講演情報

[27-O-L001-05]超強化型老健入退所における健康関連QOLスコアの推移老健が地域高齢者のwell-beingに寄与しているevidence

岡山県 田村 暢一朗, 鍛本 真一郎, 田辺 紀子 (老人保健施設老健あかね)
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【目的】本研究の目的は、要介護高齢者の地域生活を支援する介護老人保健施設(ROKEN)入所によって、健康関連QOL(HRQoL)がどのように変化するかを縦断的に評価し、同施設が在宅生活の維持やwell-beingの向上にどのように寄与しているかを明らかにすることである。日本では高齢化が急速に進み、地域包括ケアシステムの中核としてROKENが機能しているが、入所者自身が感じるHRQoLの変化については十分に検証されていない。特に、在宅と施設を3か月ごとに交互に過ごすという日本独自のケアモデルにおいて、生活環境の変化がHRQoLに与える影響を同一対象者で追跡調査する意義は大きい。【方法】本研究は2022年11月から2024年3月にかけて、岡山県倉敷市の超強化型老健施設において実施された前向き観察研究である。対象は、自宅退所を目指して入所した高齢者のうち、入所前(T1)、入所1か月後(T2)、退所1か月後(T3)の3時点すべてでHRQoL質問票に自記式で回答可能であった24名とした。HRQoLの評価にはSF-12(身体的・精神的・社会的役割の3サマリスコア)とASCOT(社会的ケア関連QOL)を用いた。データ解析は、Friedman検定で3時点間の変化を確認し、有意差があった場合にはWilcoxonの符号付順位検定を用いてペアごとの比較を行った。多重比較はBonferroni法で補正した。【結果】最終解析対象者24名の中央値年齢は80.5歳、MMSE平均22.0、FIM中央値93.5であり、要介護3以上が過半数を占めていた。SF-12では、精神的スコア(MCS)がT1からT2にかけて有意に上昇し(p=0.04)、社会的役割スコア(RCS)はT2からT3(p=0.00)およびT1からT3(p=0.03)で有意に低下した。ASCOTスコアもT2からT3で有意な低下を示した(p=0.02)。これらの結果から、老健入所中に一時的なQOLの改善がみられるものの、退所後に低下する傾向が見られた。【考察】本研究では、精神的健康(MCS)や社会的役割(RCS)、社会的ケアQOL(ASCOT)において入所中の改善がみられたが、退所後にはいずれも低下した。特にRCSの低下は、退所後の社会的参加や役割の喪失を反映している可能性がある。老健ではリハビリやスタッフ・他入所者との交流により、一定の社会的役割を感じられる環境が提供されるが、在宅復帰後は家族の過保護や転倒への不安などから活動が制限され、社会参加が困難になる場合がある。また、日本の文化的背景として、高齢者が自発的に活動することを控える傾向も影響している可能性がある。加えて、対象者の中には独居や配偶者を喪失している者も多く、在宅生活が孤独感を助長するリスクがある。これらの点を踏まえると、老健で得られたQOLの改善を持続させるには、退所後の支援体制が極めて重要である。【結論】本研究により、老健入所は要介護高齢者の精神的健康や社会的役割、社会的ケアQOLを一時的に改善する可能性が示された。一方で、退所後にはこれらの指標が低下する傾向があり、QOLの維持には在宅支援体制の強化が不可欠である。今後は、老健利用者を対象とした大規模かつ対照群を含む研究を通じて、老健の実効性を検証し、well-beingの維持・向上を図るための介入策を明らかにする必要がある。