講演情報
[27-O-L001-04]生活期リハで自立に至った症例 老健だからできたこと
長野県 ○溝呂木 悠人 (円会センテナリアン)
【はじめに】
リハビリテーション(以下リハ)の過程は、主に急性期、回復期、生活期に分類される。当施設では、定期的に同法人内の急性期病院からセラピストを受け入れ、急性期ではイメージがつきにくい介護保険制度や、生活期リハを学ぶ研修制度がある。リハは回復期で完結するまで行われ、介護老人保健施設(以下老健)は在宅サービス調整や今後の方針が決まるまでの間、廃用予防目的にリハを行う維持期間というイメージが強かった。今回、老健での研修を経て生活期におけるリハの重要性を感じ、新たな知見を得る事が出来たため、きっかけとなった症例とともに報告する。
【症例紹介】
70代男性 要介護4
<主病名>頚椎化膿性脊椎炎
<既往歴>腰部脊柱管狭窄症(50代で手術)
<家族構成>妻(キーパーソン)、長男
<病前生活状況>独歩で屋内外自立 農業が趣味
<入所までの経緯>
麻痺が出現しC5/6レベルの頚椎化膿性脊椎炎と診断、頚椎後方除圧固定術施行。術後、リハ継続目的に回復期病棟へ転院。医師からは「1ヶ月リハをして変化がなければそれ以上の改善は難しく、車椅子生活になる可能性あり。歩けるようになったとしても、歩行器使用し短距離を介助レベル」と説明された。2ヶ月で退院となるが、在宅介護困難のため当施設へ入所となる。
【入所時評価】
<意向>
本人:本当は歩きたいけれど、無理だと思う トイレが少しでも自分で出来るようになればいい
家族:トイレ動作が出来るようになってほしい
<心身機能>
四肢麻痺:右>左 下肢優位
筋力:MMT 左上肢4 右上肢3 両下肢ともに3~4
既往障害:左下垂足、感覚障害(左足部 表在、深部ともに中等度鈍麻)
認知機能:HDS-R26点
<基本動作>
起居:自立 移乗:軽介助 移動:車椅子駆動、見守り~介助
<ADL>
食事:自立 排泄:オムツ全介助 整容:見守り 更衣:一部介助 入浴:機械浴全介助 BI:45点 FIM:66点
【介入内容と経過】
短期目標:排泄見守り 移乗、車椅子駆動自立 長期目標:排泄自立
短期集中リハ実施 4~5回/週の頻度で介入 主な内容:下肢筋力増強練習、基本動作練習、歩行練習
<入所~4w>
◎リハ
・歩行器歩行困難 平行棒内歩行から開始 3週間程で歩行器歩行が10m程軽介助で可能となる
・排泄動作を評価し、ズボン上げ下げが一部可能
看介護職員に共有し、可能な範囲は自力で行うよう促してもらう
◎生活場面や本人の様子
・初日に介護職員と共に評価し、立位可能なため排泄はトイレで実施
1日通して失禁ないため、紙パンツから布パンツへ変更となる
・介護職員が余暇時間の過ごし方を検討し、軽作業や新聞を提供
日中の大半は離床され、職員を通して他利用者様とお話をして過ごされるようになる
・軽作業のやり方を他利用者様に教えるなど、自発的な交流がみられる
・車椅子駆動を促し、見守りで可能となる
・穏やかに過ごされるが、在宅を諦め施設生活を受け入れている発言聞かれる
<5~7w>
◎リハ
・歩行器にて50m軽介助で歩行可能
・排泄自立に向け立位バランス練習追加
◎生活場面や本人の様子
・排泄動作はほぼ見守りとなる
・車椅子駆動、排泄自立に向け、多職種協働でチェック表を用いた生活場面の動作評価開始(以下動作チェック)
・歩行練習中に職員から「こんなに歩けるんですね、すごい!」など声をかけてもらい、嬉しそうな様子
本人の意向が「トイレが出来るようになりたい」から「歩けるようになりたい」と変化
<8w>
◎生活場面や本人の様子
・移乗、車椅子駆動、排泄自立 当初の目標を達成した事で自信がつき、リハに対してより意欲的となる
<9~10w>
◎リハ
・歩行器自立に向け、トイレドア開閉や椅子着退席など実用的な練習開始
◎生活場面や本人の様子
・生活場面の移動を車椅子自立から歩行器歩行付き添いへ変更
・歩行器歩行見守りとなった段階で歩行自立に向けて動作チェック開始
・本人の意向が「家に帰りたい」に変化 前向きな発言が多くなる
<11~12w>
◎リハ
・歩行バランス向上目的にT字杖歩行練習開始
◎生活場面や本人の様子
・歩行器にて歩行自立
【退所時評価】 ※大きな変化点のみ
<意向>
本人:家に帰ってまた畑仕事がしたい
家族:このまま良くなっていけば、また家で一緒に暮らしたい
<心身機能>
四肢麻痺:筋力低下レベルに改善 MMT 両上下肢ともに4~5
<基本動作>
移動:歩行器歩行自立
<ADL>
排泄:自立 整容:自立 更衣:自立~見守り 入浴:個浴一部介助 BI:85点 FIM:104点
【考察】
今回、生活期リハに移行してからADLが改善し、歩行器歩行自立へ至った症例を経験した。病院ではセラピストが1日最大180分介入出来るのに対し、老健では短期集中リハ期間であっても1日20~30分と介入出来る時間は限られている。それにも関わらず、本症例が歩行自立にまで至った要因は多職種連携や、活動・参加に焦点をおいた生活期リハという老健ならではの強みが発揮された事によるものと考える。
病院での経験としては、治療中心の管理された規則的な毎日となり、自立になるまでリハ以外で離床する機会が少なく、ベッド上生活となる事が多かった。しかし、老健ではそれぞれの職種が率先してADL評価や自分で出来る事を促しており、また、他利用者様との関わりが持てた事で、本症例にとって老健が日常生活の場となっていった。それにより、自主的に離床される事や活動時間が増え、機能改善や意欲が向上された事で人生に前向きになり、自立にまで至ったと考える。
【まとめ】
病院とは違った特性や強みがある老健だからこそ改善する症例を経験し、老健は維持期間という先入観が大きく塗り替えられ、生活期リハの可能性や重要性に気が付く事ができた。改善の余地が十分残されている状態で治療終了、退院を余儀なくされる方にとって唯一の受け皿であり、最後の希望になり得るのが老健であると確信している。
リハビリテーション(以下リハ)の過程は、主に急性期、回復期、生活期に分類される。当施設では、定期的に同法人内の急性期病院からセラピストを受け入れ、急性期ではイメージがつきにくい介護保険制度や、生活期リハを学ぶ研修制度がある。リハは回復期で完結するまで行われ、介護老人保健施設(以下老健)は在宅サービス調整や今後の方針が決まるまでの間、廃用予防目的にリハを行う維持期間というイメージが強かった。今回、老健での研修を経て生活期におけるリハの重要性を感じ、新たな知見を得る事が出来たため、きっかけとなった症例とともに報告する。
【症例紹介】
70代男性 要介護4
<主病名>頚椎化膿性脊椎炎
<既往歴>腰部脊柱管狭窄症(50代で手術)
<家族構成>妻(キーパーソン)、長男
<病前生活状況>独歩で屋内外自立 農業が趣味
<入所までの経緯>
麻痺が出現しC5/6レベルの頚椎化膿性脊椎炎と診断、頚椎後方除圧固定術施行。術後、リハ継続目的に回復期病棟へ転院。医師からは「1ヶ月リハをして変化がなければそれ以上の改善は難しく、車椅子生活になる可能性あり。歩けるようになったとしても、歩行器使用し短距離を介助レベル」と説明された。2ヶ月で退院となるが、在宅介護困難のため当施設へ入所となる。
【入所時評価】
<意向>
本人:本当は歩きたいけれど、無理だと思う トイレが少しでも自分で出来るようになればいい
家族:トイレ動作が出来るようになってほしい
<心身機能>
四肢麻痺:右>左 下肢優位
筋力:MMT 左上肢4 右上肢3 両下肢ともに3~4
既往障害:左下垂足、感覚障害(左足部 表在、深部ともに中等度鈍麻)
認知機能:HDS-R26点
<基本動作>
起居:自立 移乗:軽介助 移動:車椅子駆動、見守り~介助
<ADL>
食事:自立 排泄:オムツ全介助 整容:見守り 更衣:一部介助 入浴:機械浴全介助 BI:45点 FIM:66点
【介入内容と経過】
短期目標:排泄見守り 移乗、車椅子駆動自立 長期目標:排泄自立
短期集中リハ実施 4~5回/週の頻度で介入 主な内容:下肢筋力増強練習、基本動作練習、歩行練習
<入所~4w>
◎リハ
・歩行器歩行困難 平行棒内歩行から開始 3週間程で歩行器歩行が10m程軽介助で可能となる
・排泄動作を評価し、ズボン上げ下げが一部可能
看介護職員に共有し、可能な範囲は自力で行うよう促してもらう
◎生活場面や本人の様子
・初日に介護職員と共に評価し、立位可能なため排泄はトイレで実施
1日通して失禁ないため、紙パンツから布パンツへ変更となる
・介護職員が余暇時間の過ごし方を検討し、軽作業や新聞を提供
日中の大半は離床され、職員を通して他利用者様とお話をして過ごされるようになる
・軽作業のやり方を他利用者様に教えるなど、自発的な交流がみられる
・車椅子駆動を促し、見守りで可能となる
・穏やかに過ごされるが、在宅を諦め施設生活を受け入れている発言聞かれる
<5~7w>
◎リハ
・歩行器にて50m軽介助で歩行可能
・排泄自立に向け立位バランス練習追加
◎生活場面や本人の様子
・排泄動作はほぼ見守りとなる
・車椅子駆動、排泄自立に向け、多職種協働でチェック表を用いた生活場面の動作評価開始(以下動作チェック)
・歩行練習中に職員から「こんなに歩けるんですね、すごい!」など声をかけてもらい、嬉しそうな様子
本人の意向が「トイレが出来るようになりたい」から「歩けるようになりたい」と変化
<8w>
◎生活場面や本人の様子
・移乗、車椅子駆動、排泄自立 当初の目標を達成した事で自信がつき、リハに対してより意欲的となる
<9~10w>
◎リハ
・歩行器自立に向け、トイレドア開閉や椅子着退席など実用的な練習開始
◎生活場面や本人の様子
・生活場面の移動を車椅子自立から歩行器歩行付き添いへ変更
・歩行器歩行見守りとなった段階で歩行自立に向けて動作チェック開始
・本人の意向が「家に帰りたい」に変化 前向きな発言が多くなる
<11~12w>
◎リハ
・歩行バランス向上目的にT字杖歩行練習開始
◎生活場面や本人の様子
・歩行器にて歩行自立
【退所時評価】 ※大きな変化点のみ
<意向>
本人:家に帰ってまた畑仕事がしたい
家族:このまま良くなっていけば、また家で一緒に暮らしたい
<心身機能>
四肢麻痺:筋力低下レベルに改善 MMT 両上下肢ともに4~5
<基本動作>
移動:歩行器歩行自立
<ADL>
排泄:自立 整容:自立 更衣:自立~見守り 入浴:個浴一部介助 BI:85点 FIM:104点
【考察】
今回、生活期リハに移行してからADLが改善し、歩行器歩行自立へ至った症例を経験した。病院ではセラピストが1日最大180分介入出来るのに対し、老健では短期集中リハ期間であっても1日20~30分と介入出来る時間は限られている。それにも関わらず、本症例が歩行自立にまで至った要因は多職種連携や、活動・参加に焦点をおいた生活期リハという老健ならではの強みが発揮された事によるものと考える。
病院での経験としては、治療中心の管理された規則的な毎日となり、自立になるまでリハ以外で離床する機会が少なく、ベッド上生活となる事が多かった。しかし、老健ではそれぞれの職種が率先してADL評価や自分で出来る事を促しており、また、他利用者様との関わりが持てた事で、本症例にとって老健が日常生活の場となっていった。それにより、自主的に離床される事や活動時間が増え、機能改善や意欲が向上された事で人生に前向きになり、自立にまで至ったと考える。
【まとめ】
病院とは違った特性や強みがある老健だからこそ改善する症例を経験し、老健は維持期間という先入観が大きく塗り替えられ、生活期リハの可能性や重要性に気が付く事ができた。改善の余地が十分残されている状態で治療終了、退院を余儀なくされる方にとって唯一の受け皿であり、最後の希望になり得るのが老健であると確信している。
