講演情報

[27-O-G002-01]アドバイザー制度導入による腰痛予防対策

鹿児島県 宮永 拓也1, 小吹 亮太1, 大久保 明子2 (1.介護老人保健施設 ろうけん姶良, 2.医療法人大進会 希望ヶ丘病院)
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【目的】
保健衛生業界にとって腰痛による休業・休職・離職は、業務負担増加など労働環境の悪化につながる大きな問題であるため、職員の腰痛予防の重要性がクローズアップされている。当施設は、80床の超強化型施設であるが、介護や看護職員の腰痛による休職が増加したことから、「腰痛による休業、休職、退職を0にする体制作り」を目指し、令和4年度より腰痛予防アドバイザー(以下、アドバイザー)制度の活動を開始した。取り組みの経過や結果、今後の展望について報告する。
【方法】
1)事前アンケート
取り組み開始前に、老健職員58名を対象として、腰痛に関する11項目のアンケート (ボディメカニクスなど介助に必要な知識、腰痛への不安、介助場面ごとの腰痛の頻度、負担等) を実施した。
2)アドバイザー制度
初年度は介護士から4名のアドバイザーを選定、その上位にアドバイザーを教育するスーパーアドバイザーを1名、研修全般を統括する運用管理責任者をリハビリテーション科から1名配置し、階層構造とした。次年度はアドバイザーとしての認定研修 (概論、ボディメカニクス、福祉用具の使用方法、腰痛リスクアセスメントなど) を2ヶ月間で計4回行った。
3)全体研修
年1回、アドバイザーがボディメカニクス、福祉用具の使用方法を中心に、法人内での全体研修を実施した。新入職員には、入職時に都度、研修を行った。
4)定期的な腰痛会議
アドバイザーが中心となり、「腰痛会議」を毎月実施し、福祉用具の使用状況の確認や、具体的な作業環境下での腰痛要因を話し合った。情報を共有するために会議録を作成し、職員全体に回覧した。
5)意識調査アンケート
活動開始2年後に介護士・看護師を対象に福祉用具使用による意識調査アンケートを実施した。
【結果】
1)事前アンケート
ボディメカニクスなど介助に必要な知識について9割が知っていると回答したが、6割以上が腰痛への不安や腰痛を経験していた。介助場面ごとの腰痛についての項目では、入浴介助(移乗)時とオムツ交換時が上位を占めていた。
2) 活動の経過
初年度は、上記のアンケート結果を踏まえて、入浴介助(移乗)、オムツ交換時に必要な福祉用具の選定・配置場所の検討、使用方法の研修を行った。活動開始2年後に行った意識調査アンケートの結果、回答者の72%で福祉用具を使用した事で作業時における腰への負担が軽減したという結果が得られた。また、アドバイザーの中から自然発生的に、腰痛予防に関する職員の意識を高めるための「腰痛通信」を発行したいという意見が出たため、3ヶ月ごとに配信している。
3)効果
活動開始の令和4年度は腰痛に起因した休職者が3名だったが、令和5年度は1名、令和6年度は0名に減少した。
【考察】
腰痛予防対策としてアドバイザー制度を導入することにより、約3年間で 腰痛に起因する休職者が減少した。吉武1)は、腰痛予防対策が組織的に普及しない理由として、「腰痛の実態が正確に把握されていない」「個人の手技の未熟さ」「具体的な対策が見いだせていない」こと等を挙げている。今回の取り組みでは、単に福祉用具の使用を促すだけではなく、実際に介護や看護に関わる職員内にアドバイザー制度を導入したことで腰痛予防に対する知識や意識が高まったこと、また、定期的な振り返りや対策の見直しにより効果を実感できたことが、腰痛による休職の減少に繋がったと考えた。
【まとめ】
腰痛予防に関するアドバイザー制度を導入し、腰痛による休職を減少させることが出来た。効果を維持していくためには、現在の活動内容に加え、アドバイザーの知識、技術面などの質をさらに向上させることやワーク・モチベーションをどう維持していくかが課題となる。今後、法人外の認定研修に参加することやアドバイザーの活動実績が評価されるシステムを提案していき、腰痛予防に対する活動をさらに活発化していきたい。
【参考文献】
1) 吉武幸恵(2016)「急性期病院における腰痛対策看護管理実践モデルの開発と検証」千葉大学大学院博士論文