講演情報
[27-O-I002-01]高齢者に対する口腔ケアの取り組みOHATによる口腔アセスメントの実際と口腔ケアの効果
栃木県 ○秋山 友子, 小野 充, 岩瀬 明日香, 渡部 康仁 (老人保健施設 同仁苑)
高齢者に対する口腔ケアの取り組み
同仁苑3階西棟 秋山友子 岩瀬明日香 渡部康仁 小野充
1.はじめに
令和3年度介護報酬改定に伴い、新たに「口腔衛生の管理」が設けられ、令和6年4月から口腔衛生管理の義務化がされた。当施設では今年度より、法人歯科医師とフロアスタッフが情報共有できるよう利用者の口腔状態の評価をOral Health Assessment Tool日本語版(以下OHATとする)を用いての実施を開始した。口腔環境に問題のある利用者が評価の結果、多数いることが分かった。加齢と共に唾液の分泌が減り、自浄作用が低下し虫歯や歯周病にかかりやすく、それらの影響から誤嚥性肺炎を起こしやすくなっている。今回私達はOHATを活用し、利用者がおやつ後に口腔ケアを行う習慣をつけ、磨き残しがある利用者にはスタッフが介入することによって、口腔内の改善が期待できるのではないかと考え検証したので報告する。
2.研究方法
1.目的高齢者に、積極的な口腔ケアを提供することにより、口腔内が改善し清潔を保つことができるか、OHATスコアの変化を比較することにより、高齢者の効果的な口腔ケアの知見を得ることを目的とする。
2.対象当苑西棟に入所している20名中で、歯科医師から指導の必要性の指摘のあった利用者5名とする。
3.方法
1)期間令和6年10月1日~令和6年11月30日
2)データ収集方法毎日15時おやつ摂取後、音楽を流し歯磨きを習慣化し、個々の利用者に応じた口腔ケアを実施し、その後OHAT評価をする。
3)分析方法 1週間ごとにOHAT評価を実施し口腔ケアの実施前と実施後のスコアを比較する。OHAT8項目(口唇、舌、歯肉粘膜、唾液、残存歯、義歯、口腔清掃、歯痛)のうちスタッフが介入できる(口唇、舌、歯肉粘膜、口腔清掃)の4項目にする。
3.結果
個々に合わせた口腔ケアの質を高めるためOHATで評価しケアを実施した結果、対象利用者の口腔衛生状態の改善が見られた。特に粘膜の指標である、口唇や舌・乾燥状態を示す唾液や歯面を中心とした清掃状態でどの対象者においてもスコアの低下が認められた。
A氏:開始前のOHAT評価は4点。口唇にひび割れがあり舌苔付着あり。歯磨きは自分で行っているがリウマチのためうまく磨けていない。A氏は歯磨きは自分で行いたいという思いがあり歯磨き終了後に声掛けを行い口腔ケアを行った結果4週間後には口唇のひび割れ舌苔の付着は改善が見られOHAT評価は1点に改善された。
B氏:OHAT評価3点。口唇の乾燥と歯石の付着が見られた。左部分入れ歯があり残歯がある。認知症と半側空間無視があり嗽がうまくできていない。15時の介入時には歯ブラシを渡し声掛けを行い終了後は口腔内チェックを行った。4週間後にはOHAT評価1点に改善された。
C氏:OHAT評価4点。口唇・歯肉粘膜乾燥、舌苔付着あり。脳梗塞後遺症による左半身のマヒがありADLは全介助を要す。15時の口腔ケアを重点的に行った。実施前に声掛けと決まった音楽をかけ、「これから歯磨きの時間」という認識が出来るよう環境の調整を行い口腔ケアを実施。4週間後には拒否なく実施することが出来てきた。OHAT評価も1点に改善された。
D氏:OHAT評価6点。舌苔付着、強い口臭、歯肉出血あり。義歯は使用していないが認知症があり嗽がうまくできない、はじめは自分で行ってもらい途中から介入し仕上げ磨きを行った。4週間後にはOHAT評価2点。若干の口臭は残ったものの改善された。
E氏:OHAT評価1点。口腔内に食残渣がみられた。認知機能の低下もあり、声掛けを行い自分で歯磨きを行ってもらい最後にチェックを行う。4週間後にはOHAT評価0点。介入したことで改善がみられた。
15時に音楽を流し、口腔ケアの時間であることを知らせる。開始当初は拒否が見られる利用者もいたが、徐々に音楽が鳴ると「歯磨きの時間」と催促してくる利用者も出てきた。自分で行っている方は、口腔内を確認してほしいとスタッフに声掛けしてくるようになった。開口が難しいB氏・C氏・D氏は、歯科医師により事前に指導を受け、介入しているスタッフはできるようになっていった。
4.考察
今回研究の対象になった5名はOHATの総合得点は改善されているという結果が得られた。改善が認められた理由として、口腔環境の評価においてOHATを利用することで、医療者やスタッフ間で口腔環境を数値化し統一認識を持つことができた。認知機能の低下した利用者の場合、口腔ケアを行うことを説明しても協力が得られず、易怒的になったり嫌がってしまい中々実施することが難しい。1)枝広は「口腔ケアを説明しても協力が得られないような人は、毎日口腔ケアを行う場所を決めておき、視覚的情報、音情報から口腔ケアを受け入れてもらうという方法もある」という事から、同じ場所、決まった時間に音楽を掛けることで、「歯磨きの時間」という習慣性の認識が生まれ実践に至ったのではないかと考える。習慣性行為としての「歯磨き」を行ったとしても、口腔のセルフケア行為自体は見えない。しかも複雑な部分を口腔内の感覚を頼りに隅から隅まで清掃する行為であるため、認知機能が低下した利用者が行うのは難しい。そのため、私たちスタッフが介入し、磨き残しや口腔内の観察を行うことで、個々の問題点に合わせた口腔ケアを実践し口腔内の衛生保全に繋がり改善したと考える。
5.結論
1.OHAT評価を用いることでスタッフが統一した口腔評価と利用者に合わせた口腔ケアが実践出来る。
2.スタッフが口腔ケアに介入することで、口腔内の環境を改善する要因となる。
3.視覚的情報・音楽情報を用いることで「口腔ケアの時間」を意識づけできスムーズに口腔ケアを実施することが出来る。
同仁苑3階西棟 秋山友子 岩瀬明日香 渡部康仁 小野充
1.はじめに
令和3年度介護報酬改定に伴い、新たに「口腔衛生の管理」が設けられ、令和6年4月から口腔衛生管理の義務化がされた。当施設では今年度より、法人歯科医師とフロアスタッフが情報共有できるよう利用者の口腔状態の評価をOral Health Assessment Tool日本語版(以下OHATとする)を用いての実施を開始した。口腔環境に問題のある利用者が評価の結果、多数いることが分かった。加齢と共に唾液の分泌が減り、自浄作用が低下し虫歯や歯周病にかかりやすく、それらの影響から誤嚥性肺炎を起こしやすくなっている。今回私達はOHATを活用し、利用者がおやつ後に口腔ケアを行う習慣をつけ、磨き残しがある利用者にはスタッフが介入することによって、口腔内の改善が期待できるのではないかと考え検証したので報告する。
2.研究方法
1.目的高齢者に、積極的な口腔ケアを提供することにより、口腔内が改善し清潔を保つことができるか、OHATスコアの変化を比較することにより、高齢者の効果的な口腔ケアの知見を得ることを目的とする。
2.対象当苑西棟に入所している20名中で、歯科医師から指導の必要性の指摘のあった利用者5名とする。
3.方法
1)期間令和6年10月1日~令和6年11月30日
2)データ収集方法毎日15時おやつ摂取後、音楽を流し歯磨きを習慣化し、個々の利用者に応じた口腔ケアを実施し、その後OHAT評価をする。
3)分析方法 1週間ごとにOHAT評価を実施し口腔ケアの実施前と実施後のスコアを比較する。OHAT8項目(口唇、舌、歯肉粘膜、唾液、残存歯、義歯、口腔清掃、歯痛)のうちスタッフが介入できる(口唇、舌、歯肉粘膜、口腔清掃)の4項目にする。
3.結果
個々に合わせた口腔ケアの質を高めるためOHATで評価しケアを実施した結果、対象利用者の口腔衛生状態の改善が見られた。特に粘膜の指標である、口唇や舌・乾燥状態を示す唾液や歯面を中心とした清掃状態でどの対象者においてもスコアの低下が認められた。
A氏:開始前のOHAT評価は4点。口唇にひび割れがあり舌苔付着あり。歯磨きは自分で行っているがリウマチのためうまく磨けていない。A氏は歯磨きは自分で行いたいという思いがあり歯磨き終了後に声掛けを行い口腔ケアを行った結果4週間後には口唇のひび割れ舌苔の付着は改善が見られOHAT評価は1点に改善された。
B氏:OHAT評価3点。口唇の乾燥と歯石の付着が見られた。左部分入れ歯があり残歯がある。認知症と半側空間無視があり嗽がうまくできていない。15時の介入時には歯ブラシを渡し声掛けを行い終了後は口腔内チェックを行った。4週間後にはOHAT評価1点に改善された。
C氏:OHAT評価4点。口唇・歯肉粘膜乾燥、舌苔付着あり。脳梗塞後遺症による左半身のマヒがありADLは全介助を要す。15時の口腔ケアを重点的に行った。実施前に声掛けと決まった音楽をかけ、「これから歯磨きの時間」という認識が出来るよう環境の調整を行い口腔ケアを実施。4週間後には拒否なく実施することが出来てきた。OHAT評価も1点に改善された。
D氏:OHAT評価6点。舌苔付着、強い口臭、歯肉出血あり。義歯は使用していないが認知症があり嗽がうまくできない、はじめは自分で行ってもらい途中から介入し仕上げ磨きを行った。4週間後にはOHAT評価2点。若干の口臭は残ったものの改善された。
E氏:OHAT評価1点。口腔内に食残渣がみられた。認知機能の低下もあり、声掛けを行い自分で歯磨きを行ってもらい最後にチェックを行う。4週間後にはOHAT評価0点。介入したことで改善がみられた。
15時に音楽を流し、口腔ケアの時間であることを知らせる。開始当初は拒否が見られる利用者もいたが、徐々に音楽が鳴ると「歯磨きの時間」と催促してくる利用者も出てきた。自分で行っている方は、口腔内を確認してほしいとスタッフに声掛けしてくるようになった。開口が難しいB氏・C氏・D氏は、歯科医師により事前に指導を受け、介入しているスタッフはできるようになっていった。
4.考察
今回研究の対象になった5名はOHATの総合得点は改善されているという結果が得られた。改善が認められた理由として、口腔環境の評価においてOHATを利用することで、医療者やスタッフ間で口腔環境を数値化し統一認識を持つことができた。認知機能の低下した利用者の場合、口腔ケアを行うことを説明しても協力が得られず、易怒的になったり嫌がってしまい中々実施することが難しい。1)枝広は「口腔ケアを説明しても協力が得られないような人は、毎日口腔ケアを行う場所を決めておき、視覚的情報、音情報から口腔ケアを受け入れてもらうという方法もある」という事から、同じ場所、決まった時間に音楽を掛けることで、「歯磨きの時間」という習慣性の認識が生まれ実践に至ったのではないかと考える。習慣性行為としての「歯磨き」を行ったとしても、口腔のセルフケア行為自体は見えない。しかも複雑な部分を口腔内の感覚を頼りに隅から隅まで清掃する行為であるため、認知機能が低下した利用者が行うのは難しい。そのため、私たちスタッフが介入し、磨き残しや口腔内の観察を行うことで、個々の問題点に合わせた口腔ケアを実践し口腔内の衛生保全に繋がり改善したと考える。
5.結論
1.OHAT評価を用いることでスタッフが統一した口腔評価と利用者に合わせた口腔ケアが実践出来る。
2.スタッフが口腔ケアに介入することで、口腔内の環境を改善する要因となる。
3.視覚的情報・音楽情報を用いることで「口腔ケアの時間」を意識づけできスムーズに口腔ケアを実施することが出来る。
