講演情報

[27-O-F003-04]その人らしさを考える思い出の旋律を奏でて

徳島県 高島 章哲 (介護老人保健施設 明和苑)
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その人らしさを考える~思い出の旋律を奏でて~
施設名:介護老人保健施設 
明和苑発表者:高島章哲
共同研究者:職員一同
【はじめに】高齢者が新型コロナウイルスに感染し、その後、明らかなADLの低下や認知症状の進行により、コロナ禍以前の生活に戻れない現状がある。また、施設においてもコロナが5類になっても、クラスター発生の恐怖から、いまだに感染対策を意識しすぎ、いつもの暮らしを取り戻す取り組みが後回しになってしまっている。
Y氏は、令和4年11月と令和7年8月に新型コロナウイルスに2回感染。声をかけないと寝ていることが多く、「自分から何かをしたい。」という意欲的発言はほとんどみられなかった。しかし、食事のために自室からホール出てきて配膳を待っている間、表情良く、長机を鍵盤のように叩いている様子に着目。そこから、保育士として定年まで働いていたという事に気づき、昔を回想し、ピアノ演奏することで「その人らしさ」を引き出せるのではないかと取り組んだことで、心理的変化1症例として報告する。
【対象】名前:Y氏 性別:女性 年齢:93歳職業:定年まで保育士 要介護度:5 障害自立度:B2 認知症度:2B
既往歴:気管支喘息、高血圧、骨粗鬆症、変形性腰椎症、変形性膝関節、老年期認知症、便秘症、左大腿骨転子部骨折骨折合術
性格:日頃から「すいません」が口癖であり消極的である
【目的】自らのエレクトーンの演奏を他の入所者、職員に披露することで「その人らしさを大切にする」ことに繋げ、心理的変化をもたらす。
【方法】1,レクリエーションや食事までの空き時間にエレクトーン前に誘導し、必ず職員が付き添い演奏してもらうよう促していく。
2,家族に保育士時代の写真と思い出のアルバム等を用意して頂く。
3,演奏曲も始めは1曲のみ。その後記憶をたどりながら、レパートリーを増やしていく。
4,約1か月後には他の入所者と職員に演奏を披露する。
【結果】Y氏は常日頃から「すいません。」が口癖でどちらかというと消極的な性格のため、エレクトーンを弾くことを促しても「そんなんできんわ。」と拒否されることも多かった。
そのため、御家族にも協力を依頼し、保育士時代の写真を見せて頂き、一緒に見てゆっくりと回想しながら弾いて頂いた。数回演奏を重ね、特に変化が無かったが、少しずつ表情が明るくなり、「楽しい」との言葉も聞かれるようになった。
演奏曲も最初は1曲のみであったが、記憶を思い出しレパートリーが増え、最終的には4曲となった。
しかし、入所者、職員の前では演奏を披露することは、まだ2回しか出来ていない。
【考察:まとめ】Y氏の中で机を無意識に叩いていることに着目し、そこから保育士として働いていたことに気づき、ピアノの演奏をできたという自信につながった。Y氏の思い出の曲を記憶から掘り起こす事によって、その人らしさを引き出す事の経験が出来た。
今後も入所者の日々の変化を見逃さず「その人らしさを大切にする」質の高いケアを提供していきたい。