講演情報

[27-O-F003-05]笑顔と繋がりを取り戻す日常

大阪府 西谷 美咲, 木村 悠人 (介護老人保健施設石きり)
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(はじめに)
石きりは従来型 90床の介護老人保健施設であり、2フロアに分かれている。入所事業には介護職員が29名在籍しており、その内、コロナ禍以降に初めて介護現場を経験した職員は6名である。今回、コロナ禍に入職した職員の目線から、感染対策が中心の介護から日常生活の質を高める為の介護へ移り変わる中で職員が感じたこと、学んだことを報告する。
(経過)
私たちが専門学校を卒業し石きりで働き始めたのは、2021年でコロナ禍の真っただ中であり、感染対策を第一とした介護を求められていた。先輩のマスクを外した顔も知らず、ソーシャルディスタンスを保ち、他県や繁華街への行動制限を強いられていた。その上で毎週感染症チェックを受け、自らが感染の原因とならないことを祈りながら就労を続けていた。
利用者様の日常は、ほぼ終日マスクを着用され、終末期や認知症の利用者様も家族様との面会も出来ず、外出や友人・地域との交流も遮断され、レクリエーション(以降はレクとする)も制限され施設の中は閉鎖的な空間であった。多くの利用者様の楽しみは、窓際での家族様との面会やライン電話及び手紙のやり取り程度であった。
2023年5月に新型コロナウイルス感染症が5類に移行され、当施設は 2024年10月に職員間や家族様に対しての説明会を何度も行い、大幅な感染対策の緩和を行った。
フロアでの面会の再開や短時間の外出等も可能とし、同月末には利用者様、家族様、地域ボランティアの方々の合計200名程が参加し、共に飲食が出来る秋祭りを施設で開催した。
家族様や利用者様は喜んでおられたが、コロナ禍の介護しか経験していない私たちにとって、感染症対応の緩和は入職後に学んだことが 180度変化している面が多く、改めて業務や対応について理解しないといけなかった。
例えば、パーテーションが不要の食事介助や、レクでのカラオケや集団活動などが再開となったが、実施経験のない自分たちは何をすればいいかわからなかった。また、施設に家族様や知人などの来訪者が複数名いる状況でのレク実施や施設見学、話しかけられた際などには見られていることへの緊張感があり、何と返答すべきかわからず萎縮をすることなどがあった。
緩和での変化に悩んでいた私たちに、教育係の上司が話し合いの機会を設けてくれた。上司からは、コロナ禍以前の家族様・地域ボランティアとの関係性を学んだ。私たちは、家族様や利用者様と職員の関係性構築に向け、レク委員会の立ち上げた。
レク委員会では、利用者様や職員に対してどのようなレク活動や企画を行いたいか聞き取りを行った。精果として、カラオケをしたい、映画を見たい、美味しい物を食べたい、外出して買い物に行きたいなどの意見が出た。日常の中で職員と出来るレク、家族様と共に行うレクに分け、取り組みを行う事とした。
私たちは、家族様参加型で利用者様と共に、石切神社参拝と参道筋にお小遣いを持ち買い物に行く企画を担当する事となった。石切参道筋は坂道の為、事前に下見も兼ねて自分たちも車いすに乗り移動の安全性の確認を行った。また店舗状況や価格帯調査も行い、お小遣いの金額設定や家族様の同行依頼なども担当した。
(感想・考察)
コロナ禍に入職し感染対策こそが介護の基本であった私たちが、緩和に伴う変化に悩み行事を企画していく中で、感染症のリスク以外にも事故の危険性や利用様や家族様や職員たちの満足度など新たな視点を持って考えていくようになった。上司の後押しや助言を受けながら、利用者様の満足度を重点に置き外出企画を実行し、参加者からは、「地域の文化や住人と自分たちが触れあえることで忘れられない一日になった」と感想を言われた。悩みながら企画した事が利用者様や家族様の心に残り、コロナ禍で疎遠となっていた地域と繋がり持つことも出来たと考える。
住み慣れた地域で、家族様と食べたい物を買う事や欲しい物を共に選ぶ時間は特別であり、閉鎖的な空間から解放され、利用者様の表情はイキイキとされ充実感や生きがいを感じている様に感じた。
(今後の課題)
現在も一部の感染対策の制限は継続している。安全性と満足度の葛慶は続くが、利用者様・家族様・職員が地元の地域と繋がりながら生活している事を実感できる企画を今後もしていきたい。
日常のレクやこのような企画が、利用者様の生活意欲や生活の質の向上を図る機会となり、更には身体状態の向上や施設の中でも自分らしく生きる事が出来ると考えるようになった。
一方で、今までの利用者様と職員だけの狭く濃い関係性から、家族様などの外部の方とも広く関わりを持つように変化しており、介護や医療だけでなく幅広い知識を持ち、分かりやすく説明できることなど、自分自身を含めた職員の話し方や接遇について見直す必要性があると感じた。
今後は、地域ボランティアの受け入れや地元学校などとの交流も視野に入れており、継続的で発展的な取り組みを計画する上で、接遇に関する注意点を職員間で共有し丁寧な信頼関係の構築をしていく事が課題となっている。
(終わりに)
制限された日常の中で介護を学び始めた私たちは、感染対策や予防対策が業務にかなりの負担を強いられていた。制限が緩和され、利用者様が家族様や友人と再会して涙を流す姿や、外出時の嬉しそうな姿、地元の街並みの変化に驚いている姿、買い物をしている時の満面の笑顔などを、傍で今までと違った介護を体感することが出来た。緩和の変化に動けず悩んでいた自分がまず行動することで、新たな柔軟性と新しい価値観を持つことが出来た。
老健に就職し4年目となり、これからも悩み苦しむ事もあると思うが、利用者様が一日一日笑顔で生き、自由と自己決定できることに寄り添える職員でありたい。