講演情報

[27-O-L003-03]がんばっているのに…なぜ体重が減らないのか?~体重管理に向けて多職種で取り組むべき支援とは~

千葉県 宮崎 彩 (医療法人徳洲会介護老人保健施設はさま徳洲苑)
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【はじめに】
 当苑デイケア利用者の70代女性は、2024年1月に自宅退院以降、体重が増加し続け、腹部や臀部の膨満や下肢の浮腫を認め、動作中の身体の重さも自覚されるようになった。8ヶ月で10kg以上増加しており、本人や家族への聴取から『活動量の少なさ』と『食事バランスの偏り』が要因と考えられ、体重軽減と浮腫改善を目的に支援を開始した。

【目的】
 体重増加や浮腫の原因を探りながら、リハビリ職員による運動面の指導、管理栄養士による食事面の指導を行い、家庭内での適切な生活習慣の再構築を図るとともに、受診時に医師へ報告・相談を促し、多職種連携を図りながら体重軽減と浮腫改善を目指した。

【方法】
(1)対象者:70代女性A氏,要介護1。身長156cm。既往に小脳出血、外陰癌があり鼠径部リンパ節を切除。2023年10月に脊柱管狭窄症で約3ヶ月入院。2024年1月よりデイケアを週3回利用開始。認知機能良好で、小脳症状による立位バランス不良はあるが、支持物を使用してトイレ・入浴を含むADLは自立。夫と2人暮らしで、食事の準備は夫が担っている。利用当初の体重は59.8kgであり、介入を開始した10月時点では70kgを超えていた。
(2)介入期間:2024年10月~2025年4月
(3)介入内容:
 1)運動面/活動量向上を目的に、歩行機会の拡大、自宅での自主トレーニングの実施、転倒リスクの低い家事を日常的に実施するよう指導。
 2)食事面/食事バランスの理解と改善を図るため、本人のスマートフォンで食事内容を撮影・記録。管理栄養士による定期的な評価と改善点を指導。
 3)セルフモニタリング/1)・2)で実施した内容や感想を記録する日記の作成を提案し、週1回職員と振り返りを実施。食事画像や月に1回施設内で測定する体重の記録は多職種間で共有できるようデータに纏め、リハビリテーションマネジメント会議時に当苑医師による助言をもらう。
 4)医療的関わり/2~3ヶ月ごとの定期受診時に、当苑の医師から受けた助言や体重管理等の取組み状況について、居宅介護支援専門員(以下、居宅CM)への報告を行うと同時に、かかりつけ医へ治療方針等を相談していただき、その結果を踏まえ必要な支援について関連職種間で再検討を実施。

【倫理的配慮】
 施設の倫理規定に基づき、体重経過の記録・発表について本人の同意を取得し、個人が特定されないよう配慮した。

【結果】
(1)運動面:指導前は臥位・座位での軽運動とADL活動程度に留まっていたが、立位動作を含む自主リハビリや家事実施機会が増え、活動量は向上。
(2)食事面:2024年10月時点で体重70.1kg(BMI28.8)。当初は揚げ物の頻回摂取・主食の二重摂取・漬物や煮物を制限なく摂取しており、カロリー過多が判明。配膳方法や食材バランスに関する指導を行った結果、摂取カロリーは概ね適正化したが、体重は増加し続け、指導開始2ヶ月後の体重は71.7kgであった。漬物の過剰摂取や昼食の欠食など新たな問題点が判明し、再度管理栄養士による指導を実施。以降は食事内容も改善し、指導は終了したが最終的に体重は指導前より5.1kg増え、75.2kg(BMI30.2)であり、浮腫の改善もみられなかった。
(3)医療的関わり:体重や浮腫について本人からかかりつけ医へ報告し、血液・尿検査を受けたが「異常なし」と診断。利尿剤が増量となり排尿回数の増加はあったが、改善には至らなかった。また取組みについて居宅CMに都度報告し、必要な受診等の促しを提案したが取組み期間中に具体的な返答や関わりはなかった。
 なお、本人・家族からは「指導により家族間で声を掛け合うようになった」、「食事量は減ったが空腹感はなく過ごせている」など、生活習慣や意識の変化が見られ、指導介入終了後も取組みは継続されている。

【考察】
 A氏の体重管理支援は、運動・食事の行動療法を主体とし、その経過を可視化することで行動変容を促したものである。松本1)は、行動療法とセルフモニタリングの継続が減量成功と強く関連すると述べているが、A氏は体重や浮腫の改善に至らなかった。
 この要因として、行動療法の質的不足と医療的関与の不十分さの2つがあると考えた。吉松2)は、減量への取組みとして体重測定は1日4回実施し、毎朝前日と比べての記録・振り返りを行うことが効果的とするが、A氏の場合、体重測定は施設内で月1回、記録の確認も週1回に留まっており、支援としては十分でなかったと考えられる。また週3回の利用では毎日の詳細なモニタリングや振り返りは難しく、今後は自宅での記録体制や支援方法の工夫が必要と考えられる。
 さらに、運動・食事面は改善したにもかかわらず体重増加が続いた背景には、医療的な精査が不十分だった点も大きいのではないかと考える。益崎ら3)によると、生活習慣の乱れなどによる単純性肥満と内分泌障害などの症候性肥満を鑑別し、後者の場合は原疾患に対する治療をしていくことが優先とされ、疑いがある場合は内分泌的な精査が望ましいとされている。A氏の場合は自己申告による医師への病状報告のみにとどまり、居宅CMによる協力も十分に得られなかったことで、これまでの取組みや経過について、かかりつけ医へ正確に伝える体制が不十分であったことも、適切な医療的対応(検査や診断)に結びつかなかった一因と思われる。
 今後は、居宅CMも含む関係職種間で目的やその方法・経過等について詳細に共有できるような連携体制を整備することで、より的確で早期の医療的な介入に繋げていくことが出来るのではと考える。

【謝辞】
 本取り組みにご協力いただいたA氏およびご家族様、ならびに関係職種の皆様に心より感謝申し上げます。

【引用文献】
 1)松本有紀子:肥満症の行動療法,日本医科大学医学会雑誌,20(4):271,2024
 2)吉松博信:肥満症の行動療法,日本内科学会雑誌,100:925,2011
 3)益崎裕章他:肥満を鑑別する検査,Life Style Medicine,4:68,2010