講演情報
[27-O-J002-01]胃婁造設入居者に対する経口摂取へ向けた取り組み事例
埼玉県 ○井草 真衣, 中山 美穂, 伊藤 恵美子, 川羽田 快枝, 秋葉 徳孝 (介護老人保健施設桜田)
【はじめに】
脳出血等により胃婁造設を余儀なくされる状態になった時、本人はもとより家族にも迷いや将来に対する不安が生じる。そして、胃婁から経口摂取の再獲得が最大の課題となるが、疾患や後遺障害の程度によっては誤嚥性肺炎等の合併症を生じ易く、対応が困難となる場合が多い。今回、右被殻出血により左片麻痺、失語症を伴う嚥下障害により胃婁造設後、当施設へ入居となった入居者に対し、経口摂取再獲得へ向けた取り組みを行い、経口摂取へ移行できた事例を経験したので報告する。
【対象及び背景】
K様、男性、62歳、介護度4現病歴:2023年11月、右被殻出血の為血種除去術施行。脳出血に伴って左片麻痺、全身の異常筋緊張、失語、高次脳機能障害、摂食嚥下障害が残り胃瘻造設、全介助となる。2024年1月、回復期リハビリテーション病棟のある病院へ転院。同年10月当施設へ入居となる。
【入居時の評価・状況】
失語症により発話や筆談は困難だが、簡単な意思疎通は可能。全身の異常筋緊張あり、右手指は母指と示指のみ可動。基本動作は、起居・移乗動作等全て全介助、食事は胃瘻による経管栄養(当施設入居前の医療機関での評価は、先行期~咽頭期まで重度に障害され、劇的な改善は困難とされていた)。
【経口摂取へのきっかけ】
当施設入居後、胃瘻による経管栄養を継続していたが、数日後妻より「近所で胃瘻から経口摂取に移行して今は口から食べている方がいて、主人も可能ですか?」という問いかけを頂く。施設で検討した結果、医療連携先の訪問歯科へ嚥下内視鏡を依頼。2週間後検査を実施。咀嚼力は弱いが、呑み込みに問題無しとの結果を得、歯科医師からのアドバイスを基に、口腔機能向上に対する支援計画を再考することとなる。
【嚥下リハの内容】
1.舌圧トレーニング用具を用いた筋力訓練
2.ガーゼで包んだガムによる咀嚼訓練
3.吹き戻しを用いた呼気抵抗負荷訓練
4.訓練後、嚥下困難者用ゼリー1個摂取にて嚥下状態を確認する
*2か月後、再度嚥下内視鏡を実施して状態を確認。ソフト食かミキサー食が開始できるか検討する事となる。
2か月間、上記リハビリを実施。舌圧トレーニング用具を用いた筋力訓練については、鏡を見ているときは集中できず気がそれてしまい、舌の動きは弱いという評価もあったが、えん下困難者用ゼリーについては誤嚥も無く摂取出来ていた。【経口摂取再獲得へ】
2か月後、嚥下内視鏡検査実施。歯科医師より以下の注意、アドバイスを頂く。
・前回の検査時よりも状態は良くなっており、食事摂取可能。ついては、ソフト食はきれいに飲み込む事ができるが、ミキサー粥は粘り気があり喉に残るため危険。・水分については、中間のトロミが良い。コップを持たせると自己飲水可能だが一口の量に注意が必要。
・嚥下訓練を継続すれば食形態のアップも可能。まずは昼食から提供して回数を増やしていく。自己摂取はグリップ等の自助具スプーン等の使用で訓練次第で可能。自助具については作業療法士に依頼する。
3週間後、再度嚥下内視鏡検査実施。全粥・刻み食・汁ものはヨーグルト状のものが可能となる。その後、一口大へ食上げ、経口摂取を昼食1食より3食へ変更。
トータル5回の嚥下内視鏡による評価を経て、経口摂取の取り組み開始から約半年後に3食常食へ移行することが可能となった。また、経口摂取により栄養状態が改善されたばかりではなく、入居当初は出来なかった食事の自力摂取、寝返り、会話も出来るようになり、自分の意思で行きたいところへ車椅子で自走できるまでになった。【まとめ】
妻からの問いかけをきっかけに、胃婁から経口摂取を再獲得できた入居者の事例を経験した。嚥下障害による経管栄養は、単に口から食べられないという単一の問題だけでなく、日常生活や社会生活に様々な支障を来す。食べるという行為については様々な感覚刺激からの情報を統合し、運動機能だけでなく記憶・判断・洞察・創造・学習などの高次機能を高める事に繋がるとされ、その関連性が注目されている。今回の事例は、医療連携先の訪問歯科の協力のもと、合計5回の嚥下内視鏡と半年間の期間を経て胃瘻から常食の経口摂取へ移行できたものであるが、その結果、ADL向上、生活の質向上につなげられた。この事例を通じて多職種が連携し、目標達成へ向けて取り組むことの重要性を改めて認識させられた。
脳出血等により胃婁造設を余儀なくされる状態になった時、本人はもとより家族にも迷いや将来に対する不安が生じる。そして、胃婁から経口摂取の再獲得が最大の課題となるが、疾患や後遺障害の程度によっては誤嚥性肺炎等の合併症を生じ易く、対応が困難となる場合が多い。今回、右被殻出血により左片麻痺、失語症を伴う嚥下障害により胃婁造設後、当施設へ入居となった入居者に対し、経口摂取再獲得へ向けた取り組みを行い、経口摂取へ移行できた事例を経験したので報告する。
【対象及び背景】
K様、男性、62歳、介護度4現病歴:2023年11月、右被殻出血の為血種除去術施行。脳出血に伴って左片麻痺、全身の異常筋緊張、失語、高次脳機能障害、摂食嚥下障害が残り胃瘻造設、全介助となる。2024年1月、回復期リハビリテーション病棟のある病院へ転院。同年10月当施設へ入居となる。
【入居時の評価・状況】
失語症により発話や筆談は困難だが、簡単な意思疎通は可能。全身の異常筋緊張あり、右手指は母指と示指のみ可動。基本動作は、起居・移乗動作等全て全介助、食事は胃瘻による経管栄養(当施設入居前の医療機関での評価は、先行期~咽頭期まで重度に障害され、劇的な改善は困難とされていた)。
【経口摂取へのきっかけ】
当施設入居後、胃瘻による経管栄養を継続していたが、数日後妻より「近所で胃瘻から経口摂取に移行して今は口から食べている方がいて、主人も可能ですか?」という問いかけを頂く。施設で検討した結果、医療連携先の訪問歯科へ嚥下内視鏡を依頼。2週間後検査を実施。咀嚼力は弱いが、呑み込みに問題無しとの結果を得、歯科医師からのアドバイスを基に、口腔機能向上に対する支援計画を再考することとなる。
【嚥下リハの内容】
1.舌圧トレーニング用具を用いた筋力訓練
2.ガーゼで包んだガムによる咀嚼訓練
3.吹き戻しを用いた呼気抵抗負荷訓練
4.訓練後、嚥下困難者用ゼリー1個摂取にて嚥下状態を確認する
*2か月後、再度嚥下内視鏡を実施して状態を確認。ソフト食かミキサー食が開始できるか検討する事となる。
2か月間、上記リハビリを実施。舌圧トレーニング用具を用いた筋力訓練については、鏡を見ているときは集中できず気がそれてしまい、舌の動きは弱いという評価もあったが、えん下困難者用ゼリーについては誤嚥も無く摂取出来ていた。【経口摂取再獲得へ】
2か月後、嚥下内視鏡検査実施。歯科医師より以下の注意、アドバイスを頂く。
・前回の検査時よりも状態は良くなっており、食事摂取可能。ついては、ソフト食はきれいに飲み込む事ができるが、ミキサー粥は粘り気があり喉に残るため危険。・水分については、中間のトロミが良い。コップを持たせると自己飲水可能だが一口の量に注意が必要。
・嚥下訓練を継続すれば食形態のアップも可能。まずは昼食から提供して回数を増やしていく。自己摂取はグリップ等の自助具スプーン等の使用で訓練次第で可能。自助具については作業療法士に依頼する。
3週間後、再度嚥下内視鏡検査実施。全粥・刻み食・汁ものはヨーグルト状のものが可能となる。その後、一口大へ食上げ、経口摂取を昼食1食より3食へ変更。
トータル5回の嚥下内視鏡による評価を経て、経口摂取の取り組み開始から約半年後に3食常食へ移行することが可能となった。また、経口摂取により栄養状態が改善されたばかりではなく、入居当初は出来なかった食事の自力摂取、寝返り、会話も出来るようになり、自分の意思で行きたいところへ車椅子で自走できるまでになった。【まとめ】
妻からの問いかけをきっかけに、胃婁から経口摂取を再獲得できた入居者の事例を経験した。嚥下障害による経管栄養は、単に口から食べられないという単一の問題だけでなく、日常生活や社会生活に様々な支障を来す。食べるという行為については様々な感覚刺激からの情報を統合し、運動機能だけでなく記憶・判断・洞察・創造・学習などの高次機能を高める事に繋がるとされ、その関連性が注目されている。今回の事例は、医療連携先の訪問歯科の協力のもと、合計5回の嚥下内視鏡と半年間の期間を経て胃瘻から常食の経口摂取へ移行できたものであるが、その結果、ADL向上、生活の質向上につなげられた。この事例を通じて多職種が連携し、目標達成へ向けて取り組むことの重要性を改めて認識させられた。
