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[27-O-L003-04]生活期における下肢装具のフォローアップの実態津市・鈴鹿市のケアマネジャー対象のアンケート調査

三重県 松森 大起, 東 憲太郎, 工藤 美穂, 田中 利尚, 栗山 翼 (医療法人緑の風 介護老人保健施設いこいの森)
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【はじめに】
 脳卒中後片麻痺患者に対するリハビリテーション(以下、リハ)において、下肢装具等を用いた装具療法は重要な選択肢の一つである。脳卒中治療ガイドライン2021(改訂2023)においても、高いエビデンスが認定されている。
 しかし近年、下肢装具を医療機関等で処方・製作後、適切なフォローアップが行われず、不適合状態なまま使用し続けるケースが多々あり、日常生活動作能力の低下を招く場合もある。このように、生活期の下肢装具使用者に関するフォローアップ体制の不備が指摘され、装具難民問題と呼ばれており、その実態は地域によって異なり、対応に難渋するのが現状である。
【対象と方法】
 2025年1月時点で、当施設の通所リハ利用者を担当しているケアマネジャー(以下、CM)が在籍している居宅介護支援事業所33施設(津市12、鈴鹿市21の事業所、)のCM117人を対象に、アンケート調査を実施した。アンケートは無記名式で、事業所ごとに配布した。返送は郵送とし、期限を到着後1ヶ月とした。
 アンケート調査内容は、CMの基本情報、ケアプラン担当の在宅生活者と下肢装具の使用人数、下肢装具使用者の下肢装具の種類、下肢装具のフォローアップの場所・相談窓口、下肢装具のフォローアップシステム、下肢装具のフォローアップの困難さ・必要性、とした。得られたデータは単純集計を実施した。
【結果】
アンケート回収率は71%(117部配布の内、83部返送)で、回答者は83名であった。
1.CMの基本情報
経験年数は10.3±6.2年、基礎資格は介護福祉士が65名と最も多かった。また、下肢装具使用の在宅生活者担当のCMは61名であった。
2.ケアプラン担当の在宅生活者と下肢装具の使用人数
在宅生活者のケアプラン担当人数は平均37.5±9.8名、合計3071名であり、そのうち、下肢装具使用の人数は106名で、3.4%であった。
3.下肢装具使用者の下肢装具の種類106名の内、下肢装具使用者の下肢装具の種類(複数回答可)は、Remodeled Adjustable Posterior Strut(以下、RAPS)58個、シューホーン37個、オルトップ16個、長下肢装具8個、不明8個の計127個であった。
以下、4-1~5-1の質問項目は下肢装具使用の在宅生活者担当のCM61名を、5-2~6-2の質問項目はCM83名を対象とする。
4.下肢装具のフォローアップの場所・相談窓口
4-1.下肢装具の不具合の確認をどこかで定期的に行っているかは、行っている51%、行っていない15%、把握していない34%であった。
4-2.4-1で行っているを選択した51%の内、どこで行っているか(複数回答可)は、装具を製作した病院18件、介護保険系の施設10件、義肢装具士(以下、PO)との直接のやりとり7件、装具を作成した以外の病院1件であった。
4-3.下肢装具の不具合を認めた場合、誰に相談を行うか(複数回答可)は、理学療法士(以下、PT)38名、医師25名、作業療法士(以下、OT)11名といった専門職が大半であった一方で、看護師4名、CM5名、保健師2名、相談員、介護員1名であった。
4-4.下肢装具の不具合を認めた場合、誰が修理依頼を病院やPOに対して行うか(複数回答可)は、本人・家族51名、CM20名、PT12名、OT5名、医師2名であった。
5.下肢装具のフォローアップシステム
5-1.ケアプランに下肢装具の確認についてケアプランを載せるかは、全く載せない64%、あまり載せない25%、やや載せる8%、必ず載せる3%であった。
5-2.下肢装具を管理するための書類等(下肢装具ノート、カード等)を見かけたことがあるかは、ない97%、ある3%であった。
6.下肢装具のフォローアップの困難さ・必要性
6.1.下肢装具の不具合を認めた場合、対応に困ることがあるかは、ある56%、あまりない21%、とてもある13%で、ない10%であった。
6-2.下肢装具のフォローアップの必要性はあると感じるかは、感じる72%、とても感じる24%、感じない3%、あまり感じない1%であった。
【考察】
 下肢装具の不具合を認めた場合の対応に困ることがあるCMは約7割で、下肢装具のフォローアップの必要性に関して必要性があると感じているCMは約9割に達した。このことから、下肢装具のフォローアップに関して、津市、鈴鹿市の医療・介護のフォローアップシステムに何らかの問題点があると考える。
 下肢装具の不具合の確認を定期的に行っていない、把握していないと回答したCMは合わせて約半数であった。また、ケアプランへの下肢装具確認の未記載や、下肢装具ノート等の未使用の回答が約9割であった。このことから、定期的なチェック機能が不十分であると考える。
 下肢装具の不具合を認めた場合の相談窓口は、リハ専門職が大半であった一方で、それ以外の職種が請け負い、修理依頼においては、本人・家族、次いでCMが行っていた。このことから、相談窓口対応はリハ専門職以外の職種、修理依頼は本人・家族、CMへの負担が大きくなり、それ自体が上手くいっていない可能性があると考える。
 下肢装具の種類はRAPSが最多であった。これは藤崎らの報告でも明らかのように、三重県の地域特性と考える。ただし、RAPSが高性能な反面、取り扱いが複雑で、比較的新しい製品であり、全国的に普及していないことから、他の一般的な下肢装具に比べ、同程度のフォローアップシステムに組み込むことが困難な可能性がある。
【結論と対策】
 今回のアンケート調査で、津市、鈴鹿市においても生活期の下肢装具のフォローアップ体制に不備があり、装具難民問題が生じていることが分かった。特に、下肢装具の修理依頼時に使用者本人・家族への負担が大きいことが分かり、地域として、この方々を支えるフォローアップシステム構築が必要である。
 フォローアップシステム構築を進めるには、医療及び介護分野での意識改革、情報共有、それに基づく効率的な連携が重要である。今回その一歩として、中勢地区医師会主催の研修会において、今回のアンケート結果と、装具難民問題が生じていることを紹介した。