講演情報

[27-O-L002-07]夢発見から実現へ~リハビリテーションマネジメントを活かした挑戦~

福岡県 井上 壮一郎, 荒新 記美代 (介護老人保健施設 桜丘)
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【はじめに】
 今回、弊社では昨年よりリハビリテーションマネジメント加算(イ)を算定し、会議において利用者様のニーズについてチーム全体で検討し、目標を設定した上でプログラムを実施いたしました。また、弊社独自の取り組みである「夢プロジェクト」を通じて、利用者様の「競馬場に行って馬券を買いたい」という夢を抽出し、それを実現可能な目標として位置づけました。足りない動作能力に対してはリハビリにて可能な限り改善を図り、単なる機能訓練にとどまらず、利用者様の生活の質の向上と社会参加の促進を目的として支援を行いましたので、以下に報告いたします。

【症例紹介】
(一般的情報)
 性別:男性 年齢:70歳台 身長:162cm 体重: kg BMI: 
 介護度:要介護3 主訴:歩きが良くなりたい。 家族構成:妻との二人暮らし
(医学的情報)
 診断名:脳出血後後遺症 既往歴:左大腿骨頸部骨折、高血圧症 
 服薬状況:ロキソプロフェン、ハイゼット、デプロメール
 他部門からの情報:CMより頑張り屋の性格で、自主練過度に行い疲労骨折の既往あり。
 他部門からの情報:(OT)書字機能問題なし。用紙の固定は必要。立位での書字も可能。

【理学療法評価(初期)】
 関節可動域制限:左肘関節屈曲-5°、左足関節背屈-5° 
 筋力:股関節屈曲4/4 外転4/3 伸展4/3 
 感覚(表在):足底6 
 筋緊張(MAS):上腕二頭筋3 下腿三頭筋3 
 バランス:片脚立位保持不可、
 Br.stage:3-3-5
 歩行:サイドケイン使用 二動作歩行 麻痺側下肢のステップ位置が不安定 歩行時に腰部を支えないと心配

【問題点(ICF)】 
 別紙参照

【治療プログラム(初期)】
 短期目標:ステップ位置の安定化 
 長期目標:歩行距離の拡大
 →下肢筋力訓練、バランス練習、ステップ練習、歩行練習、荷重練習、自転車エルゴメーター

【考察】
 本症例は、70代の脳梗塞後遺症および左大腿骨頸部骨折既往のある利用者におけるリハビリテーション介入を通じて、「競馬場で馬券を購入したい」という夢の実現に向けた取り組みを行った事例である。本症例のリハビリテーションには、リハビリテーションマネジメント加算を適用し、個別のニーズと希望を会議で明確化したことが特徴である。利用者の性格は「頑張り屋」であり、自主練の過度実施による疲労骨折の過去が報告されていた。この点を考慮し、無理のないリハビリテーション計画を立案する必要があった。また、身体機能の制約として、麻痺側上下肢の筋力低下および関節可動域制限、感覚障害、歩行の不安定性が挙げられた。これらは、競馬場での移動や馬券購入時の書字動作に大きな影響を及ぼすと考えられた。

 弊社独自の「夢プロジェクト」に基づき、以下の介入を行った。
 1.下肢筋力訓練:麻痺側下肢を中心に筋力強化を図る訓練を実施。これにより、立位や歩行時の支持力が向上した。
 2.自転車エルゴメーターの導入:心肺機能を高めるとともに、持久力や耐久性を強化するため、自転車エルゴメーターを取り入れた。これにより、歩行時の疲労軽減が期待された。
 3.バランス練習および荷重練習:移動時の転倒リスクを低減するため、静的および動的バランス能力の向上を図った。
 4.振り出し(ステップ)練習および歩行練習:歩行時の振り出し動作を滑らかにするための練習を行い、歩行中のふらつきを減少させた。
 5.書字機能のサポート:作業療法士と連携し、書字能力を評価。用紙の固定を行うことで、座位・立位ともに書字が可能であることを確認。

 これらの介入の結果、下肢筋力訓練による筋力の向上、自転車エルゴメーターによる耐久性の向上が相乗的に作用し、歩行距離の大幅な拡大が実現した。具体的には、初期評価時には軽介助で50m程度だった歩行距離が、リハビリ介入後には独歩で150mにまで伸び、競馬場での移動に必要な身体能力を獲得した。「競馬場で馬券を購入したい」という目標は、利用者の個人的な希望に根ざしたものであり、リハビリテーションの動機付けを高める重要な役割を果たした。特に、筋力強化と耐久性向上が基盤となり、歩行能力の大幅な改善が達成された点は注目に値する。この成果は利用者のQOL(生活の質)向上に寄与しただけでなく、夢の実現を目指すリハビリテーションの具体的なプロセスとして、他の利用者やチームへの貴重な示唆を提供するものとなった。