講演情報
[27-O-F004-03]調理レクを行った通所リハ利用者における健康度の変化
秋田県 ○神原 美里, 田口 昂 (社会福祉法人賛成福祉会介護老人保健施設山盛苑)
1.はじめに
当苑では家事動作にあたる調理動作は、生活活動に対するアプローチを行う観点から通所利用者に対してレクリエーションとして取り入れている。新岡らは通所リハビリテーション利用者を5年間追跡調査し健康関連QOLの精神的健康度が低下していることを報告している。また、広義の「レクリエーション」に関しての報告や論文は多数見られるが、狭義の「調理レクリエーション、料理レクリエーション」に関しての報告や論文、中でも「調理レクリエーション、料理レクリエーション」を定期的に長期間にわたって実施した例は少なかった。そこで当苑の調理レクリエーション(以下「調理レク」)を通じて健康度(身体・心理・社会機能およびQOLを含めた包括的な健康概念)にどのような変化があるのかを調査する目的で研究を行った。
2.研究目的
調理レクが健康度に与える影響を調査する。
3.対象
1)期間
期間は令和6年5月~令和7年2月の10か月間とした。
2)対象者
対象者は令和6年5月~令和7年2月までの対象期間中に当苑通所リハを継続して利用した利用者かつ家族の同意を得られた18名(女性:9名、男性:9名、平均年齢83.72±8.74歳)とした。
4.方法
1)評価方法
対象者のQOLを評価するにあたり、SF-36v2のスタンダード版(以下SF-36)を評価バッテリーとして選択した。定期的に調理レクを実施する以前の令和6年5月(介入前)に通所利用者にSF-36を実施し、令和7年2月(介入後)に再度実施した。通所利用者ご家族に調理レクについてのアンケートを自由記述形式でSF-36の実施に合わせて計2回行った。
2)調理レクの方法
令和6年5月~令和7年2月にかけて月に1回月曜日から金曜日の曜日毎に調理レクを実施した。なお、感染症による影響により令和6年8月及び12月、令和7年1月は未実施となった。
3)検定方法
検定方法はSF-36の得点の正規性を確認するためにQQプロットを作成し、正規性があることを確認した後、対応のあるt検定を適用した。有意水準は5%とした。
5.結果
1)SF-36の得点の統計解析
SF-36の8つの各下位尺度の得点及び3つのサマリースコアについて介入前後で統計解析を行った結果、心の健康(p=0.023)、精神的健康度(p=0.046)に有意差がみられた(p≦0.05)。その他に有意差はみられなかった。
2)家族アンケートの結果
介入前の回答として、「家での調理を今でも続けており、レクリエーションで調理を行うことを喜んでいる」「できるだけやればよいと思う」「適度な刺激があればよい」であった。
介入後の回答として、「頭や手が使えるので良い」「色々制限された中で楽しませてほしく、会話中心で対応してほしい」「自宅では調理道具を使用する機会が減っており、筋力がこれ以上低下しないようにしてほしい」であった。(一部要約)
6.考察
本研究は調理レクを行った通所利用者の10か月後の健康度の変化を調査した。本研究では調理レクを行ったことにより、利用者のQOLは維持されると仮説を立てていたが、SF-36のサマリースコアの内の1つの「精神的健康度」、下位尺度の「心の健康」が低下していた。「精神的健康度」には「心の健康」が含まれ、「心の健康」には「神経質」「落ち込み」「穏やかな気分」「憂鬱な気分」「楽しい気分」が含まれる。
尾形によると外出の頻度が多い、会話の頻度が多い、運動習慣があるという自己効力感評価指標が高いとSF-36の得点が高くなると報告されている。また、上村らによると、ストレス反応度がQOL、特に精神的健康度に影響を与えると報告している。このことから、対象期間中に当苑で感染症が流行し、通所リハの休業によって外出、会話の頻度が低下し運動習慣が途切れたことと、通所リハ休業前後の感染対策により普段と異なる環境がストレスとなったことが精神健康度、特に「心の健康」に影響したのではないかと考える(閉鎖期間はR6.8/8~9/3、R6.12/11~R7.1/14。休業期間はR6.12/11~1/6)。また調理レクの実施が途切れてしまったことで、その効果が反映されなかったことが考えられる。
新岡らは通所リハ利用者のQOLの変化を5年調査した結果、精神的健康度が低下した(P<0.01)と報告している。本研究では対象期間が短く、対象者が少ないものの精神的健康度は有意水準を僅かに下回る程度だった。先ほどの感染症の影響を踏まえても調理レクが精神的健康度にプラスの影響を及ぼすことを示唆していると考える。Hellstromらは社会的ネットワーク(以下SN)、特に3人以上の人との接触が精神的健康度に強いプラスの影響を与えると報告している。また、大谷らは共同で行う調理の効果として情動の安定がもたらされ、利用者同士・職員と利用者間のコミュニケーションが促進されたと報告している。家族アンケートでは調理が会話のきっかけになっていること、調理によって会話の促進を期待する声が伺えた。このことからも、調理レクがSNを促進する効果があり、精神的健康度にプラスの影響を及ぼすことでQOLの維持が図れる可能性が示唆された。
7.研究の限界と今後の展望
本研究では健康度の変化において調理レクを行った場合でも、先行研究と同様に通所リハ利用者の精神的健康度の低下がみられた。さらに感染症の流行により当初予定した通りに実施することはできなかったため、調理レクの効果を十分に調査できたとは言い難い結果となった。また調理レク以外の影響を排除することも業務上限界があった。
今後は調理レクの特徴であるSNをより促進できるよう開催の頻度や実施方法、メニューを再検討し継続していく方針である。
当苑では家事動作にあたる調理動作は、生活活動に対するアプローチを行う観点から通所利用者に対してレクリエーションとして取り入れている。新岡らは通所リハビリテーション利用者を5年間追跡調査し健康関連QOLの精神的健康度が低下していることを報告している。また、広義の「レクリエーション」に関しての報告や論文は多数見られるが、狭義の「調理レクリエーション、料理レクリエーション」に関しての報告や論文、中でも「調理レクリエーション、料理レクリエーション」を定期的に長期間にわたって実施した例は少なかった。そこで当苑の調理レクリエーション(以下「調理レク」)を通じて健康度(身体・心理・社会機能およびQOLを含めた包括的な健康概念)にどのような変化があるのかを調査する目的で研究を行った。
2.研究目的
調理レクが健康度に与える影響を調査する。
3.対象
1)期間
期間は令和6年5月~令和7年2月の10か月間とした。
2)対象者
対象者は令和6年5月~令和7年2月までの対象期間中に当苑通所リハを継続して利用した利用者かつ家族の同意を得られた18名(女性:9名、男性:9名、平均年齢83.72±8.74歳)とした。
4.方法
1)評価方法
対象者のQOLを評価するにあたり、SF-36v2のスタンダード版(以下SF-36)を評価バッテリーとして選択した。定期的に調理レクを実施する以前の令和6年5月(介入前)に通所利用者にSF-36を実施し、令和7年2月(介入後)に再度実施した。通所利用者ご家族に調理レクについてのアンケートを自由記述形式でSF-36の実施に合わせて計2回行った。
2)調理レクの方法
令和6年5月~令和7年2月にかけて月に1回月曜日から金曜日の曜日毎に調理レクを実施した。なお、感染症による影響により令和6年8月及び12月、令和7年1月は未実施となった。
3)検定方法
検定方法はSF-36の得点の正規性を確認するためにQQプロットを作成し、正規性があることを確認した後、対応のあるt検定を適用した。有意水準は5%とした。
5.結果
1)SF-36の得点の統計解析
SF-36の8つの各下位尺度の得点及び3つのサマリースコアについて介入前後で統計解析を行った結果、心の健康(p=0.023)、精神的健康度(p=0.046)に有意差がみられた(p≦0.05)。その他に有意差はみられなかった。
2)家族アンケートの結果
介入前の回答として、「家での調理を今でも続けており、レクリエーションで調理を行うことを喜んでいる」「できるだけやればよいと思う」「適度な刺激があればよい」であった。
介入後の回答として、「頭や手が使えるので良い」「色々制限された中で楽しませてほしく、会話中心で対応してほしい」「自宅では調理道具を使用する機会が減っており、筋力がこれ以上低下しないようにしてほしい」であった。(一部要約)
6.考察
本研究は調理レクを行った通所利用者の10か月後の健康度の変化を調査した。本研究では調理レクを行ったことにより、利用者のQOLは維持されると仮説を立てていたが、SF-36のサマリースコアの内の1つの「精神的健康度」、下位尺度の「心の健康」が低下していた。「精神的健康度」には「心の健康」が含まれ、「心の健康」には「神経質」「落ち込み」「穏やかな気分」「憂鬱な気分」「楽しい気分」が含まれる。
尾形によると外出の頻度が多い、会話の頻度が多い、運動習慣があるという自己効力感評価指標が高いとSF-36の得点が高くなると報告されている。また、上村らによると、ストレス反応度がQOL、特に精神的健康度に影響を与えると報告している。このことから、対象期間中に当苑で感染症が流行し、通所リハの休業によって外出、会話の頻度が低下し運動習慣が途切れたことと、通所リハ休業前後の感染対策により普段と異なる環境がストレスとなったことが精神健康度、特に「心の健康」に影響したのではないかと考える(閉鎖期間はR6.8/8~9/3、R6.12/11~R7.1/14。休業期間はR6.12/11~1/6)。また調理レクの実施が途切れてしまったことで、その効果が反映されなかったことが考えられる。
新岡らは通所リハ利用者のQOLの変化を5年調査した結果、精神的健康度が低下した(P<0.01)と報告している。本研究では対象期間が短く、対象者が少ないものの精神的健康度は有意水準を僅かに下回る程度だった。先ほどの感染症の影響を踏まえても調理レクが精神的健康度にプラスの影響を及ぼすことを示唆していると考える。Hellstromらは社会的ネットワーク(以下SN)、特に3人以上の人との接触が精神的健康度に強いプラスの影響を与えると報告している。また、大谷らは共同で行う調理の効果として情動の安定がもたらされ、利用者同士・職員と利用者間のコミュニケーションが促進されたと報告している。家族アンケートでは調理が会話のきっかけになっていること、調理によって会話の促進を期待する声が伺えた。このことからも、調理レクがSNを促進する効果があり、精神的健康度にプラスの影響を及ぼすことでQOLの維持が図れる可能性が示唆された。
7.研究の限界と今後の展望
本研究では健康度の変化において調理レクを行った場合でも、先行研究と同様に通所リハ利用者の精神的健康度の低下がみられた。さらに感染症の流行により当初予定した通りに実施することはできなかったため、調理レクの効果を十分に調査できたとは言い難い結果となった。また調理レク以外の影響を排除することも業務上限界があった。
今後は調理レクの特徴であるSNをより促進できるよう開催の頻度や実施方法、メニューを再検討し継続していく方針である。
