講演情報
[27-O-L003-06]復職困難事例における目標再設定と外出支援SNSを活用した動機付け
熊本県 ○當寺ケ盛 孟1, 西 聡太1, 大久保 智明1, 野尻 晋一1, 時里 香1 (1.介護老人保健施設清雅苑, 2.通所リハビリテーションセンター清雅苑)
【はじめに】
生活期におけるリハビリテーションでは心身機能の向上のみならずInstrumental Activities of Daily Living(以下、IADL)の向上やQuality of Life(以下、QOL)の向上を目標とした介入が求められる。今回、通所リハビリテーション(以下、通所リハ)において心身機能の向上に加えSNSを用いた動機付けにより活動範囲が拡大した事例を報告する。
【倫理的配慮】
本事例には事例報告の趣旨を伝え報告許可を書面にて得た。
【事例紹介】
50歳代女性、脳出血発症後、右片麻痺を呈し、発症後5か月時より当苑の利用を開始した。退院時Brunnstrom stageはV-V-V、Functional Independence Measureは117点、障害高齢者自立度はA2、認知症高齢者自立度は自立であった。本事例は発症前、県外にて独居で生活し、銀行員として勤務していた。流行のものに興味が向きやすく、初めてのことには不安を感じやすい性格である。通所リハ利用開始時より復職希望があり復職を目標としていた。
【経過】
通所リハ利用開始後6か月経過時、歩行能力の向上を目的とし歩行練習を行っていた。利用日でない日は父親と近隣のショッピングモール(自宅より約10km)へ外出しウィンドウショッピングを行っていた。利用開始後6か月から1年時より本人の生活における優先度が復職から日々の充実やQOLの向上へと変化した。そのため近々での復職は目標から外れ現在の生活を充実させていく方向へと目標の見直しを行った。そして友人と市内(約10km)でのランチや友人宅への外出を達成した。利用開始から1年以降、外来の自動車運転機能評価にて注意障害の影響が継続しており現時点での運転の再開が困難と思われたため運転再開練習を中止した。しかし外出に対する意欲は良好で「日用品の買い物はインターネットでもできるが景色やその土地のものは実際に見に行きたい。」と発言もみられた。そこで利用者の興味を引き出し、外出への動機付けを目的に、SNS(Instagramやブログなど)を活用して視覚的に魅力のある観光地やグルメ情報を本人の興味関心に合わせ提供した。その後友人と遠方へ外出したいとの希望があり目標とした。友人との外出を希望される一方、安全に外出できるか、友人に迷惑をかけないかなどの不安も訴えていた。そこで提供した情報から興味のある外出先を選んでもらい、所要時間や周辺環境、レビュー等を一緒に確認した。また、安全に外出できるよう、想定される動作、歩行距離や時間が安全に遂行可能かどうかを評価し不安の軽減に努めた。通所リハ利用時に検討した内容はメッセンジャーアプリで友人と共有してもらい、計画を立てた。その結果、通所リハ開始から1年6か月後に友人との県外外出が実現した。
【結果】
通所リハ利用開始時FAI(Frenchay Activities Index以下FAI)は9点、LSA(Life Space Assessment以下LSA)は38点。利用開始後11か月時、友人と市内へ外出可能となった際FAIは17点、LSAは48点。利用開始後1年6か月経過時、友人と県外(約100km)へ外出可能となった際FAIは23点、LSAは48点。FAIは食事、掃除、洗濯、旅行、庭仕事の項目で改善した。11か月時と1年6か月時を比較し得点には反映されていないがLSAは補助具や特別な器具の使用の項目で改善し、生活範囲も町外から県外へ拡大した。
【考察】
今回、本事例は通所リハにおいてSNSを活用することで、外出への動機付けとなり友人との県外外出が可能となった。
SNSの活用により、最新の情報や未知の情報を知ることができ、動画やマップ機能により視覚的なイメージを得やすい特徴がある。このことが、外出意欲を向上させ、事例の具体的な目標を引き出すことにつながった。また、遠方へ外出することへの不安に対し、道中の所要時間や経路、休憩のポイントなどを事前に把握し、事例の身体機能に合わせた計画を立てることができた。このように、SNSによる情報と身体機能に合わせた計画を提案することで事例の外出意欲を低下させず不安の解消につながったと考える。
鈴川らは「外出行動には実用的な歩行機能が必要であり、より複雑な状況への適応を要求される町外への外出には階段昇降が関与する」と述べている。また、新開らは「移動能力が高くても社会的ネットワークや親しい友人の存在が縮小すると閉じこもりになることが明らかにされている」と述べている。本事例は、外出に必要な身体機能が整っており、かつ親しい友人の存在が外出に対する心理的な抵抗を下げた要因であると考える。また、発症後友人と外出するまでに要した期間が短く、社会的ネットワークから疎遠になる前に行動できたことも大きな要因と考える。
さらに、SNSの活用による介入後にはFAIの向上も見られている。内発的な動機付けには、自己効力感を高める効果があるといわれている。「友人との遠方への外出」という目標設定により、自己効力感の向上やIADLを含めた自宅内の行動の変化を促したのだと考える。
以上のように、視覚的な情報を得やすいSNSの特徴を生かして外出への動機付けや不安の解消につなげることで、自己効力感やQOL、相乗効果としてIADLの向上にも寄与することが示唆された。
今後の目標として「友人と県外へ宿泊したい。」との発言があり今後も継続して支援を行っていく予定である。また、「職場へ訪問したい。」との発言もあり、その際は公共交通機関を使っての移動が必要となるため、課題を整理し目標達成に向け支援を行っていく。
将来Society5.0として情報技術を活用し、個々のニーズに応じた支援を提供することで、身体的・地理的制約を超えた社会参加が可能になるとされている。デジタル技術とリハビリテーションの融合は、多様な価値観を尊重した持続可能な支援体制の構築に寄与する。そのため、利用者一人ひとりの変化や希望に即して情報を継続的に更新し、最適な技術活用を図っていくことが求められる。
生活期におけるリハビリテーションでは心身機能の向上のみならずInstrumental Activities of Daily Living(以下、IADL)の向上やQuality of Life(以下、QOL)の向上を目標とした介入が求められる。今回、通所リハビリテーション(以下、通所リハ)において心身機能の向上に加えSNSを用いた動機付けにより活動範囲が拡大した事例を報告する。
【倫理的配慮】
本事例には事例報告の趣旨を伝え報告許可を書面にて得た。
【事例紹介】
50歳代女性、脳出血発症後、右片麻痺を呈し、発症後5か月時より当苑の利用を開始した。退院時Brunnstrom stageはV-V-V、Functional Independence Measureは117点、障害高齢者自立度はA2、認知症高齢者自立度は自立であった。本事例は発症前、県外にて独居で生活し、銀行員として勤務していた。流行のものに興味が向きやすく、初めてのことには不安を感じやすい性格である。通所リハ利用開始時より復職希望があり復職を目標としていた。
【経過】
通所リハ利用開始後6か月経過時、歩行能力の向上を目的とし歩行練習を行っていた。利用日でない日は父親と近隣のショッピングモール(自宅より約10km)へ外出しウィンドウショッピングを行っていた。利用開始後6か月から1年時より本人の生活における優先度が復職から日々の充実やQOLの向上へと変化した。そのため近々での復職は目標から外れ現在の生活を充実させていく方向へと目標の見直しを行った。そして友人と市内(約10km)でのランチや友人宅への外出を達成した。利用開始から1年以降、外来の自動車運転機能評価にて注意障害の影響が継続しており現時点での運転の再開が困難と思われたため運転再開練習を中止した。しかし外出に対する意欲は良好で「日用品の買い物はインターネットでもできるが景色やその土地のものは実際に見に行きたい。」と発言もみられた。そこで利用者の興味を引き出し、外出への動機付けを目的に、SNS(Instagramやブログなど)を活用して視覚的に魅力のある観光地やグルメ情報を本人の興味関心に合わせ提供した。その後友人と遠方へ外出したいとの希望があり目標とした。友人との外出を希望される一方、安全に外出できるか、友人に迷惑をかけないかなどの不安も訴えていた。そこで提供した情報から興味のある外出先を選んでもらい、所要時間や周辺環境、レビュー等を一緒に確認した。また、安全に外出できるよう、想定される動作、歩行距離や時間が安全に遂行可能かどうかを評価し不安の軽減に努めた。通所リハ利用時に検討した内容はメッセンジャーアプリで友人と共有してもらい、計画を立てた。その結果、通所リハ開始から1年6か月後に友人との県外外出が実現した。
【結果】
通所リハ利用開始時FAI(Frenchay Activities Index以下FAI)は9点、LSA(Life Space Assessment以下LSA)は38点。利用開始後11か月時、友人と市内へ外出可能となった際FAIは17点、LSAは48点。利用開始後1年6か月経過時、友人と県外(約100km)へ外出可能となった際FAIは23点、LSAは48点。FAIは食事、掃除、洗濯、旅行、庭仕事の項目で改善した。11か月時と1年6か月時を比較し得点には反映されていないがLSAは補助具や特別な器具の使用の項目で改善し、生活範囲も町外から県外へ拡大した。
【考察】
今回、本事例は通所リハにおいてSNSを活用することで、外出への動機付けとなり友人との県外外出が可能となった。
SNSの活用により、最新の情報や未知の情報を知ることができ、動画やマップ機能により視覚的なイメージを得やすい特徴がある。このことが、外出意欲を向上させ、事例の具体的な目標を引き出すことにつながった。また、遠方へ外出することへの不安に対し、道中の所要時間や経路、休憩のポイントなどを事前に把握し、事例の身体機能に合わせた計画を立てることができた。このように、SNSによる情報と身体機能に合わせた計画を提案することで事例の外出意欲を低下させず不安の解消につながったと考える。
鈴川らは「外出行動には実用的な歩行機能が必要であり、より複雑な状況への適応を要求される町外への外出には階段昇降が関与する」と述べている。また、新開らは「移動能力が高くても社会的ネットワークや親しい友人の存在が縮小すると閉じこもりになることが明らかにされている」と述べている。本事例は、外出に必要な身体機能が整っており、かつ親しい友人の存在が外出に対する心理的な抵抗を下げた要因であると考える。また、発症後友人と外出するまでに要した期間が短く、社会的ネットワークから疎遠になる前に行動できたことも大きな要因と考える。
さらに、SNSの活用による介入後にはFAIの向上も見られている。内発的な動機付けには、自己効力感を高める効果があるといわれている。「友人との遠方への外出」という目標設定により、自己効力感の向上やIADLを含めた自宅内の行動の変化を促したのだと考える。
以上のように、視覚的な情報を得やすいSNSの特徴を生かして外出への動機付けや不安の解消につなげることで、自己効力感やQOL、相乗効果としてIADLの向上にも寄与することが示唆された。
今後の目標として「友人と県外へ宿泊したい。」との発言があり今後も継続して支援を行っていく予定である。また、「職場へ訪問したい。」との発言もあり、その際は公共交通機関を使っての移動が必要となるため、課題を整理し目標達成に向け支援を行っていく。
将来Society5.0として情報技術を活用し、個々のニーズに応じた支援を提供することで、身体的・地理的制約を超えた社会参加が可能になるとされている。デジタル技術とリハビリテーションの融合は、多様な価値観を尊重した持続可能な支援体制の構築に寄与する。そのため、利用者一人ひとりの変化や希望に即して情報を継続的に更新し、最適な技術活用を図っていくことが求められる。
