講演情報
[27-O-F004-01]思いをかたちに心を動かすレクリエーション
岡山県 ○黒岡 諒 (介護老人保健施設 ニューエルダーセンター)
【はじめに】
当施設では様々な行事、レクリエーション(以下レク)を企画、実施している。近年、新型コロナウイルス感染症対策の中、施設におけるレク活動は制限をうけた。利用者の安全や健康を確保するためレクがマンネリ化し、参加利用者が少なくなった。季節のイベント、家族との面会に対して制限が重なり、利用者から笑顔が消えていった。制限が緩和されてきた今、レクを通じて利用者の生活を充実させるためにはどうしたら良いか、利用者に笑顔を取り戻してほしいと思い、施設で取り組んだ内容をここに報告する。
【期間および方法】
期間 令和6年6月~令和7年5月
方法 ・コミュニケーションが可能な利用者に行きたいところ、今してみたいこと、昔遊びなどを聞く
・利用者の希望を盛り込み、レク委員会で年間計画を立案し実行する
【取り組み】
事例1 行きたいところ
初詣、とんど焼き、花見、紅葉狩りなど四季を感じる場所へ出かけている。今行ってみたい所を聞いてみると「昔はドライブが好きだった」「住んでいた所がどうなっているか見に行きたいわ」との声が聞かれた。利用者の生まれ育った地域ごとにグループ分けをおこない、ドライブを計画した。自宅周辺に近づくと、普段は静かな利用者が「私の家はこの辺りにあるんよ」「あっ、あの山は見たことがあるで」と話した。カーナビのように案内を始めて、目的地に辿り着くこともあった。地域に昔からある店を調べ、利用者が幼少期に訪れた大判焼きの店やお茶屋にも立ち寄った。「おいしいなぁ。母親や兄弟と一緒によく行ったんよ」「あの頃を思い出すわ」と懐かしい味に舌鼓を打った。外出して懐かしい記憶をたどったことで、五感を刺激し心身のリラックスにつながった。利用者同士「今度はあそこへ行きてーなー」「元気でおらんと行けれんな」と話し、活動意欲も増した。地域から離れて施設で生活している利用者が外出することは、地域社会との関わりを保つことにつながる。
事例2 美味しいものが食べたい
食に関する希望では「甘いものが食べたい」「マックが食べたい」「ビールが飲みたい」「料理をしたい」と言う声が聞かれた。ソフトクリームづくり、パフェやクレープ、お好み焼きやたこ焼きなど、おやつ作りはいつも喜ばれる。クリスマスには職員と利用者で協力してクリスマスケーキを作った。いつもはレクに消極的な利用者が、作業が始まると自らヘラを持ってクリームを塗り、飾りつけをした。屋外でバーベキュー大会を開催した。「まだ焼けんの」と楽しみに待つ利用者、待ちきれずノンアルコール飲料を飲み、ほろ酔い気分になる利用者、新鮮な空気の中、美味しそうな匂いにいつもより食事がすすんだ。ベトナム技能実習生とベトナムの伝統料理を一緒に作った。初めてつくる異国の料理を「変わった味じゃなあ」という声もあったが残さずに食べていた。共同作業は孤独感を軽減する。料理は長年続けてきた馴染みの作業であり、安全に出来る範囲で料理をすることは、達成感を感じると共に食べる楽しみがある。
事例3 昔遊び
幼少期の良き思い出として昔遊びについて嬉しそうに話す利用者が多かった。お手玉、かるた、おはじきなどをおこなってみた。日中の大半をテレビを見て過ごす利用者をお手玉遊びに誘うと「私は遠くで見ているだけでいいから」と消極的だった。皆でお手玉をはじめると「私は自分でお手玉を縫って遊んでたんよ」「お手玉名人って呼ばれてたんよ」と話しはじめた。歌を口ずさみながら器用にお手玉をはじめた。何の歌か聞くと、「戦争の歌。昔は皆この歌をうたいながらお手玉をしようた」と教えてくれた。大きな声を出して落ち着かないことが多い利用者をかるた取りに誘った。いざはじめると大きな声は消え、真剣な表情になった。「はい」と身を乗り出して素早く札を取り、他の利用者が目をうろうろさせている間に「あそこにある」と遠い場所にあっても誰よりも先に札を見つけた。お手玉やかるたのような昔遊びは瞬時の判断が必要なため、集中力の向上につながる。懐かしい道具や子供の頃の遊びを再現することは、心穏やかな時間を過ごす助けになると実感した。
事例4 利用者が過ごしてきた時代
利用者から話を聞いていると昔のことを話しはじめる利用者が多かった。「昔はお米なんかなかった。今はお米が食べれて幸せよなあ」と戦争前後の生活の大変さを話してくれた。職員が利用者の過ごしてきた時代を知りたいと思い、昔の生活風景や出来事のDVDを取りよせ、利用者と一緒に鑑賞した。集団お見合いの映像を見て「昔はこれが普通だった。私の親戚はこうやって結婚したわ」と言う利用者がいた。戦時中の映像では「私は見たくありません。良い思い出はありませんから」と涙を流す利用者、「人生で何が一番心に残っていますか」と質問をすると「みんなが無事に戦争から帰ってきてくれたこと」と話してくれた。人生を振り返ることは喜びもあれば、苦しみや哀しみもある。過去の体験は利用者の心の中にエピソード記憶として残されているため会話がスムーズに広がる。利用者が話す大切な記憶をしっかりと受け止めていきたい。
【考察】
レクは心身両面の健康維持、向上に重要な役割を果たす。レクは利用者同士の交流を深め、職員と利用者の大切なコミュニケーションの時間になる。人と人とのつながりは心を安定させ、楽しみのある活動は生きる糧となる。日々のレクが利用者の人生の一部と重なった時、心を動かし、言葉や感情、表情、意欲として現れる。
【まとめ】
施設に入所すると今までの当たり前の生活が一変する。施設の中でも利用者の望みをかなえたい。利用者の満足度を高めるためには利用者の声を聞き、思いをかたちにしていく必要がある。どんな状況下においても利用者の心を動かすレクを提供することは、日々の生活を充実させ、利用者の笑顔につながる。
当施設では様々な行事、レクリエーション(以下レク)を企画、実施している。近年、新型コロナウイルス感染症対策の中、施設におけるレク活動は制限をうけた。利用者の安全や健康を確保するためレクがマンネリ化し、参加利用者が少なくなった。季節のイベント、家族との面会に対して制限が重なり、利用者から笑顔が消えていった。制限が緩和されてきた今、レクを通じて利用者の生活を充実させるためにはどうしたら良いか、利用者に笑顔を取り戻してほしいと思い、施設で取り組んだ内容をここに報告する。
【期間および方法】
期間 令和6年6月~令和7年5月
方法 ・コミュニケーションが可能な利用者に行きたいところ、今してみたいこと、昔遊びなどを聞く
・利用者の希望を盛り込み、レク委員会で年間計画を立案し実行する
【取り組み】
事例1 行きたいところ
初詣、とんど焼き、花見、紅葉狩りなど四季を感じる場所へ出かけている。今行ってみたい所を聞いてみると「昔はドライブが好きだった」「住んでいた所がどうなっているか見に行きたいわ」との声が聞かれた。利用者の生まれ育った地域ごとにグループ分けをおこない、ドライブを計画した。自宅周辺に近づくと、普段は静かな利用者が「私の家はこの辺りにあるんよ」「あっ、あの山は見たことがあるで」と話した。カーナビのように案内を始めて、目的地に辿り着くこともあった。地域に昔からある店を調べ、利用者が幼少期に訪れた大判焼きの店やお茶屋にも立ち寄った。「おいしいなぁ。母親や兄弟と一緒によく行ったんよ」「あの頃を思い出すわ」と懐かしい味に舌鼓を打った。外出して懐かしい記憶をたどったことで、五感を刺激し心身のリラックスにつながった。利用者同士「今度はあそこへ行きてーなー」「元気でおらんと行けれんな」と話し、活動意欲も増した。地域から離れて施設で生活している利用者が外出することは、地域社会との関わりを保つことにつながる。
事例2 美味しいものが食べたい
食に関する希望では「甘いものが食べたい」「マックが食べたい」「ビールが飲みたい」「料理をしたい」と言う声が聞かれた。ソフトクリームづくり、パフェやクレープ、お好み焼きやたこ焼きなど、おやつ作りはいつも喜ばれる。クリスマスには職員と利用者で協力してクリスマスケーキを作った。いつもはレクに消極的な利用者が、作業が始まると自らヘラを持ってクリームを塗り、飾りつけをした。屋外でバーベキュー大会を開催した。「まだ焼けんの」と楽しみに待つ利用者、待ちきれずノンアルコール飲料を飲み、ほろ酔い気分になる利用者、新鮮な空気の中、美味しそうな匂いにいつもより食事がすすんだ。ベトナム技能実習生とベトナムの伝統料理を一緒に作った。初めてつくる異国の料理を「変わった味じゃなあ」という声もあったが残さずに食べていた。共同作業は孤独感を軽減する。料理は長年続けてきた馴染みの作業であり、安全に出来る範囲で料理をすることは、達成感を感じると共に食べる楽しみがある。
事例3 昔遊び
幼少期の良き思い出として昔遊びについて嬉しそうに話す利用者が多かった。お手玉、かるた、おはじきなどをおこなってみた。日中の大半をテレビを見て過ごす利用者をお手玉遊びに誘うと「私は遠くで見ているだけでいいから」と消極的だった。皆でお手玉をはじめると「私は自分でお手玉を縫って遊んでたんよ」「お手玉名人って呼ばれてたんよ」と話しはじめた。歌を口ずさみながら器用にお手玉をはじめた。何の歌か聞くと、「戦争の歌。昔は皆この歌をうたいながらお手玉をしようた」と教えてくれた。大きな声を出して落ち着かないことが多い利用者をかるた取りに誘った。いざはじめると大きな声は消え、真剣な表情になった。「はい」と身を乗り出して素早く札を取り、他の利用者が目をうろうろさせている間に「あそこにある」と遠い場所にあっても誰よりも先に札を見つけた。お手玉やかるたのような昔遊びは瞬時の判断が必要なため、集中力の向上につながる。懐かしい道具や子供の頃の遊びを再現することは、心穏やかな時間を過ごす助けになると実感した。
事例4 利用者が過ごしてきた時代
利用者から話を聞いていると昔のことを話しはじめる利用者が多かった。「昔はお米なんかなかった。今はお米が食べれて幸せよなあ」と戦争前後の生活の大変さを話してくれた。職員が利用者の過ごしてきた時代を知りたいと思い、昔の生活風景や出来事のDVDを取りよせ、利用者と一緒に鑑賞した。集団お見合いの映像を見て「昔はこれが普通だった。私の親戚はこうやって結婚したわ」と言う利用者がいた。戦時中の映像では「私は見たくありません。良い思い出はありませんから」と涙を流す利用者、「人生で何が一番心に残っていますか」と質問をすると「みんなが無事に戦争から帰ってきてくれたこと」と話してくれた。人生を振り返ることは喜びもあれば、苦しみや哀しみもある。過去の体験は利用者の心の中にエピソード記憶として残されているため会話がスムーズに広がる。利用者が話す大切な記憶をしっかりと受け止めていきたい。
【考察】
レクは心身両面の健康維持、向上に重要な役割を果たす。レクは利用者同士の交流を深め、職員と利用者の大切なコミュニケーションの時間になる。人と人とのつながりは心を安定させ、楽しみのある活動は生きる糧となる。日々のレクが利用者の人生の一部と重なった時、心を動かし、言葉や感情、表情、意欲として現れる。
【まとめ】
施設に入所すると今までの当たり前の生活が一変する。施設の中でも利用者の望みをかなえたい。利用者の満足度を高めるためには利用者の声を聞き、思いをかたちにしていく必要がある。どんな状況下においても利用者の心を動かすレクを提供することは、日々の生活を充実させ、利用者の笑顔につながる。
