講演情報

[27-O-J002-03]多職種連携による「お口の手帳」の活用と支援体制構築

山口県 福田 宗広 (老人保健施設ハートホーム山口)
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はじめに青藍会飲み込みサポートチームは、高齢者が「口から食べる」ことをどこで生活を送っても継続できるよう支援することを目的に、2024年3月14日に発足した。加齢に伴う嚥下機能や口腔機能の低下は、食事の自立を妨げるだけでなく、低栄養や誤嚥性肺炎などを引き起こし、生活の質(QOL)に深刻な影響を与える。当施設では、これらの課題に対し多職種の専門性を活かし連携し、科学的根拠に基づいた包括的支援体制を構築してきた。本抄録では、チームの発足背景、取り組み内容、導入したツール「お口の手帳」の成果、在宅支援との連携、そして今後の課題と展望について報告する。チーム発足の背景と構成近年、介護施設における高齢者の摂食・嚥下障害への対応は、より複雑かつ高度な支援が求められている。当施設でも、個々の利用者に対し一貫性のある多職種連携が十分に取れていない状況が課題であった。そこで、歯科医師、嚥下内視鏡検査(VE)を担当する医師、歯科衛生士、言語聴覚士、管理栄養士、理学療法士、作業療法士で構成された「飲み込みサポートチーム」を立ち上げた。各専門職が独立して対応するのではなく、互いの視点や知識を共有することで、より質の高い個別支援の提供を目指す。活動内容チーム発足後、最初の取り組みは、情報の断片化とケア内容のばらつきを是正することであった。そのため、月1回の「飲み込みサポートミーティング」を定例化。利用者ごとの経過や評価、課題について各職種が報告し合い、支援計画を多面的に検討・修正する体制を整えた。ミーティングでは、VE検査結果や口腔内写真、食事中の動画などの視覚情報を活用し、より客観的な判断と共通理解を促進させた。職種別の主な役割として、歯科医師は虫歯治療、義歯の作成・調整、歯科衛生士は口腔衛生の維持管理や清掃方法の指導を担当。言語聴覚士は嚥下機能の評価・訓練、発声訓練を実施し、管理栄養士は必要カロリー計算・水分量の目標設定や食事形態、とろみ調整を担当。理学療法士は摂食時の姿勢・体幹安定性、作業療法士は食事動作、自助具選定、動作の習得訓練を担っており、それぞれが連携して一人の利用者を支援。また、VE検査を導入することで、誤嚥の有無や障害の原因部位が可視化され、リスクに応じた介入や訓練の方針が明確になった。検査後にはすべての関係職種で振り返りを実施し、検査結果をもとに支援内容を即座に見直すプロセスを確立している。情報一元化ツール「お口の手帳」の導入多職種間での情報共有や支援方針の統一をさらに高めるため、「お口の手帳」を独自に作成・導入した。これは、利用者の食支援に関わる全情報を一冊に集約するツールであり、施設内だけでなく在宅でも継続して使用できる形式を採用している。手帳の構成は以下の5項目である。1.【歯科情報】:口腔内図を用い、欠損歯、義歯の有無、清掃状態、乾燥、歯肉・舌の観察所見などを歯科医師・歯科衛生士が記載。2.【食事・栄養情報】:身長・体重、目標摂取カロリー・水分量、食事形態、とろみの有無・段階、介助方法、自助具の有無などを管理栄養士が記入。3.【サービス利用状況】:理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが提供した訓練や評価内容、ケアの変更点を時系列で記録。4.【自主訓練方法】:自宅でも継続できる嚥下訓練や発声訓練をイラスト付きで紹介。利用者自身や家族が理解しやすい構成とした。5.【とろみ早見表】:とろみの段階を視覚化し、家族や他の支援者が確認しやすい工夫を取り入れた。チーム発足後128冊を配布し、施設利用者およびその家族による活用が進んでいる。利用者の状態変化を全職種で即時に共有できるようになったことにより、支援の質が格段に向上した。在宅支援への展開「お口の手帳」は、退所後も自宅での継続的支援を実現するツールとして有効である。施設でのVE検査結果や訓練内容、食事形態の調整内容をそのまま家族や訪問スタッフへ引き継ぐことで、支援の中断や誤解を防ぐことが可能となった。「施設では食べられていたが、自宅では難しい」といった事例が減少し、家族からも安心につながるとの評価を得ている。今後は、訪問看護や居宅介護支援事業所との連携をさらに強化し、地域全体での支援ネットワークの中核として機能させていく方針である。今後の課題と展望今後の課題としては、1.「お口の手帳」のさらなるカスタマイズ化による利便性の向上、2.在宅支援へのスムーズな移行支援の仕組みづくり、3.施設や在宅サービスとの連携強化による「口から食べる」支援の標準化、の3点が挙げられる。青藍会飲み込みサポートチームでは今後も、多職種の連携を軸とした支援体制を強化し、すべての高齢者が安心して「食べる」ことを楽しめるよう、支援の質の向上に努めていく。