施設内研修:実施期間)令和6年3月~4月
対象者)全職員
内容)「やさしさを伝えるケア技法」に関する基礎知識と技法。
2.実践: 実施期間)令和6年5月~9月
対象者)フロアごとに対象者を1名選出
実践内容)やさしさを伝えるケア技法」を意識的に実践し、効果を記録する。
実践するにあたって、記録については全部署間で共有しているケース記録内に
「認知症ケア」の項目を追加し、日頃の記録と区別した。
月に1度認知症ケアプロジェクトメンバーによる評価と見直しを実施。
3.意見・感想:職員にアンケートを配布し、集計する。
【事例】
E氏 104歳 女性 要介護4
一般療養棟に入所中
病歴)認知症(種類不明・当施設精神科医フォロー中) 心不全 変形性膝関節症 他
症状)幻視、幻覚。 不安からくる訴えが続くことがある。 (主に下肢の痛みについて)
昼夜共に精神的なアップダウンが多かった。又、生活に強い不安を訴えており、定期的に精神科医の診察を受けていた。悲観的で「足が痛くて眠れないの」といったナースコールが夜間頻回にあり、感情失禁も多かった。
【実践結果】
(令和6年7月)
職員が意識的にケア技法を行うようになってから、他ご利用者や職員に対してきつい物言いが少なくなり、不安を訴えるナースコールが減少した。しかし、「熱があるの。」といった訴えに対し、体温を測り平熱であることを伝えるも納得せずナースコールが頻回になることもあった。そこで、E氏は話を聞いてほしい、といった希望があるのではないかと推測。ケア技法の「話す」、傾聴に重点を置いてケアにあたる。
(令和6年8月)
施設内で新型コロナウイルスによるクラスターが起こる。感染対策に追われ、技法を使ったケアが出来ない状況になった。その間「そこに虫が飛んでいるからどうにかして。」等以前よりみられていた幻視、幻聴の症状が再度みられた。
(令和6年9月)
クラスターが終束し、ケア技法を再開した。不安の訴えがあった際に職員が説明すれば納得出来るようになり、明るい話題が多くなった。また感情失禁が減少し、8月に確認されていた幻視、幻聴の訴えも軽減した。
【アンケート結果】
E氏の変化に関して
実践して
良い効果があった 75%
変わらなかった 25%
症状が悪化した0%
日中でのケア技法の実践が夜間の精神的安定につながったのではないかという意見が多かった。また、ケア技法の対象者となってからは他のご利用者だけでなく職員にも穏やかな口調で話す事が多くなった。一方で、職員に「あれやって」「これやって」と訴えが増え、依存的になったのではないかという意見もあった。
実践した職員の感想
心にゆとりを持って仕事をする大切さを改めて感じた。また、普段の仕事内容を見直してはどうかといった意見が多くあった。又、ユマニチュードや技法をより深く学びたいという意見や、対象者を決めずにどのご利用者にも行いたいという前向きな意見が多く挙がっており、職員の意識に大きな変化があった。
【考察】
一般療養棟のE氏を対象に「やさしさを伝えるケア技法」を意識的に行った結果、E氏の不安の訴えと認知症状が緩和した。この結果は、一般療養棟の職員にとってケアに対する心のゆとりができ、成功したことによる自信につながった。1人ひとりの職員が、思いつきで認知症ケアを行うのではなく、職員間で情報を共有し共通認識を持って「やさしさ」を伝えていくことで、ご利用者からも協力動作が得られるなど「やさしい気持ち」ともとれる行動変容がみられたと考えられる。
【まとめ】
「このケア技法を行うのには時間的なゆとりがないとできない。」という意見も出たが、この技法については改めて時間を作って行うことではなく、日常的に行っているケアの中に意識的にケア技法を取り入れてほしいという事を伝え続けている。今では対象者を決めず、誰にでも行えるケア技法として継続しやすくするために、日々の記録の内容を『使った技法』『実践内容』『結果』と項目を決め簡素化、「強化月間」を作るなど、各部署で工夫を続けている。
今後は、新人研修を含め定期的に研修を行う事で、この「やさしさを伝えるケア技法」が定着し、ご利用者、職員共に安心できるような認知症ケアに取り組んでいく。
当施設の認知症専門棟では、少人数で馴染みの関係をつくるグループケアなどの認知症ケアに取り組んできた。しかし、認知症を抱えるご利用者は一般療養棟にも多く入所しており、その方達へどのように接すれば良いのか不安や疑問を感じる職員もいた。又、職員は多忙の中ゆとりが持てず、認知症ケアを十分に実践することが難しい状況であった。
このような状況を踏まえ、職員が安心して実践できる認知症ケアに施設全体で取り組むため、令和6年3月に「認知症ケアプロジェクト」を立ち上げた。プロジェクトでは、『ユマニチュード』の技法を参考にしたケアを「やさしさを伝えるケア技法」と名付け、施設内研修を行った。
『やさしさを伝えるケア技法とは』
ユマニチュードの4つの柱から「見る」「話す」「触れる」の3つに重点を置いたケアを行う。
正面から水平に視線を掴むように「見る」。あなたに会いに来たというメッセージを「話す」。広い面積で徐々に「触れる」。これらを「やさしさを伝えるケア技法」とした。(以下、ケア技法とする。)
【課題】
・一般療養棟で働く職員の中には、認知症を抱えるご利用者への対応に不安や疑問を感じる職員が多い。
【目的】
・認知症専門棟で勤務する職員だけでなく、全職員が技法を習得し、実践する。これにより、認知症を抱えるご利用者の症状の緩和と不安の軽減を目指す。
【実践内容】
1.施設内研修:実施期間)令和6年3月~4月
対象者)全職員
内容)「やさしさを伝えるケア技法」に関する基礎知識と技法。
2.実践: 実施期間)令和6年5月~9月
対象者)フロアごとに対象者を1名選出
実践内容)やさしさを伝えるケア技法」を意識的に実践し、効果を記録する。
実践するにあたって、記録については全部署間で共有しているケース記録内に
「認知症ケア」の項目を追加し、日頃の記録と区別した。
月に1度認知症ケアプロジェクトメンバーによる評価と見直しを実施。
3.意見・感想:職員にアンケートを配布し、集計する。
【事例】
E氏 104歳 女性 要介護4
一般療養棟に入所中
病歴)認知症(種類不明・当施設精神科医フォロー中) 心不全 変形性膝関節症 他
症状)幻視、幻覚。 不安からくる訴えが続くことがある。 (主に下肢の痛みについて)
昼夜共に精神的なアップダウンが多かった。又、生活に強い不安を訴えており、定期的に精神科医の診察を受けていた。悲観的で「足が痛くて眠れないの」といったナースコールが夜間頻回にあり、感情失禁も多かった。
【実践結果】
(令和6年7月)
職員が意識的にケア技法を行うようになってから、他ご利用者や職員に対してきつい物言いが少なくなり、不安を訴えるナースコールが減少した。しかし、「熱があるの。」といった訴えに対し、体温を測り平熱であることを伝えるも納得せずナースコールが頻回になることもあった。そこで、E氏は話を聞いてほしい、といった希望があるのではないかと推測。ケア技法の「話す」、傾聴に重点を置いてケアにあたる。
(令和6年8月)
施設内で新型コロナウイルスによるクラスターが起こる。感染対策に追われ、技法を使ったケアが出来ない状況になった。その間「そこに虫が飛んでいるからどうにかして。」等以前よりみられていた幻視、幻聴の症状が再度みられた。
(令和6年9月)
クラスターが終束し、ケア技法を再開した。不安の訴えがあった際に職員が説明すれば納得出来るようになり、明るい話題が多くなった。また感情失禁が減少し、8月に確認されていた幻視、幻聴の訴えも軽減した。
【アンケート結果】
E氏の変化に関して
実践して
良い効果があった 75%
変わらなかった 25%
症状が悪化した0%
日中でのケア技法の実践が夜間の精神的安定につながったのではないかという意見が多かった。また、ケア技法の対象者となってからは他のご利用者だけでなく職員にも穏やかな口調で話す事が多くなった。一方で、職員に「あれやって」「これやって」と訴えが増え、依存的になったのではないかという意見もあった。
実践した職員の感想
心にゆとりを持って仕事をする大切さを改めて感じた。また、普段の仕事内容を見直してはどうかといった意見が多くあった。又、ユマニチュードや技法をより深く学びたいという意見や、対象者を決めずにどのご利用者にも行いたいという前向きな意見が多く挙がっており、職員の意識に大きな変化があった。
【考察】
一般療養棟のE氏を対象に「やさしさを伝えるケア技法」を意識的に行った結果、E氏の不安の訴えと認知症状が緩和した。この結果は、一般療養棟の職員にとってケアに対する心のゆとりができ、成功したことによる自信につながった。1人ひとりの職員が、思いつきで認知症ケアを行うのではなく、職員間で情報を共有し共通認識を持って「やさしさ」を伝えていくことで、ご利用者からも協力動作が得られるなど「やさしい気持ち」ともとれる行動変容がみられたと考えられる。
【まとめ】
「このケア技法を行うのには時間的なゆとりがないとできない。」という意見も出たが、この技法については改めて時間を作って行うことではなく、日常的に行っているケアの中に意識的にケア技法を取り入れてほしいという事を伝え続けている。今では対象者を決めず、誰にでも行えるケア技法として継続しやすくするために、日々の記録の内容を『使った技法』『実践内容』『結果』と項目を決め簡素化、「強化月間」を作るなど、各部署で工夫を続けている。
今後は、新人研修を含め定期的に研修を行う事で、この「やさしさを伝えるケア技法」が定着し、ご利用者、職員共に安心できるような認知症ケアに取り組んでいく。
