講演情報

[27-O-F003-03]編み物がつなぐ笑顔の時間利用者と職員の特別な30分

山形県 井上 舞衣子, 櫻井 巧, 萩原 大輔, 會田 幸浩, 高橋 由起子 (介護老人保健施設フローラさいせい)
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【はじめに】
平成30年3月に当施設は山形済生病院南館へ移転となり、1フロア33床から50床へ増床した。これまで1対大人数のレクリエーション活動を中心に行ってきたが、移転後の環境の変化などにより、大人数でのレクリエーション活動に限界を感じていた。また、令和2年から新型コロナウイルスの影響により、レクリエーション活動自体が制限され、利用者の生活の楽しみが減少していた。近年、感染対策が緩和される中で、徐々に余暇活動を再開し、利用者の個別性に合わせた生きがいづくりが必要であると考えた。
そんな中、編み物が好きな1人の利用者の声をきっかけに、令和6年10月から「手芸クラブ」を発足し活動を開始した。今回「手芸クラブ」の活動の様子、活動の評価のため実施したアンケート調査をもとに感じた手芸の効果・余暇活動充実の必要性について検討した。
【方法】
「手芸クラブ」の対象者は編み物が好きな利用者3~4名で、昼食後の30分間、職員1名が付き添い活動した。今回は利用者になじみが深いかぎ針編みを採用とした。頻度は週3回とし、可能であれば職員も一緒に編んだり、難しい場合は毛糸を切ったりと、補助的な役割で関わった。時には利用者に編み方を教えてもらいながら活動した。活動の様子は、介護記録システム「ほのぼのNEXT」にケース入力し記録した。退所した利用者を含め、これまで14名の利用者が参加し、現在まで継続して活動している。参加者の平均年齢は87.7歳、平均要介護度は3.0、全員が女性であった。活動の様子や完成した作品は当施設のインスタグラムに掲載している。
【アンケート結果】
活動の評価のため、令和7年4月参加利用者・職員対象のアンケート調査を実施した。現時点で参加している利用者4名全員が「活動が日常の楽しみになっている。」と回答した。改善点として、今後は職員からの制作物の提案や指導があるといいなどの意見もあったが、全員現在の取り組みを継続したいという結果となった。
職員対象のアンケート調査でも、88%の職員が手芸クラブの活動を継続したいと回答した。主な理由としては、「利用者同士で教え合って楽しんで取り組んでいる様子が見られ、生活に張りが出ていると感じる。」「一緒に活動することで、利用者と関わる時間の確保につながっている。」など前向きな意見が多かった。改善点として、「完成した作品は展示して見えるようにしたほうが良い。」という意見があり、現在はフロア内に展示し、他利用者や面会の家族に見えるようにしている。
【結果】
今回の取り組みを通して日常生活に変化が見られた利用者を紹介する。H様は、入所当初他者交流も少なく、離床時間の確保が難しい方であったが、手芸クラブの活動を通して他者交流と笑顔が増え、現在ではクラブ活動の時間以外でも熱心に編み物に取り組まれている。S様は、面会時にご家族に編み物を披露したところ、ご家族より喜びの声をいただき、家族交流の機会となった。体調や技術の個人差によって参加が難しく感じられる場面もあったが、職員が利用者に教えてもらいながら手芸技術を習得し、補助的に支援するなど、30分間集中的に関わることで、職員と利用者の関係性の向上にもつながった。
【考察】
作業療法士によると、手芸・編み物による効果として以下があげられるとのこと。
(1)認知症予防効果…網目を間違わないよう指先を集中させて作業したり、図面を見ながら編むことで記憶力が鍛えられ、認知機能の維持につながる。
(2)精神安定・リラックス効果…作品を完成させることや、誰かにあげたり、作品を褒められたりすることで満足感・達成感が得られる。
手芸という生活の楽しみが生まれ、生活意欲が高まると、離床時間の確保につながり、認知・身体機能の維持・向上が期待でき、結果として利用者のQOLの向上につながっていくと考えられる。これは本人・家族はもちろん私たち介護者にとっても大変喜ばしく、これこそが介護の魅力の1つだと感じた。
【まとめ】
今回は手芸・編み物に限定した取り組みであったが、令和7年4月に利用者対象の余暇活動についてのアンケート調査を行ったところ、ほかにも書道や折り紙など様々な意見が出された。利用者が笑顔でよりよい施設生活を送ることができるよう、今後は利用者一人一人の生活歴に着目し、さらなる個別性に合わせた余暇活動の充実のために取り組んでいきたいと感じた。