講演情報
[27-O-L001-07]社会的行動障害及び高度肥満を有する入居者への支援
埼玉県 ○堂元 汐里香, 福士 志信, 川羽田 快枝, 増田 妙子, 秋葉 徳孝, 佐々木 玲央 (介護老人保健施設桜田)
【はじめに】
高次脳機能障害の一つである感情コントロールの低下や、アルツハイマー型認知症に伴う易怒性の症状は、日常生活や社会生活に様々な支障を来す。今回、脳出血後の高次脳機能障害及びアルツハイマー型認知症による社会的行動障害に加え、さらに高度肥満を有する入居者に対し、多職種連携のもと減量・残存機能へのアプローチを継続した。その結果、BMI、ICFステージング、生活・認知機能尺度全てに改善が見られ、在宅復帰への意欲向上につなげられた事例を経験したので、その取り組みについて報告する。
【対象及び背景】
K様、女性、72歳、介護度4、身長155cm、体重88kg。夫と2人暮らし。50歳位迄中学の教師をしていたが、授業中に脳出血を起こし救急搬送となる。病院から退院後、自宅へ戻り特養のデイサービスに週5日通う中でロングショートも利用していた。キーパーソンの夫は前立腺癌で闘病中であり、また二人いる子供(姉妹)は遠距離の為、自宅介護への協力は得難い状況で、「自分の事は自分で出来る様になって欲しい。」との家族の希望と本人の「家に帰りたい。」という意向があり、リハビリ目的で当施設へ入居となった。
【入居時の評価・状況】
ICFステージング:45点、生活・認知機能尺度24点、DBD26点、MMSE27点、身長155cm、体重88kg(BMI36.6)。起居動作・移乗動作は支持物使用しての一部介助。移動は体型によりリクライニング型車椅子使用(自走一部介助)、膝・股関節に疼痛あり立位は5秒程度しか保持出来ず。入浴は寝台浴(チェアーイン浴不可)。意思疎通は可能だが、自発的に他者との関りを持つことが無い。また感情コントロールが出来ず易怒性の症状顕著。
【支援目標】
初期目標:減量による基本動作能力の向上
中間目標:起居動作、移乗動作、排泄動作の自立
最終目標:在宅復帰に向けての歩行の自立
【支援内容・経過】
支援を前提に、医師・リハ職・看護師・介護士・管理栄養士・本人によるカンファレンスを実施、支援計画を策定。1日のタイムスケジュールを本人を含め共有し、支援を実施。さらに一定期間での評価を繰り返し行った。主に行った支援としては、リハ職による短期集中リハ(週6日)介護士による簡易マシンを使用した有酸素運動(午前・午後)、医師・看護師・薬剤師及び外部専門病院との医療連携による薬剤調整、管理栄養士によるカロリー制限を主体とした食事療法である。
支援開始当初は、様々な場面において大声で激高する事もあったが、薬剤調整やその場に応じた丁寧な説明を行うことで精神面での安定が図れた。また、カロリー制限を主体とした食事療法、リハ職だけではなく介護職も個別にリハビリテーションを進めることで減量も進み、本人の運動意欲に向上が見られた。
【3か月後の評価・状況】
ICFステージング:55点、生活・認知機能尺度29点、DBD23点、MMSE29点、体重74.9kg(BMI31.2)。食事量の調整により体重が減少した事で動作の円滑性向上にもつながり、一部介助していた起居動作や移乗動作が見守りで行える様になった。また、内服調整や職員からの声掛けを多く行い、動作・行動に対して正のフィードバックを行う事で精神面での安定が図れて易怒性の症状は減少。それにより他利用者と交流する姿が増えた。また、減量により運動負荷が減ったことで、疼痛も改善、運動意欲も向上し、前腕支持型の歩行器(ラビット型歩行器)で連続歩行が50m程可能となった。
【まとめ】
社会的行動障害に加え、高度肥満という複数の課題を抱える入居者に対して、本人も交え多職種連携のもとで取り組みを行った。本人の「自分の足で歩いて自宅に帰りたい。」との強い思いを前提に、減量という数値目標の明確化が図れ、モチベーションにも繋がったと思われる。また、精神面の安定に重点を置く事で笑顔が多く見られる様になり、健康だった頃に聞いていたポップス音楽の鑑賞や、他者交流も自発的に行うようになった。このような多方向からの取り組みが、結果として、ADL・QOLの向上に結びついたと考えられる。今後、車椅子から歩行器移動へ変更していく事で、在宅復帰への更なる意欲と在宅での生活を実現する自信につなげる事が出来ると思われる。
【参考文献】
・石合純夫.高次脳機能障害学 第3版.医歯薬出版株式会社.2022.305P
・伊藤絵美.ケアする人も楽になる 認知行動療法入門 BOOK1.医学書院.2011.184P
・村本浄司.施設職員ABA支援入門:行動障害のある人へのアプローチ.学苑社.2020.264P
高次脳機能障害の一つである感情コントロールの低下や、アルツハイマー型認知症に伴う易怒性の症状は、日常生活や社会生活に様々な支障を来す。今回、脳出血後の高次脳機能障害及びアルツハイマー型認知症による社会的行動障害に加え、さらに高度肥満を有する入居者に対し、多職種連携のもと減量・残存機能へのアプローチを継続した。その結果、BMI、ICFステージング、生活・認知機能尺度全てに改善が見られ、在宅復帰への意欲向上につなげられた事例を経験したので、その取り組みについて報告する。
【対象及び背景】
K様、女性、72歳、介護度4、身長155cm、体重88kg。夫と2人暮らし。50歳位迄中学の教師をしていたが、授業中に脳出血を起こし救急搬送となる。病院から退院後、自宅へ戻り特養のデイサービスに週5日通う中でロングショートも利用していた。キーパーソンの夫は前立腺癌で闘病中であり、また二人いる子供(姉妹)は遠距離の為、自宅介護への協力は得難い状況で、「自分の事は自分で出来る様になって欲しい。」との家族の希望と本人の「家に帰りたい。」という意向があり、リハビリ目的で当施設へ入居となった。
【入居時の評価・状況】
ICFステージング:45点、生活・認知機能尺度24点、DBD26点、MMSE27点、身長155cm、体重88kg(BMI36.6)。起居動作・移乗動作は支持物使用しての一部介助。移動は体型によりリクライニング型車椅子使用(自走一部介助)、膝・股関節に疼痛あり立位は5秒程度しか保持出来ず。入浴は寝台浴(チェアーイン浴不可)。意思疎通は可能だが、自発的に他者との関りを持つことが無い。また感情コントロールが出来ず易怒性の症状顕著。
【支援目標】
初期目標:減量による基本動作能力の向上
中間目標:起居動作、移乗動作、排泄動作の自立
最終目標:在宅復帰に向けての歩行の自立
【支援内容・経過】
支援を前提に、医師・リハ職・看護師・介護士・管理栄養士・本人によるカンファレンスを実施、支援計画を策定。1日のタイムスケジュールを本人を含め共有し、支援を実施。さらに一定期間での評価を繰り返し行った。主に行った支援としては、リハ職による短期集中リハ(週6日)介護士による簡易マシンを使用した有酸素運動(午前・午後)、医師・看護師・薬剤師及び外部専門病院との医療連携による薬剤調整、管理栄養士によるカロリー制限を主体とした食事療法である。
支援開始当初は、様々な場面において大声で激高する事もあったが、薬剤調整やその場に応じた丁寧な説明を行うことで精神面での安定が図れた。また、カロリー制限を主体とした食事療法、リハ職だけではなく介護職も個別にリハビリテーションを進めることで減量も進み、本人の運動意欲に向上が見られた。
【3か月後の評価・状況】
ICFステージング:55点、生活・認知機能尺度29点、DBD23点、MMSE29点、体重74.9kg(BMI31.2)。食事量の調整により体重が減少した事で動作の円滑性向上にもつながり、一部介助していた起居動作や移乗動作が見守りで行える様になった。また、内服調整や職員からの声掛けを多く行い、動作・行動に対して正のフィードバックを行う事で精神面での安定が図れて易怒性の症状は減少。それにより他利用者と交流する姿が増えた。また、減量により運動負荷が減ったことで、疼痛も改善、運動意欲も向上し、前腕支持型の歩行器(ラビット型歩行器)で連続歩行が50m程可能となった。
【まとめ】
社会的行動障害に加え、高度肥満という複数の課題を抱える入居者に対して、本人も交え多職種連携のもとで取り組みを行った。本人の「自分の足で歩いて自宅に帰りたい。」との強い思いを前提に、減量という数値目標の明確化が図れ、モチベーションにも繋がったと思われる。また、精神面の安定に重点を置く事で笑顔が多く見られる様になり、健康だった頃に聞いていたポップス音楽の鑑賞や、他者交流も自発的に行うようになった。このような多方向からの取り組みが、結果として、ADL・QOLの向上に結びついたと考えられる。今後、車椅子から歩行器移動へ変更していく事で、在宅復帰への更なる意欲と在宅での生活を実現する自信につなげる事が出来ると思われる。
【参考文献】
・石合純夫.高次脳機能障害学 第3版.医歯薬出版株式会社.2022.305P
・伊藤絵美.ケアする人も楽になる 認知行動療法入門 BOOK1.医学書院.2011.184P
・村本浄司.施設職員ABA支援入門:行動障害のある人へのアプローチ.学苑社.2020.264P
