講演情報

[27-O-L001-03]回復期リハビリテーション病棟と在宅をつなぐ老健リハ直接は困難であった在宅復帰を果たした一例への関わり

鳥取県 松本 宏紀, 原 大樹 (介護老人保健施設なんぶ幸朋苑)
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はじめに
回復期リハビリテーション病棟(以下、回リハ病棟)から直接の在宅復帰が困難で介護老人保健施設なんぶ幸朋
苑(以下、当苑)へ入所となった利用者は過去3年間で47名、自宅復帰率は21%であった。中村は、介護老人保
健施設は回リハ病棟から在宅復帰できなかった要介護者が入所するため運動機能や認知機能等の障害がより重度
なケースが多く、在宅復帰には回リハ病棟からの場合とは違った要因があると述べている。今回、回リハ病棟か
ら入所後に6ヵ月間の介入を経て在宅復帰へ至った症例を担当した。本症例が在宅復帰を達成した要因を検討す
ることは今後の関わり方の質向上につながると考え、経過や介入内容の振り返りを行った。
症例紹介
90代、女性、要介護3
既往歴:骨粗鬆症、高血圧症、糖尿病
現病歴:左大腿骨転子下骨折
X年Y月、自宅での歩行中に後方に転倒(シルバーカー使用)。6日後、急性期病院受診しMRIにて左大腿骨転子下
骨折の診断。8日後、固定術(Long γ U-Lag screw with HA)施行。術後6週間の免荷指示。28日後、回リハ病
棟へ転院。免荷や禁忌肢位の理解が難しく移乗はスライドボード使用(二人介助)。53日後、全荷重開始、立位
経由での移乗練習を開始(一人介助)。117日後、自宅退居希望も排泄動作の自立が困難なため当苑入所。
本人より「歩けるようになりたい」、家族より「デイサービスに通えるようになってほしい、一人でポータブルト
イレに移乗できるようになってほしい」との要望あり。本人、家族、関係職種にて「ポータブルトイレへの移乗
およびトイレ動作の自立」を目標に設定。
初期評価
Barthel Index(以下、BI)は35点。
寝返り、起居動作、端坐位保持はベッド柵やL字バーを使用して自立。
移乗はL字バーを把持して腋窩中等度介助にて可能だが、踏み替えが困難で左下肢の捻転に要注意。
トイレ動作は手すりを両手で把持して立位保持可能だが、下衣操作は全介助。尿意が曖昧なため定時誘導する
が、パッド内での排尿がほとんどである。
長谷川式簡易知能評価スケール(以下、HDS-R)は9点。
経過
(入居~1ヵ月目)
ベッド~車椅子間の移乗動作見守り、立位保持自立を目標に平行棒内での立位保持練習、移乗動作練習、歩行練
習を開始。移乗動作は踏み替え動作に声掛けや誘導が必要だが、最小介助へ改善。立位保持での左下肢への荷重
量は1/3~1/2で上肢支持と右下肢荷重優位。
(2ヵ月目~3ヵ月目)
立位バランス練習、排泄動作練習開始。移乗動作は見守りにて介助バーを把持して可能となった。依然として立
位保持にてL字バーを両手で把持する必要があり、片手での下衣操作や清潔保持は困難。動作能力の改善に伴い
単独行動や帰宅願望の訴えが増加。
(4ヵ月目)
ポータブルトイレへの移乗およびトイレ動作自立を目標に練習を進めてきたが、達成が困難と考えられた。主治
医へ相談の上、本人、家族、看介護職員、相談員、ケアマネジャーで情報共有して目標を修正した。家族の介護
力を考えるとトイレ動作の介助は難しいため、家族がパッド交換対応を行えることを新たな目標とした。
この時期から自宅玄関の上がり框の昇降を想定した高さ15~20cmの段差昇降練習を開始。降段時は左下肢の膝
折れによる転落リスクがあるため、自宅での介助を考慮し後ろ向きでの降段動作を練習。後方からの腋窩中等度
介助にて膝折れなく2足1段での昇降が可能となった。
(5ヵ月目)
退居前訪問指導を実施。前もって福祉用具専門相談員と福祉用具を選定し、訪問当日に自宅へ用意して移乗動作
と段差昇降の動作確認や家族へ介助方法を伝達した。
退所後にデイサービス4回/週、ショートステイ3回/週の利用を調整。排泄はパッド交換対応となったが、ケアマ
ネジャーとの在宅サービス調整により、通所サービス利用へパッド交換のタイミングを合わせやすくすることで
家族の介助量軽減を図った。
(6ヵ月目)
退居後に使用予定の車椅子を調整して生活場面で使用。問題なく使用できることを確認し、自宅退居となった。
最終評価
BIは45点。内訳として、移乗動作が5点から10点、階段昇降が0点から5点へ改善。
移乗動作は中等度介助から見守りへ改善。
階段昇降は中等度介助にて高さ20センチ台の昇降が可能となった。
トイレ動作は全介助で尿意も曖昧なためパッド交換での対応となった。
HDS-Rは11点。
考察
当初目標としていたトイレ動作の自立は達成できなかったが、それでも在宅復帰に至った要因について考察した。
佐伯らは、在宅復帰するための具体的な目標を利用者や家族と共に設定し入所目的を明確にすることで家族が介
助方法を一緒に考えるなどケアへの参加意識を持つことが可能になると述べている。本事例では入居時に本人と
家族の要望から自宅復帰に必要な目標を立て、4ヵ月目に達成が難しいと考えられた際には家族の介護力に合わ
せた目標の修正と自宅環境やサービスの調整を図った経緯があり、本人と家族を中心とした関わりを継続できて
いたと考えた。
老健からの在宅復帰には利用者に対するADL支援とともに、家族介護者に対する教育的支援も重要な要因に挙げ
られている。佐伯らは在宅介護への家族不安解消のためには退居前訪問で自宅環境において介助方法を指導した
り利用者の動きを確認することが重要と述べている。本事例では自宅へ福祉用具を用意した上で退居前訪問指導
を行なって動作確認や家族への介助方法の伝達を行った。実生活の環境にて退居後担うことになる具体的な介護
の内容や介助量を家族に実体験してもらいながら伝達したことが、不安の軽減につながったと考えられた。
本症例への関わりを振り返った課題として、当初設定した目標の達成が困難と感じ始めた3ヵ月目の時点にて情報
共有することによって入居期間の短縮が図れたと思われる。