講演情報

[27-O-L001-02]ADLの向上を目標に一体的取り組みで介入を行った症例

大阪府 嶋吉 晃宏, 柴田 智絵, 吉岡 美奈 (社会医療法人 生長会 介護老人保健施設 ベルアモール)
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【はじめに】
近年、リハビリテーション・栄養・口腔管理の取り組みを一体となって(以下、一体的取り組み)実施することで、対象者にとって効果的な自立支援や重度化防止につながることが期待されている。当施設でも今年度よりリハビリテーション計画書情報加算Iを算定しており、リハビリテーション専門職、管理栄養士、歯科専門職らが協力し、対象者に対してより質の高いケアを行うことが課題となっている。今回、一体的取り組みを行い、ADLが向上した症例を報告する。
【症例情報】
対象者A氏、男性86歳、要介護4
身長140.0cm、体重40.1kg、BMI20.5
既往歴:x年菌血症、x-2年アルツハイマー型認知症、x-6年腹部大動脈瘤、高血圧症、脂質異常症
入所に至った経緯として、妻と2人暮らしであり通所介護を週3回利用し在宅生活を送っていたが、x年y月z日に発熱と意識障害があり総合病院へ救急搬送された。菌血症と診断され入院となる。その後、病状は改善するも入院中は臥床中心の生活を送っており、歩行状態やADLが低下した。現状の身体機能では自宅退院が困難なため、当施設へ相談があり、x年y+1月z-2日に入所となる。キーパーソンは妻。同市内に息子夫婦が住んでいる。入所時の聞き取りによると、家族の希望は入院前と同様の生活を過ごせるよう、歩行能力が向上してほしいとのこと。自宅の環境について、一戸建てに居住しており、門扉から玄関までに4段(各5cm、10cm、15cm、7cm)の段差があり、玄関から自宅に入るまでに上がり框が2段(各15cm)ある。生活スペースとなる廊下からリビング・寝室・トイレの出入り口には5cm程度の軽微な段差がある。門扉から玄関・玄関の上がり框・トイレ内・風呂には手すりが設置されており、部屋や廊下などの動線は物置や壁を伝い移動が可能。2階はあるが入院前も使用しておらず今後も使用予定は無いとのこと。上記の評価から、室内の移動や段差昇降を手すりなどの支持物を使用して行えることを目標とした。
初期評価実施時、歩行耐久性は馬蹄型歩行器を使用し、介助下で30m程度歩行可能であるが、途中で躓きが見られた。SARC-Calfは18点(下腿周囲長28.2cm)、握力右16kg左12kgであり、評価結果からサルコペニアが疑われる。その他の評価として、BBS16点であり、歩行の安定性やバランス機能の低下から転倒リスクが高い状態にある。ADL評価ではFIMの合計は63点、内運動45点。多くの動作に中等度から最小介助を要している。口腔内の状態として残歯は11本であり、上下ともに部分義歯を使用。自歯、義歯共に汚れが見られる。嚥下機能の低下もあり、食事内容は主食:粥、副食:軟菜食(学会分類4)、水分:とろみなし。提供栄養量のエネルギーは1,400kcal/日であり、1日平均タンパク質量は53g。食思は良好であり、自身で全量摂取可能であった。
【経過】
栄養面ではタンパク質の摂取量について、毎日体重×1.2g~1.5gを目標に設定。家族と相談し、栄養補助食品(明治メイバランスmini、エネルギー200kcal、タンパク質7.5g)の提供とA氏が好む甘味の食品の中で食事形態に即した高タンパク質の食品(ヨーグルトやバニラアイスなど)の持ち込みを依頼し、間食時に提供を行った。
運動面では介入初期より抵抗運動と歩行訓練を中心に行い、状態の変化に応じて負荷量の増加と自宅の段差昇降を想定したステップ台や階段を使用した昇降訓練を実施した。訓練時間は週5回で各20分実施し、訓練以外の時間にも介護スタッフに協力依頼し、体操などのレクリエーションへの参加を促した。口腔の状態については定期的な歯科医師と歯科衛生士の評価・介入を実施し、看護師と介護スタッフを中心に口腔内の清潔保持を図った。
結果、2ヵ月後、体重は41.1kgとなり、BMIは21.0となった。動作についても歩行耐久性は独歩で100m以上、躓き無く可能となり、階段(20cm)も手すりを使用し10段程度の昇降動作が可能となった。SARC-Calfは15点(下腿周囲長29.0cm) 、握力は右20kg・左17kgとなった。BBS25点であり、歩行の安定性やバランス機能が向上し、転倒リスクが軽減した。FIMの合計は74点、内運動58点。多くの動作が見守りから修正自立レベルとなった。口腔内の状態についても残歯の数に変わりはなく、継続した介入により清潔状態の維持ができている。
【考察、まとめ】
若林らは、リハビリテーション・栄養・口腔管理が、それぞれ「機能」「活動」「参加」といった生活機能を高めるために重要であり、栄養管理が不適切な状態でリハビリテーションを行うことで低栄養やサルコペニアが悪化し、生活機能が低下する恐れがある。また口腔機能が悪いと十分な栄養摂取ができず、栄養状態が悪化して口腔機能のさらなる悪化につながることがあると述べている。(1)今回、A氏への介入を運動面・栄養面・口腔管理面など、多角的に検討し情報の共有を行い、協力して関わることでA氏にとってより良いケアが行えたと考える。今後もチームで一体的取り組みを行うことで、対象者の状態や希望に即したケアの提供を目指したい。
【参考文献】(1)若林秀隆ほか.生活期におけるリハビリテーション・栄養・口腔管理の協働に関するケア実践マニュアル.医学書院.2024.208p.