講演情報
[27-O-G002-03]VR吹き矢を用いた車椅子座位姿勢への介入
大阪府 ○西羅 陽子, 上堀内 祐子 (みどりヶ丘老健)
【はじめに】
吹き矢は呼吸や咳嗽能力の低下した高齢者への効果的なリハビリテーションとして期待されているが、車椅子座位姿勢への介入として使われた報告はない。今回、短期集中リハビリテーションと並行してバーチャルリアリティ(VR)を用いてVR空間上で簡便に吹き矢の体験を行い、車椅子座位姿勢に変化がみられ、離床時間や活動量が増加した症例を経験したため、ここに報告する。
【症例紹介】
要介護4の80歳代女性。X年、交通事故により脳挫傷と左大腿骨転子間骨折を受傷し、左半身麻痺と左下肢の短縮を呈した。その後介護認定を受け、訪問介護などを利用しながら夫と在宅生活を送っていたが、夫の体調不良とともにX+21年に当施設入所となった。既往歴として外痔核を認めている。
在宅ではほぼベッド上で生活し、入浴機会も月2回と著しく少ない状態であった。当施設入所時も外痔核に伴う臀部痛を訴え、食事以外はベッド上で過ごしていた。端座位は短時間に限りなんとか保持可能だが体幹が後方へ倒れやすく、車椅子座位では時間の経過とともに端座位よりさらに体幹の後傾が強まり、側方から観察すると骨盤より頭部が後方へ位置していた。
【介入】
短期集中リハビリテーションを週6回実施し、車椅子で離床する機会を提供するとともに、立ち座りや立位保持・移乗動作練習を中心に基本動作能力の向上を目指した。並行して1週間程度VRゴーグルを使用して吹き矢プログラムを実施した。吹き矢プログラムは導入当初、椅子座位にて実施していたが、背もたれにもたれる傾向が強く認められたため、3日目よりプラットホーム上端座位にて実施するよう、環境を調整した。
【変化】
車椅子座位姿勢において体幹が後傾して背もたれにもたれる傾向が軽減し、側方から観察すると骨盤の上に頭部が位置する姿勢まで改善し、離床時間が増加した。またトイレでの排泄機会も増加し、入所当初はふたり介助にて1日1回トイレへ誘導していたが、訴えに応じてひとりの介助にてトイレで排泄できるようになった。
【考察】
臥床傾向が強く車椅子座位姿勢において体幹の後傾が強い利用者に対し、短期集中リハビリテーションと並行してVRゴーグルを用いて簡便に吹き矢を体験することで、車椅子座位姿勢における体幹の後傾が軽減し、離床時間や活動量を増やすことができた。
短期集中リハビリテーションとして離床の機会を図り基本動作練習を行うとともに、VR吹き矢としてVR空間上に出現するろうそくの火や的に対し、腹圧と口腔内圧を高めて呼気を強める動作を行うことで、体幹の屈曲が誘導され、車椅子座位姿勢の改善につながったと考える。早期に背もたれのある椅子座位から端座位へ吹き矢プログラムを実施する環境を調整したことも、端座位を保持するために体幹筋が賦活され、車椅子座位姿勢の改善のきっかけになった。さらにVRゴーグルを装着してリアルな空間での視覚情報が遮断された状態で、足底や臀部など支持基底面からの体性感覚情報をもとに端座位を保持しようとしたことも、車椅子座位姿勢における体幹の後傾が改善する一助になったと考える。
同様に車椅子座位が不安定な他の利用者では、呼気の弱さからVRゴーグルが反応せず、吹き矢プログラムが実施できないことがほとんどで、体幹機能が低下している要介護高齢者に対してはVR吹き矢が不適応であった。一方で本症例は、VR吹き矢プログラムを実施する呼気の強さをポテンシャルとして持ち合わせており、吹き矢動作を通じて腹圧を高めながら姿勢パターンを調整できたことで、1週間という短期間で車椅子座位姿勢の変化を見出すことができたと考える。
今後、老健においてVR吹き矢をより効果的に用いるために、座位が不安定で呼気の弱い要介護高齢者にも対応できるよう、VRゴーグルの感受性を高めることや的の位置を調整できれば、より達成感を感じやすく、長期的な介入が行いやすくなると考える。また、VR空間上の画像をスクリーンやテレビ画面に映すことで他者と共有できれば、より介入がスムーズとなり、レクリエーションとして複数名で楽しむこともできるのではないかと考えた。
【おわりに】
車椅子座位姿勢において体幹の後傾が強い利用者に対し、短期集中リハビリテーションと並行して1週間程度、VR吹き矢プログラムを実施した。吹き矢動作で体幹を前屈して腹圧を高める機会を提供したことで、車椅子座位姿勢における体幹の後傾が軽減し、離床時間や活動量が増加した。今後もデジタルヘルス市場の拡大とともに、老健のリハビリスタッフとしてそれらのコンテンツを有効活用できるよう、工夫して取り組んでいきたい。
吹き矢は呼吸や咳嗽能力の低下した高齢者への効果的なリハビリテーションとして期待されているが、車椅子座位姿勢への介入として使われた報告はない。今回、短期集中リハビリテーションと並行してバーチャルリアリティ(VR)を用いてVR空間上で簡便に吹き矢の体験を行い、車椅子座位姿勢に変化がみられ、離床時間や活動量が増加した症例を経験したため、ここに報告する。
【症例紹介】
要介護4の80歳代女性。X年、交通事故により脳挫傷と左大腿骨転子間骨折を受傷し、左半身麻痺と左下肢の短縮を呈した。その後介護認定を受け、訪問介護などを利用しながら夫と在宅生活を送っていたが、夫の体調不良とともにX+21年に当施設入所となった。既往歴として外痔核を認めている。
在宅ではほぼベッド上で生活し、入浴機会も月2回と著しく少ない状態であった。当施設入所時も外痔核に伴う臀部痛を訴え、食事以外はベッド上で過ごしていた。端座位は短時間に限りなんとか保持可能だが体幹が後方へ倒れやすく、車椅子座位では時間の経過とともに端座位よりさらに体幹の後傾が強まり、側方から観察すると骨盤より頭部が後方へ位置していた。
【介入】
短期集中リハビリテーションを週6回実施し、車椅子で離床する機会を提供するとともに、立ち座りや立位保持・移乗動作練習を中心に基本動作能力の向上を目指した。並行して1週間程度VRゴーグルを使用して吹き矢プログラムを実施した。吹き矢プログラムは導入当初、椅子座位にて実施していたが、背もたれにもたれる傾向が強く認められたため、3日目よりプラットホーム上端座位にて実施するよう、環境を調整した。
【変化】
車椅子座位姿勢において体幹が後傾して背もたれにもたれる傾向が軽減し、側方から観察すると骨盤の上に頭部が位置する姿勢まで改善し、離床時間が増加した。またトイレでの排泄機会も増加し、入所当初はふたり介助にて1日1回トイレへ誘導していたが、訴えに応じてひとりの介助にてトイレで排泄できるようになった。
【考察】
臥床傾向が強く車椅子座位姿勢において体幹の後傾が強い利用者に対し、短期集中リハビリテーションと並行してVRゴーグルを用いて簡便に吹き矢を体験することで、車椅子座位姿勢における体幹の後傾が軽減し、離床時間や活動量を増やすことができた。
短期集中リハビリテーションとして離床の機会を図り基本動作練習を行うとともに、VR吹き矢としてVR空間上に出現するろうそくの火や的に対し、腹圧と口腔内圧を高めて呼気を強める動作を行うことで、体幹の屈曲が誘導され、車椅子座位姿勢の改善につながったと考える。早期に背もたれのある椅子座位から端座位へ吹き矢プログラムを実施する環境を調整したことも、端座位を保持するために体幹筋が賦活され、車椅子座位姿勢の改善のきっかけになった。さらにVRゴーグルを装着してリアルな空間での視覚情報が遮断された状態で、足底や臀部など支持基底面からの体性感覚情報をもとに端座位を保持しようとしたことも、車椅子座位姿勢における体幹の後傾が改善する一助になったと考える。
同様に車椅子座位が不安定な他の利用者では、呼気の弱さからVRゴーグルが反応せず、吹き矢プログラムが実施できないことがほとんどで、体幹機能が低下している要介護高齢者に対してはVR吹き矢が不適応であった。一方で本症例は、VR吹き矢プログラムを実施する呼気の強さをポテンシャルとして持ち合わせており、吹き矢動作を通じて腹圧を高めながら姿勢パターンを調整できたことで、1週間という短期間で車椅子座位姿勢の変化を見出すことができたと考える。
今後、老健においてVR吹き矢をより効果的に用いるために、座位が不安定で呼気の弱い要介護高齢者にも対応できるよう、VRゴーグルの感受性を高めることや的の位置を調整できれば、より達成感を感じやすく、長期的な介入が行いやすくなると考える。また、VR空間上の画像をスクリーンやテレビ画面に映すことで他者と共有できれば、より介入がスムーズとなり、レクリエーションとして複数名で楽しむこともできるのではないかと考えた。
【おわりに】
車椅子座位姿勢において体幹の後傾が強い利用者に対し、短期集中リハビリテーションと並行して1週間程度、VR吹き矢プログラムを実施した。吹き矢動作で体幹を前屈して腹圧を高める機会を提供したことで、車椅子座位姿勢における体幹の後傾が軽減し、離床時間や活動量が増加した。今後もデジタルヘルス市場の拡大とともに、老健のリハビリスタッフとしてそれらのコンテンツを有効活用できるよう、工夫して取り組んでいきたい。
