講演情報
[27-O-D004-06]目的ある離床を目指して離床時間確保を図る取り組み
東京都 ○福田 匠1, 高梨 仁美1, 安岡 加奈子1, 関根 康文2, 大島 茉野2, 伊藤 雅史2 (1.社会医療法人社団 慈生会 介護老人保健施設 イルアカーサ, 2.社会医療法人社団 慈生会 等潤病院)
【はじめに】
戸原らの先行研究によると、6時間以上離床すると全身の筋肉量が保たれ、覚醒状態が安定し摂食嚥下機能が向上する事を示している。介護老人保健施設は主に病院での治療が終了した要介護者が、在宅復帰までの間に利用される中間施設として位置付けられており、リハビリテーション専門職によるリハビリテーションの機会も病院に比較し限られていることが多い。そのため、日常生活のアプローチの一つとして離床時間の確保が重要となってくる。
【目的】
当施設は超強化型の施設であり、ICT機器を積極的に導入している。“よく遊び、よく学び、よく鍛える”という慈生会式介護の目指す姿を大切な3本柱として考え、アクティビティ等を始めとして他職種が協力し工夫を凝らしながら離床時間の確保に取り組んでいる。今回は、離床時間の確保が認知機能の変化に影響を及ぼしているのか明らかにする事を目的に、3ヶ月後の認知機能の変化について得られた結果から統計学的に検討し、当施設の離床時間の確保を図る取り組みと共に報告する。
【期間】
令和7年3月1日~令和7年6月31日
【対象】
令和7年3~4月に入所した利用者のうち非認知症を除く20名(男性5名、女性15名)。
平均年齢84.66歳(±4.76)。平均要介護度3.37(±0.97)。
【方法】
令和7年3~4月に入所された利用者のうち非認知症を除く20名を対象に、非接触型睡眠計測器である眠りSCAN Viewer NN-C110(以下:眠りSCAN)による平均離床時間を調査した。眠りSCANに保存されている情報より、平均就床時間から3ヶ月間の平均離床時間を計算した。長谷川式簡易知能評価スケール(以下:HDS-R)・ミニメンタルステート検査(以下:MMSE)を用いて認知機能評価を入所時と3ヶ月目に実施した。
統計学的手法については、今回の調査における母集団の数が少ない為、ウィルコクスン符号付き順位検定を使用。検定の条件は、有意水準は5%、帰無仮説を6時間以上の離床時間による3ヶ月後の認知点数の変化には差は無い、対立仮説では6時間以上の離床時間による3ヶ月後の認知点数の変化には差が無いとは言えないと設定する。
【結果】
平均離床時間は13.46時間であり、20名の全ての利用者が6時間以上離床していることが分かった。
HDS-Rの点数は入所時平均12.95点(±7.93)、3ヶ月後平均15.1点(±7.37)であり有意に向上した。
また、MMSEの点数は入所時平均15.2点(±7.58)、3ヶ月後平均17.05点(±6.46)でありこちらも有意に向上した。
入所時より3ヶ月後のHDS-R・MMSEの点数の変化には統計学的な有意差が認められる結果となった。
【考察】
今回の研究において、対象とした新規入所者全員が13.46時間という十分な離床時間を確保できていることがICT機器を用いて数値的に示された。離床時間の確保を目標とするには、多職種が簡単に操作でき自動的に離床時間が算出される機器を用いることは重要だと考える。先行研究によれば、離床時間を6時間以上確保することは、筋肉を働かせて自分の体重を支えるという重力負荷を与えることで全身の筋肉量が維持され、覚醒状態も安定しやすいことが示されている。今回の対象者については、毎食離床して食事を摂取していることに加え、積極的な離床時間を確保することができており、結果として長時間の座位が保てるようになり、傾眠傾向が軽減され、耐久性の向上などの効果が期待できたと考える。
施設入所高齢者の離床時間が延長する要因を検討した先行研究では、人的な要因、物的環境、離床目標の設定、そして離床を促すアクティビティの豊富さが、離床時間を向上するために重要であると指摘している。
離床時間確保のための働きかけとしては、ほぼ毎日何かしらのアクティビティやイベントを開催していることが当施設の大きな特徴である。学校形式アクテビティや屋上庭園での園芸活動、喫茶店やピザ作り等の食事イベント、お花見や納涼祭等の四季折々のアクティビティを開催している。このようなアクティビティの中で、毎日の日付の確認を行うことで見当識の向上を図り、書字・会話・体操など活動性や自発性を引き出すことができる。さらには季節を感じ、その方の生活歴や思い出を聞き出しながら回想法を利用して認知賦活を図るなどの取り組みにより、「ただ座らされている」のではなく、「意欲的に楽しみを持って離床している」状態を作り出し、このことが認知賦活を促し、今回示されたような認知機能の向上につながっているのではないかと考える。また、他職種が連携し利用者と関わりを持つことで利用者の多様なニーズに対応できること、そして、各職種が専門性を生かして相互に補完し合うことで、より包括的なサポートが可能になると考える。
本研究と同じように眠りSCANを使用し、高齢者の睡眠の実態と日常生活動作能力や認知症の周辺症状について調査した前野らの報告によれば、認知症の周辺症状がある人ほど、睡眠効率が低くなっている。睡眠が不安定になると見当識障害のための混乱が起こり、不安や緊張が高まり、興奮・徘徊・昼夜逆転へつながることを示唆している。
日中に離床時間を確保することで生活リズムが整い、認知機能の維持・向上だけでなく精神面でも安定するといったプラスの要素が期待できる。精神機能については今回の調査では触れておらず、今後、認知症行動障害尺度(Dementia Behavior Scale)等の評価を用いた検討をしていく必要がある。
施設内で利用者が楽しみを持ちながら離床時間を確保し、認知機能の低下を予防できるような環境作りに取り組むことで、在宅復帰後も生き生きとした生活が送る支援ができることが望ましい。
楽しみを持ち、さらに自分の役割を持つことでQuality of Life(生活の質・人生の質)の向上につながるように、今後も慈生会介護が目指す“よく遊び、よく学び、よく鍛える”の3本柱を大切にして実践したい。
戸原らの先行研究によると、6時間以上離床すると全身の筋肉量が保たれ、覚醒状態が安定し摂食嚥下機能が向上する事を示している。介護老人保健施設は主に病院での治療が終了した要介護者が、在宅復帰までの間に利用される中間施設として位置付けられており、リハビリテーション専門職によるリハビリテーションの機会も病院に比較し限られていることが多い。そのため、日常生活のアプローチの一つとして離床時間の確保が重要となってくる。
【目的】
当施設は超強化型の施設であり、ICT機器を積極的に導入している。“よく遊び、よく学び、よく鍛える”という慈生会式介護の目指す姿を大切な3本柱として考え、アクティビティ等を始めとして他職種が協力し工夫を凝らしながら離床時間の確保に取り組んでいる。今回は、離床時間の確保が認知機能の変化に影響を及ぼしているのか明らかにする事を目的に、3ヶ月後の認知機能の変化について得られた結果から統計学的に検討し、当施設の離床時間の確保を図る取り組みと共に報告する。
【期間】
令和7年3月1日~令和7年6月31日
【対象】
令和7年3~4月に入所した利用者のうち非認知症を除く20名(男性5名、女性15名)。
平均年齢84.66歳(±4.76)。平均要介護度3.37(±0.97)。
【方法】
令和7年3~4月に入所された利用者のうち非認知症を除く20名を対象に、非接触型睡眠計測器である眠りSCAN Viewer NN-C110(以下:眠りSCAN)による平均離床時間を調査した。眠りSCANに保存されている情報より、平均就床時間から3ヶ月間の平均離床時間を計算した。長谷川式簡易知能評価スケール(以下:HDS-R)・ミニメンタルステート検査(以下:MMSE)を用いて認知機能評価を入所時と3ヶ月目に実施した。
統計学的手法については、今回の調査における母集団の数が少ない為、ウィルコクスン符号付き順位検定を使用。検定の条件は、有意水準は5%、帰無仮説を6時間以上の離床時間による3ヶ月後の認知点数の変化には差は無い、対立仮説では6時間以上の離床時間による3ヶ月後の認知点数の変化には差が無いとは言えないと設定する。
【結果】
平均離床時間は13.46時間であり、20名の全ての利用者が6時間以上離床していることが分かった。
HDS-Rの点数は入所時平均12.95点(±7.93)、3ヶ月後平均15.1点(±7.37)であり有意に向上した。
また、MMSEの点数は入所時平均15.2点(±7.58)、3ヶ月後平均17.05点(±6.46)でありこちらも有意に向上した。
入所時より3ヶ月後のHDS-R・MMSEの点数の変化には統計学的な有意差が認められる結果となった。
【考察】
今回の研究において、対象とした新規入所者全員が13.46時間という十分な離床時間を確保できていることがICT機器を用いて数値的に示された。離床時間の確保を目標とするには、多職種が簡単に操作でき自動的に離床時間が算出される機器を用いることは重要だと考える。先行研究によれば、離床時間を6時間以上確保することは、筋肉を働かせて自分の体重を支えるという重力負荷を与えることで全身の筋肉量が維持され、覚醒状態も安定しやすいことが示されている。今回の対象者については、毎食離床して食事を摂取していることに加え、積極的な離床時間を確保することができており、結果として長時間の座位が保てるようになり、傾眠傾向が軽減され、耐久性の向上などの効果が期待できたと考える。
施設入所高齢者の離床時間が延長する要因を検討した先行研究では、人的な要因、物的環境、離床目標の設定、そして離床を促すアクティビティの豊富さが、離床時間を向上するために重要であると指摘している。
離床時間確保のための働きかけとしては、ほぼ毎日何かしらのアクティビティやイベントを開催していることが当施設の大きな特徴である。学校形式アクテビティや屋上庭園での園芸活動、喫茶店やピザ作り等の食事イベント、お花見や納涼祭等の四季折々のアクティビティを開催している。このようなアクティビティの中で、毎日の日付の確認を行うことで見当識の向上を図り、書字・会話・体操など活動性や自発性を引き出すことができる。さらには季節を感じ、その方の生活歴や思い出を聞き出しながら回想法を利用して認知賦活を図るなどの取り組みにより、「ただ座らされている」のではなく、「意欲的に楽しみを持って離床している」状態を作り出し、このことが認知賦活を促し、今回示されたような認知機能の向上につながっているのではないかと考える。また、他職種が連携し利用者と関わりを持つことで利用者の多様なニーズに対応できること、そして、各職種が専門性を生かして相互に補完し合うことで、より包括的なサポートが可能になると考える。
本研究と同じように眠りSCANを使用し、高齢者の睡眠の実態と日常生活動作能力や認知症の周辺症状について調査した前野らの報告によれば、認知症の周辺症状がある人ほど、睡眠効率が低くなっている。睡眠が不安定になると見当識障害のための混乱が起こり、不安や緊張が高まり、興奮・徘徊・昼夜逆転へつながることを示唆している。
日中に離床時間を確保することで生活リズムが整い、認知機能の維持・向上だけでなく精神面でも安定するといったプラスの要素が期待できる。精神機能については今回の調査では触れておらず、今後、認知症行動障害尺度(Dementia Behavior Scale)等の評価を用いた検討をしていく必要がある。
施設内で利用者が楽しみを持ちながら離床時間を確保し、認知機能の低下を予防できるような環境作りに取り組むことで、在宅復帰後も生き生きとした生活が送る支援ができることが望ましい。
楽しみを持ち、さらに自分の役割を持つことでQuality of Life(生活の質・人生の質)の向上につながるように、今後も慈生会介護が目指す“よく遊び、よく学び、よく鍛える”の3本柱を大切にして実践したい。
