講演情報

[27-O-I002-06]歯科衛生士による口腔ケアと肺炎の劇的減少~所定疾患施設療養費における11年間の検討~

鳥取県 清水 由加利, 霜村 まどか, 大杤 真紀, 田中 敬子, 田中 淳 (老人保健施設はまゆう)
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【目的】
当施設では平成26年4月より常勤の歯科衛生士を配置し、入所者の口腔内環境の改善と介護職への技術指導を行ってきた。これまでの11年間の取り組みを振り返り、肺炎罹患者数の劇的な減少が認められたのでその成果を報告する。またLIFE(科学的介護情報システム)のフィードバックデータを活用し今後のさらなる取り組みの必要性についても検討した。
【方法】
平成24年4月の介護報酬改定により新設された所定疾患施設療養費の肺炎による加算算定件数と口腔衛生管理加算算定件数を比較した。
【経過】
協力歯科医療機関と連携し平成21年4月に新設された口腔機能維持管理加算の算定を開始した。平成24年4月の介護報酬改定により口腔機能維持管理体制加算と個別加算である口腔機能維持管理加算に分かれ、当施設では平成26年1月より口腔機能維持管理加算の算定を開始した。令和7年6月現在口腔衛生管理加算(II)の加算算定率はほぼ100%である。
【取り組み】
具体的な取り組みとして、(1)入所時に歯科衛生士が口腔内の評価をした際、全職員に分かりやすいよう、口腔内写真、口腔内の状況、ケアに必要な物品等を示したアセスメント票を作成している。(2)歯科衛生士を中心に歯科医師、言語聴覚士、看護・介護職員がメンバーとなり口腔ケア委員会を運営し、利用者ごとの問題点の抽出や具体的なケア方法の検討、施設全体を対象とした研修会を開催している。(3)歯科衛生士による利用者1人当たりの個別ケアの回数は月4回から月2回に緩和されたが、現在も月4回の個別ケアを継続することで口腔内環境の維持、歯牙の脱落や口腔粘膜の傷等の早期発見に努めている。また介護職員への技術指導も年2回に緩和されたが、現在も毎月1回歯科衛生士が介護職員へ指導することで介護職員への口腔ケアの重要性の周知やレベルアップを図っている。(4)経口維持管理加算(II)の要件である食事の観察(ミールラウンド)に参加し、他職種と口腔内の状況を共有したり、食事形態の検討に際し助言をしたりしている。
【結果】
常勤歯科衛生士採用当初の平成26年は年間の肺炎罹患者数は171件であり、月平均の肺炎での所定疾患施設療養費算定者は15件程度であった。5年経過した令和元年の年間肺炎罹患数は105件、月平均9件まで減少した。口腔衛生管理加算算定件数は平成26年339件、令和元年には1019件となり、口腔衛生管理加算算定件数の増加に合わせ、肺炎罹患者数が減少している。所定疾患施設療養費で肺炎が0件の月は令和5年6月、7月、8月、令和7年2月、4月、6月であった。当施設では令和4年8月に新型コロナによるクラスターが発生、また令和6年3月、6月、12月に新型コロナ陽性者が数名発生し、施設内で治療したため該当年の肺炎罹患者数は若干の増加がみられた。
【考察】
歯科衛生士による専門的かつ定期的な口腔ケアの継続や、介護職員への指導により施設全体のスキルアップへと繋がったことが、肺炎罹患者数減少の一因と考える。また常時歯科衛生士が施設内にいることで、看護・介護職員等の困りごとが速やかに相談できるようになり、令和3年4月より歯科医師が配置となり、歯科衛生士から歯科医師への報告・連絡・相談がスムーズに行えるようにもなった。
【今後の課題】
LIFE(科学的介護情報システム)の令和7年5月のフィードバックデータより、当施設は全国と比較し、むせ、舌苔、歯の汚れ、歯肉の腫れ・出血、歯周病を有する利用者が多く、義歯の必要性があるにも関わらず使用していない利用者が多いことが読み取れる。これらは誤嚥性肺炎に繋がる要素であり、今後もLIFE(科学的介護情報システム)のフィードバックデータに注視し、多職種で検討し活用していく必要がある。
【まとめ】
11年の経過で肺炎罹患者数は劇的に減少し、平成26年から平成29年までと比較すると1/3以下となった。緊急時施設療養費における肺炎による急性呼吸不全も減少した。これは加算算定要件に必要最低限な取り組みに留まらず、利用者1人当たりの歯科衛生士によるケア回数を維持し、介護職員への指導も毎月行うという、初期からの取り組みを継続したことによる成果と考える。今後LIFE(科学的介護情報システム)のフィードバックデータを活用し、改善に向けた新たな取り組みを実施することで、より一層利用者の口腔内環境の改善や肺炎予防に繋がると考える。また、肺炎による医療機関への入院を予防することで利用者のリロケーションダメージを防ぎQOLの維持に繋がると考える。今後も歯科衛生士を中心に継続的な取り組みを実施していきたい。