講演情報

[27-O-G001-01]介護リテラシーの向上押さえるべき介護のポイント“ポジショニング”

鹿児島県 宮城 明日香, 春別府 稔仁 (介護老人保健施設 サンセリテのがた)
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【背景】
 体位交換やポジショニングは、特に寝たきりの利用者の関節拘縮進行予防や褥瘡予防において重要な役割を果たす。当施設では専門棟介護職(以下CW)からリハビリ職に対してポジショニングに関する相談を受ける機会が多くあったものの、実際には側臥位のポジショニングを提示しても、クッションの配置が不十分で仰臥位になっていることが多いことや、適切なポジショニングが行われず安楽肢位を確保できないことで、筋緊張の亢進や関節拘縮の進行がみられ皮膚状態の悪化や着脱介助の困難に繋がる事例もあった。ポジショニングに関して、当施設においてもCWへの指導や実践能力の改善を図る必要性を強く感じるようになったため、現状のCWのポジショニングに関する知識や実践能力を評価し、具体的な課題を明らかにすることが必要であると考えた。
【目的】
 CWを対象にポジショニングの知識と実践能力を評価し、現場における課題を明確化することを目的とする。得られた結果を基に、効果的な指導法や研修プログラムの検討を行い、ポジショニング技術の向上を通じて介護リテラシーを高めて利用者の生活の質向上を目指す。
【方法】
 “ケープのポジショニングコンパクトガイド”を参考に指導および評価を実施した。令和6年10月にCW19名を対象に、側臥位のポジショニング指導を実施、同年11月ポジショニングの理解度を評価するため写真テストと実技テストを行った。
 写真テストでは、CWに対して行ったポジショニング指導を基にクッションや上肢の位置が適切ではない写真と適切な写真を計5枚提示し、不適切箇所を指摘できるかどうかによってポジショニングの理解度を評価した。
 実技テストでは、寝たきりの利用者2名を対象に1.背中のクッション位置、2.下肢のクッション位置、3.体幹のねじれ、4.クッション配置後の隙間、5.ポジショニング方法、の5つの評価項目を設け減点法でポジショニングの実践能力を評価した。
 これらの評価項目について、写真・実技テストそれぞれ0~5点で採点を行い、4点以上を合格基準とした。
【結果】
 写真テストでは、19名中12名が合格し、満点取得者は5名であった。合格者の内5名が有資格者であり、満点取得者の有資格者は1名(介護福祉士)であった。実技テストでは19名中2名が合格し、満点取得者はいなかった。合格者2名は資格を有していなかった。
 写真テストでは、枕や下肢クッションの隙間、肩関節の適切な位置調整の2項目において理解できていないCWが多かった。実技テストでは、1.背中のクッション位置、3.体幹のねじれ、4.クッション配置後の隙間の3項目において実施できていないCWが多かった。
【考察】
 本研究の結果から、CWの大半はポジショニングに関する基本的な知識は持っていたが、実技テストにて十分な実践能力が身についていないことが明らかとなった。このことから、当施設ではオムツ交換や臥床介助の際に体位交換は行えているが、その後の適切なポジショニングは実施できておらず、それが筋緊張亢進や関節拘縮進行に伴う四肢の可動域制限や、褥瘡発生の予防治癒の妨げの要因になっていると考えられる。
 当施設の専門棟では、介護未経験者や外国人CW(技能実習生)の割合が多く介護福祉士の資格を有する者の割合が少ない。体位交換や褥瘡予防の基礎はCW同士で業務を通じて指導・伝達が行われ習得されていたが、ポジショニング技術について理解できているCWが極端に少ない為、誤った知識が伝達され技術の定着が妨げられていると考える。今回のテストでは、資格の有無と知識・実践能力との間に明確な関連性は認められず、有資格者であっても必ずしも十分な知識や実践能力を備えているとは限らないことが明らかとなった。また、以前よりリハビリ職によるポジショニング指導は、相談してきたCWに対して個別指導や対象者のベッドサイドにポジショニング写真を掲示する形で実施されていた。このような指導方法ではCW個人の能力やポジショニングに対する意識に依存する部分が大きく、施設全体で取り組む形には至らないと考えられる。その結果、知識習得と施設としての介護力向上につながらなかった可能性がある。
 さらに、誤ったポジショニングが筋緊張の亢進や関節拘縮の進行を招くリスクが高いということが十分に理解されていない点も課題である。現場では主に「褥瘡予防」の視点でポジショニングが行われ、横向きにする、踵を浮かせるといった対応にとどまっている。しかし、適切なポジショニングは褥瘡予防だけでなく、快適性の向上や筋緊張・関節拘縮の予防にもつながる重要な技術であり、その認識を深めることが今後の指導・研修の課題となる。
【結語】
 本研究を通じて、CWのポジショニングに関する知識と実践能力を評価し、現場における具体的な課題を明確化することができた。
 ポジショニングに対する認識の低さ、施設全体での指導不足、ポジショニングによる効果に対する理解不足が明らかとなった。
 介護福祉士養成教育においてポジショニングは重要視されつつあるが、具体的な技術教育が行われていないことが課題となっている。
 これらの結果を踏まえ、CWの実践能力を向上させるためには、日常業務の中でポジショニングを意識する習慣を身につけるとともに、定期的な研修やテストを継続的に実施することが必要である。また、職員が利用者の立場を体験する研修の導入を検討し、ポジショニングの重要性を実感する機会を増やして、応用力のある技術習得を促進することが介護リテラシーを高めて利用者の快適性や生活の質を向上させると考える。