講演情報

[27-O-F003-02]デイケアプログラム活動に不参加だった利用者への介入

北海道 今泉 秀彦, 織田 会美, 瀧澤 祐希, 根本 忠典, 藤原 和彦 (医療法人耕仁会 介護老人保健施設 セージュ新ことに)
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1.はじめに
 当施設の通所リハビリテーションの定員は90名、前年度の1日平均稼働率は92.1%だった。満足度向上の為、年2回以上250名前後の利用者にサービス調査を実施している。今回のアンケート結果から、74名が施設の趣味活動に不参加だったことが判明した。そこで本人・家族の意向も反映した趣味活動導入による利用者の参加率、サービス満足度、在宅生活の変化について検証するアンケートを実施した。
2.アンケート期間と内容
 期間は2025年3月~2025年6月に実施した。通所255名の登録者の中から、施設の趣味活動に不参加利用者74名とその家族にアンケート調査及びヒヤリングを実施した。(1)施設の活動満足度、(2)本人及び家族が希望する活動、(3)在宅生活での様子、について調査した。アンケート回収率は88.4%だった。結果の内訳は、活動に満足が87%、本人が望み家族の参加させたい活動は将棋や囲碁などが半数以上を占めた。集計・分析から対象者74名中、施設活動の満足度が低い利用者10名を対象に活動参加促進の介入をした。
3.不参加利用者及び家族へのアプローチ
 家族から得た情報を各担当介護職員に伝達・共有した。施設活動に不参加の原因を職員でカンファレンスした。職員から「利用者の趣味・特技を把握できていない」、「活動参加で個別の声掛けが不足しているのではないか」、「本人の意思決定について尊重するべきではないか」等の意見があった。各々の課題解決のため、対象家族に改めてヒヤリングを実施した。家族から情報を得る上で、利用者の趣味、特技に止まらず生活歴や人格面を尊重した。また、家族から日頃の在宅介護の様子や苦労などを受容、共感し、心理的負担を和らげ、施設への要望を拝聴した。家族から「将棋は好きだけど教える側であったため、プライドがあるのかもしれない」、「関係性が構築できていない方と交流するのが苦手なのかもしれない」等の情報があった。個々の生活歴や特性をより深く理解した上で、活動参加を促進した。利用者10名に家族から得た情報を基に10分程の会話をした。将棋や囲碁等に参加して頂くだけではなく、昔は将棋の指導者だった利用者には、その当時の役割を回想することで、参加への動機付けをした。
 その上で活動に興味がない利用者には、連絡帳や電話で家族と情報共有を図った。利用者に合わせ、介護職の介入の他、作業療法士や理学療法士からも活動参加を促す声掛けを2ヵ月間継続した。
4.結果
 本研究対象者へ家族の意向を反映した趣味活動の実施により、これまで活動に不参加だった利用者の参加率は100%になった。施設サービス満足度10名中8名が満足と回答し一定の効果が認められた。
 満足と回答した利用者の意見として最も多かったのは、「職員や家族にもたくさん声をかけられたから」であった。また、「将棋なら久しぶりにやってみるか」、「家ではやらないけど、楽しかった」等、前向きな言葉が聞かれた。一方で満足に至らなかった2名共に「昔のようにはできない」等の意見があった。
 利用者の家族から、「将棋の他に、カラオケに参加して楽しんでいるようなので、良かった」、「前は通うのを嫌がっていたが、今はそれ程でもない」、「送迎時のみ関わっていた職員と話せたことで、セージュ新ことにの印象が良くなった」等の感想を頂いた。在宅生活での様子については「天気の良い時は外に行くようになった」、「手術後に筋力低下がみられたが、通所の活動参加をしてからは、リハビリに取り組む気持ちが前向きになり、絶大な効果を感じる」等が聞かれた。
 作業療法士からは「集中して活動やリハビリに取り組むようになった」、「リハビリに対する要望が多くなった」等の声があった。ご家族の意向、利用者本人に合致する活動と考えられ、継続参加の有効性を示唆した。
5.考察
 従来の方法では活動に不参加だった利用者に、家族の情報や意向を尊重した参加促進は有効性を認めた。社会集団に適応困難、意思表出が苦手な利用者には、個々の生活歴や趣味を理解する重要性を再認識した。家族のヒヤリングを通し、活動参加についての情報や要望等を把握する有効な機会となった。
 今後、利用者の意思決定を尊重する活動は認知機能・意欲等、個々の状態に応じた支援が求められる。介護職員は家族との送迎時以外での情報共有の機会が増え、更に理解を深められた。今回の研究から、職員間で新たな利用者の一面を見られた事に対する喜びを共有できた。実施期間中、「利用者が参加したい」と思える活動の企画を職員が提供する意識が広がった。現在では、各曜日事に担当職員を決め、利用者、家族の意向を反映させた新規活動の企画・実施を通し、職員への人材育成にも効果を認めつつある。
6.今後の課題と展望
 活動時の介護職員の介入、家族との連携時間等、業務負担は増えた。今後対象利用者が増加した場合、職員のみのサービスでは継続提供の困難が予測される。多職種の連携、利用者同士のマッチングやボランティア等、社会資源の活用も視野に入れる必要がある。また、今回のアンケート結果では、施設活動に満足と回答した利用者へのサービス提供は実施出来ていない。順次対応するため、介護現場の生産性を高め、本来必要な業務に従事できる時間を確保する必要がある。
 これからも家族の意向を尊重し、利用者の満足度を高める為、準備段階の家族会を発足し、交流機会を増やし、より良いサービスの構築に繋げていきたい。