講演情報
[27-O-L003-02]慢性疼痛改善 運動と過活動への心理的アプローチ
愛知県 ○小関 友馨, 道下 梨香, 門田 亜紀 (医療法人豊田山之手会高岡介護老人保健施設)
【はじめに】
今回、高齢で過活動傾向の利用者(以下、症例)が慢性疼痛と付き合っていくために心理的側面からのアプローチを行い改善された一症例を報告する。
当施設は愛知県豊田市にある2008年3月に開設した入所定員80名、一日型デイケア40名、短時間型デイケア各クール15名(3クール制)の介護老人保健施設である。短時間デイケアは、2024年4月からオープンし、「もう一度をかたちに、しっかり栄養、しっかり運動」をコンセプトに取り組んでいる。有酸素マシン5台、筋トレマシン(HUR)5台、レッドコード6台を設置し運動を行いながら、運動後には高タンパク質のおやつを提供し、毎月体組成を測定している。リハビリ職員、管理栄養士、介護職員が在籍し、ICTを活用したデータ収集を元に、可視化・数値化した目標設定とフィードバックを行いPDCAサイクルを回している。
【症例紹介】
80代後半、女性、要支援2、週2回(運動時間は50分)利用。
主訴:きれいな姿勢で歩きたい、痛み(右膝・腰や背中)を減らしたい。
既往歴:脳梗塞、高血圧症・骨粗鬆症・両変形性膝関節症・白内障(ope済)
生活背景:独居。近くに長男が住んでいる(週2回程訪問あり)。基本は独歩。転倒や躓きが多い。買い物時はカートを使用。自宅では畑仕事や庭いじり、裁縫や茶道など多趣味で活動的。
性格:とてもまじめであり、健康にいいと聞いた事・物は何でも取り入れられる傾向。頑張れば頑張るだけ良いと精神論で気力を保っている。
【評価】
身体面)握力:21.5/23.5kg、下肢MMT:4~5/4~5、NRS:右膝関節0~1・腰部5~7、TUG:13.06秒、5m歩行:通常6.08秒/12歩、最大5.25秒/12歩、片脚立位:7.35秒/5.78秒、FRT:22cm
ADL面)自立。1日の活動量はちょっとお出かけで3000歩、買い物は5000歩、1時間以上同姿勢で作業する事が多い。日常生活から過活動傾向であった。日課の中で痛みが出てから休憩し、薬を塗って対応していた。常に転ばないように意識しながら生活している。
食事は、自炊、健康への意識が高く日々の食事は栄養をしっかり考えたメニューを取り入れている。
心理面)PDAS:47点、PCS:22点(反芻12点、無力感5点、拡大視5点)、RDQ:7点、HADS:49点(不安22点、抑うつ27点)、MFES:102点。「痛みがあるからと言って休んでいられない。多少の痛みは歳だから仕方ないと医者からも言われたから、多少無理してでも動かないといけない」と発言あり。転ばないようにするためには、無理してでも動かないといけない。痛みがあっても動き続けることが良い事と思っている。
【目的・方法】
痛みを減らしたいという主訴に着目し、痛みに対してリハビリとポジティブな声掛けを下記のように実施した。
1)持久力や体力向上を目的に有酸素マシンを1~2種類。低負荷で各10分間行った。
2)筋力向上を目的に筋トレマシン5種類、それぞれを低負荷で100回。施行時、言語的・視覚的にフィードバックを行った。
3)柔軟性やバランスの向上・歩行リズムの獲得を目的に、レッドコードを10分間行った。
4)「痛みの恐怖―回避思考モデル」による悪循環からの脱却を目的に、ポジティブな声掛けを行った。(例:今まで1時間以上連続で作業していたものを20分作業したら1回休憩しましょう。休憩することが悪いことではありません。歩いていて、少し痛みや疲労感を覚え始めたら、1度止まり深呼吸をしましょう。)
5)栄養面においては指導的介入ではなく、日常の食事への意識を肯定的に評価しながら、効率的にたんぱく質を摂取する食事について話題づくりを積極的に行った。
【結果】
体組成計では、体重、筋肉量、脂肪量ともに維持で推移している。ポジティブな声掛けを行った事により、症例からは、「休憩をはさむことで、疲労感や痛みが少なくなった。痛みが少なくなったことで、きれいな姿勢で歩いている時間が長くなった気がする。痛みが出てもストレッチで楽になるからいいよ。無理するのが良くないことが分かった。歳だから無理しちゃいかん」と発言があり、過活動傾向であった時よりも少しずつ言動と行動に変化がみられてきている。
栄養面では、たんぱく質の摂取について食材や調理法をさらに工夫されるようになり、食事に関する相談も増えた。
【考察】
本症例では、現在の身体機能を維持するためには活動量を高く維持しなくてはいけないと考え、慢性腰痛を我慢して過ごしていた。心理面の評価結果より痛みの体験に破局的思考・痛み関連恐怖や過度の回避行動がみられた事から、疼痛の悪循環を形成していると考え、「痛みの恐怖回避思考モデル」を活用し腰痛との付き合い方を指導し過活動を抑えるよう声掛けを行ったことで改善に繋がった。負のループから抜け出す糸口がみつかり、意識・考え方や行動の改善に繋がったと考える。
食事に関してもサポート的に関わることで、栄養に対する高い意識と主体性が発揮され、さらに充実した自己管理のもと体組成の維持ができたと考える。
【最後に】
短時間デイケアという環境の中で、利用者の方々をより良くするには、身体機能面の評価だけではなく、心理面の評価を行い、関わっていくことが大切だということが分かった。
今回、高齢で過活動傾向の利用者(以下、症例)が慢性疼痛と付き合っていくために心理的側面からのアプローチを行い改善された一症例を報告する。
当施設は愛知県豊田市にある2008年3月に開設した入所定員80名、一日型デイケア40名、短時間型デイケア各クール15名(3クール制)の介護老人保健施設である。短時間デイケアは、2024年4月からオープンし、「もう一度をかたちに、しっかり栄養、しっかり運動」をコンセプトに取り組んでいる。有酸素マシン5台、筋トレマシン(HUR)5台、レッドコード6台を設置し運動を行いながら、運動後には高タンパク質のおやつを提供し、毎月体組成を測定している。リハビリ職員、管理栄養士、介護職員が在籍し、ICTを活用したデータ収集を元に、可視化・数値化した目標設定とフィードバックを行いPDCAサイクルを回している。
【症例紹介】
80代後半、女性、要支援2、週2回(運動時間は50分)利用。
主訴:きれいな姿勢で歩きたい、痛み(右膝・腰や背中)を減らしたい。
既往歴:脳梗塞、高血圧症・骨粗鬆症・両変形性膝関節症・白内障(ope済)
生活背景:独居。近くに長男が住んでいる(週2回程訪問あり)。基本は独歩。転倒や躓きが多い。買い物時はカートを使用。自宅では畑仕事や庭いじり、裁縫や茶道など多趣味で活動的。
性格:とてもまじめであり、健康にいいと聞いた事・物は何でも取り入れられる傾向。頑張れば頑張るだけ良いと精神論で気力を保っている。
【評価】
身体面)握力:21.5/23.5kg、下肢MMT:4~5/4~5、NRS:右膝関節0~1・腰部5~7、TUG:13.06秒、5m歩行:通常6.08秒/12歩、最大5.25秒/12歩、片脚立位:7.35秒/5.78秒、FRT:22cm
ADL面)自立。1日の活動量はちょっとお出かけで3000歩、買い物は5000歩、1時間以上同姿勢で作業する事が多い。日常生活から過活動傾向であった。日課の中で痛みが出てから休憩し、薬を塗って対応していた。常に転ばないように意識しながら生活している。
食事は、自炊、健康への意識が高く日々の食事は栄養をしっかり考えたメニューを取り入れている。
心理面)PDAS:47点、PCS:22点(反芻12点、無力感5点、拡大視5点)、RDQ:7点、HADS:49点(不安22点、抑うつ27点)、MFES:102点。「痛みがあるからと言って休んでいられない。多少の痛みは歳だから仕方ないと医者からも言われたから、多少無理してでも動かないといけない」と発言あり。転ばないようにするためには、無理してでも動かないといけない。痛みがあっても動き続けることが良い事と思っている。
【目的・方法】
痛みを減らしたいという主訴に着目し、痛みに対してリハビリとポジティブな声掛けを下記のように実施した。
1)持久力や体力向上を目的に有酸素マシンを1~2種類。低負荷で各10分間行った。
2)筋力向上を目的に筋トレマシン5種類、それぞれを低負荷で100回。施行時、言語的・視覚的にフィードバックを行った。
3)柔軟性やバランスの向上・歩行リズムの獲得を目的に、レッドコードを10分間行った。
4)「痛みの恐怖―回避思考モデル」による悪循環からの脱却を目的に、ポジティブな声掛けを行った。(例:今まで1時間以上連続で作業していたものを20分作業したら1回休憩しましょう。休憩することが悪いことではありません。歩いていて、少し痛みや疲労感を覚え始めたら、1度止まり深呼吸をしましょう。)
5)栄養面においては指導的介入ではなく、日常の食事への意識を肯定的に評価しながら、効率的にたんぱく質を摂取する食事について話題づくりを積極的に行った。
【結果】
体組成計では、体重、筋肉量、脂肪量ともに維持で推移している。ポジティブな声掛けを行った事により、症例からは、「休憩をはさむことで、疲労感や痛みが少なくなった。痛みが少なくなったことで、きれいな姿勢で歩いている時間が長くなった気がする。痛みが出てもストレッチで楽になるからいいよ。無理するのが良くないことが分かった。歳だから無理しちゃいかん」と発言があり、過活動傾向であった時よりも少しずつ言動と行動に変化がみられてきている。
栄養面では、たんぱく質の摂取について食材や調理法をさらに工夫されるようになり、食事に関する相談も増えた。
【考察】
本症例では、現在の身体機能を維持するためには活動量を高く維持しなくてはいけないと考え、慢性腰痛を我慢して過ごしていた。心理面の評価結果より痛みの体験に破局的思考・痛み関連恐怖や過度の回避行動がみられた事から、疼痛の悪循環を形成していると考え、「痛みの恐怖回避思考モデル」を活用し腰痛との付き合い方を指導し過活動を抑えるよう声掛けを行ったことで改善に繋がった。負のループから抜け出す糸口がみつかり、意識・考え方や行動の改善に繋がったと考える。
食事に関してもサポート的に関わることで、栄養に対する高い意識と主体性が発揮され、さらに充実した自己管理のもと体組成の維持ができたと考える。
【最後に】
短時間デイケアという環境の中で、利用者の方々をより良くするには、身体機能面の評価だけではなく、心理面の評価を行い、関わっていくことが大切だということが分かった。

