講演情報

[27-O-J002-02]頸部干渉波刺激を行い効果が見られた一症例

埼玉県 関根 裕紀 (介護老人保健施設高齢者ケアセンターのぞみ)
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【はじめに】
 近年、嚥下機能のリハビリテーションとして電気刺激療法が注目されている。電気刺激療法は主に、筋力にアプローチする「低周波刺激」と感覚にアプローチする「干渉波刺激」の2つに分けられる。当施設では、数年にわたり「フードケア社・干渉波治療器『ジェントルスティム』」の購入を検討し、2024年5月購入に至った。順次適応者に使用を開始し、ムセが軽減するという明確な効果が見られた症例があった為、ここに報告する。
【対象】
症例:80代、男性
診断:パーキンソン症候群
要介護度:要介護1
生活歴:数年前から足の上がりにくさ・歩行不安定を自覚。2年前に転倒・救急搬送された際に上記診断あり。週2日ヘルパー・家族支援で独居を送っていた。
既往歴:慢性弓部大動脈瘤あり。
現病歴:診断3ヶ月後に自宅トイレで転倒・体動困難となり救急搬送。悪性症候群疑いでA病院に入院・治療。1ヶ月後リハビリ目的にB病院に転院。1ヶ月後リハビリ継続目的で当施設に入所となる。
嚥下機能:反復唾液嚥下テスト(以下RSST):0回
     改訂版水飲みテスト:3(嚥下あり、呼吸良好、湿性嗄声)
     フードテスト:3(嚥下あり、呼吸良好、湿性嗄声)
     簡易嚥下評価ツールEAT-10(以下EAT-10):2点
食事内容:全粥、刻み食、水分は2.5%のトロミを使用。
食事状況:頚部やや前方突出した状態で摂取していた。摂取速度速く食事所要時間は15分程度だった。嚥下後の口腔内に中等量残渣が見られ、追加嚥下による対応が見られた。食事中は湿性発話であった。食事の後半や、水分摂取でむせが見られることが多かった。
【方法】
1回20分、昼食時にジェントルスティムの使用を週6日、6週間実施。
事前にリハビリ職・看護師・介護職に使用方法(頸部に電極パッドを装着し電流を流す)を指導し、どのスタッフでも対応出来るようにした。
【結果】
嚥下機能:RSST:2回
     改訂版水飲みテスト:3(嚥下あり、呼吸良好、湿性嗄声)
     フードテスト:3(嚥下あり、呼吸良好、湿性嗄声)
     EAT-10:0点
食事内容:全粥、刻み食は継続。水分のとろみは段階的に減量し、最終的に中止。
食事状況:摂取姿勢、摂取速度、食事中の口腔内残渣に大きな変化は見られなかった。食事所要時間は10分程度となった。食事中の湿性発話が聴かれなくなり、食事後半や水分摂取でむせが見られなくなった。
【考察】
 ジェントルスティム使用前に見られていたむせは2種類あった。1つは水分を摂取したタイミングで見られるむせで、水分の流入に対する知覚が鈍く嚥下反射惹起が遅れたことが原因と考えられた。もう1つは、食事後半に見られるむせで、食事中に咽頭貯留が生じても知覚の低下により追加嚥下が見られず上気道流入したことが原因と考えられた。以上の2点からジェントルスティムの適応と判断し使用した。
 使用前と使用後を比較し、RSSTでは0回から2回に嚥下回数の増加が見られた。また、水分を摂取したタイミングに生じていたムセが見られなくなり、嚥下反射惹起が改善したと言えた。
 改訂版水飲みテスト・フードテストでは評価点に変化がなく、依然として水分やゼリーが咽頭に残留しやすい状態と考えられた。しかし、使用開始後から食事中に湿性発話が見られなくなったことから、少量の咽頭残留物を早い段階で感知し追加嚥下で対応出来る様になったと考えた。EAT10では2点から0点に変化が見られ、食事中のムセがなくなったと本人が自覚されていた。咽頭残留物を早い段階で対応出来る様になり、結果として咽頭残留物の上気道流入(ムセ)がなくなったと考える。
 以上から、ジェントルスティムの使用は当利用者にとって、ムセや誤嚥の予防に有効だったと考える。また、水分でムセが見られなくなり最終的にトロミ剤を中止出来たことは、トロミ剤を好まない当利用者にとってQOL向上につながった。
 ジェントルスティムの導入は全国的に病院が多く、介護施設ではまだ少ない。その為、介護分野では知名度が低い。しかし、装着がしやすいこと、不快感が少なく利用者が受け入れやすいこと、嚥下訓練として食事時に実施可能であること等、介護施設においても導入しやすい機器と考える。今後、介護施設における新しい嚥下のリハビリテーション方法として活躍を期待したい。