講演情報

[27-O-G001-02]目指せ!!ピンピンコロリ!~職員意識の実態と課題~

広島県 宇野 僚太, 坂本 尚子, 清水 麻衣, 橋尾 朋宏 (ビーブル神石三和)
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「はじめに」 当施設において、年末に発生したCOVID-19の集団感染により長期臥床を余儀なくされ、その間多くの廃用性症候群の進行が認められた。リハビリ部として廃用を防止し生活機能の維持を目的に積極的な離床支援や椅子への座り替え、重度介助者に対しては車椅子のたわみにべニア板を導入し体性感覚へのアプローチによる体幹筋群への賦活を図る取り組みを行った。それでも、高齢者の廃用が進む速度は速く、看護・介護にも離床や椅子への座り替えを進めるための支援を一緒に行うよう依頼する。しかし、限られた人員の中で離床頻度を増やすことは負担が大きく協力は得られにくい状態であった。また感染症終息後も日中の椅子への座り替えや姿勢の崩れに対する姿勢調整の支援を継続するため、足台を作成し足底設置をするよう協力を依頼するも日々の業務の中で積極的な協力は得られにくい状況が続いている。
そこで今回なぜ椅子への座り替えや、車椅子上での姿勢調整、足底設置が定着しないのか要因を探り今後の課題を明確にすることを目的に職員を対象にアンケート調査を実施したのでここに報告する。 
「目的」  職員の移乗支援に対する認識・実態を把握し、車椅子において、座位姿勢が崩れやすい症例に対し、セラピストや看護・介護職員が同じ認識をもって、PDCAサイクルに基づき利用者の能力の維持・向上に取り組める体制を作る。
「対象と方法」当施設入所フロアに勤務する看護・介護職員35名を対象。アンケート用紙を配布し自記による回答を求めた。回答は無記名、選択式とし、その理由を自由記載とした。
アンケート結果を集計し、自由記載については、筆者と共同研究者で個別に分類した後、互いの分類について議論の上で内容の分類を行った。
「結果」
アンケート回収率は約71%(25名) 
性別:男性 5名 女性 20名
年代:20代 5名 30代 5名 40代 9名 50代 3名 60代 3名
うちEPA:2名 技能実習生は5名 その他海外から就労者:1名 
経験年数:1年未満:3名 3年以上5年未満:5名 5年以上10年未満:3名 10年以上:14名 持病(腰痛など)の有無:あり 60%(15名)
移乗介助が最も負担と感じる環境はどこですか:ホール(椅子と車椅子間) 50%(14名) 居室(ベッドと車椅子間) 36%(10名) その他(トイレや浴室) 14%(4名)
理由:アームサポートの着脱ができない。座面の高さ調整がし辛い。
施設内に福祉用具(スライディングボードやラクラックスなど)があることを知っていますか:知っている 96%(24名) 知らない 4%(1名)
普段からそれらの福祉用具を活用していますか: はい 70%(16名) いいえ 30%(7名)
移乗方法の手段としてボディメカニクスやノンリフティングケアを使った移乗方法を知っていますか: はい 80%(20名) いいえ 20%(5名)
それらの手技を普段から活用していますか: はい 61%(14名) いいえ 39%(9名)
それらの手技を習得し活用したいですか: はい 76%(16名) いいえ 24%(5名)
普段車椅子で長時間座って過ごす際、足底設置させることが入所者にとって様々な点でメリットが大きいことは知っていますか: はい 100% 
ただし、普段から足底設置させることに対し、足をおろす際にしゃがむのが負担であるや膝の拘縮が強い方や利用者自身が拒否的であるのに足底設置させることが有益であるとは思えない、姿勢を整えてもすぐに崩れてしまい気持ちが萎える等の意見があげられた。
全体を通して定着できない要因は物理的環境因子が49%、人的因子が29%、知識・技術等の因子が22%であった。
「考察」
今回のアンケートの結果、ホールでの椅子での座り替えが進まない要因はアームサポートの着脱ができないことや座面の高さ調整がし辛いといった物理的環境因子が最も多く、次いで、座り替えを行うことでのメリットが感じられない、移乗頻度が増えるので負担だといった人的因子によるものがあった。また、福祉用具の正しい使用方法やボディメカニクス等といった手技の獲得も実践する経験が少なく、一人で行うには不安があるため使用していないといった理由が多く聞かれた。それらは、施設内で行われている実践形式の技術伝達研修の機会が少ないことや、移乗支援は基本的に一人の職員で単独で行うため、習得率の未熟な手技の使用を遠ざけていることが要因であると思われた。さらに意見の中には、「姿勢を直してもすぐに崩れてしまうため気持ちが萎える」といった意見もあり、介護職として仕事に従事する中で即時的な変化の感じにくい高齢者のケアにおいて、自己効力感を感じにくくなっていることが問題点として考えられる。職業生活において、日向(2021)は、企業労働者の心理的居場所感の因子のうち、「安心感」「役割感」「本来感」が知識提供行動を促進し「安心感」「役割感」が知識獲得行動を促進することを明らかにした。
当施設における看護介護職は、各勤務帯で業務がマニュアル化されており、日替わりで業務内容が変わるため、利用者個人の経過を追いにくい側面がある。またケアプランの評価は担当制となっているが、シフトの関係でカンファレンスに参加し、目標や今後の展望等について担当者と協議する機会が少ない現状がある。これらの体制を見直し、介護職自身が担当者の目標の設定や進捗状況を評価し、目標を設定するといった「役割」を持つことが、自己効力感へと繋がり、新しい知識や技術への獲得行動の促進となるのではないかと思われた。
リハビリ部としても、利用者の「できる」能力を伝達する場を設け、動画を録画しいつでも閲覧可能な状態にしておくことや福祉用具の活用やボディメカニクス等の普及するため実践形式で研修を行うよう努めてく。また最も多かった環境因子に対しては利用者に応じた車椅子の選定、べニア板の厚みや長さ、形状の工夫や素材の検討を行い、利用者や介助者が共に最適な環境となるよう取り組んでいく。