講演情報

[27-O-L004-01]当施設の個別リハビリが在宅復帰に与える影響時間数の違いが在宅復帰に影響を与えるかの検証

埼玉県 宇田川 亮1, 二宮 省悟2, 植月 彩乃1 (1.医療法人社団東光会介護老人保健施設グリーンビレッジ蕨, 2.東京国際大学)
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【はじめに】
2018年の介護保険法の改正に伴い、介護老人保健施設(以下、老健)は区分が5段階に細分化され、在宅復帰・在宅療養支援等指標の中で、在宅復帰率や入退所時の訪問指導がアウトカムとして求められるようになった。リハビリテーション(以下、リハ)専門職は、医師の医学的管理のもと他職種と連携し、短期集中リハ加算や認知症短期集中リハ加算、そして週3回以上の個別リハを提供することで、入所者の心身機能の維持・改善、日常生活動作(以下、ADL)や生活環境、生活の質の改善を図り、在宅復帰・在宅生活支援に貢献することが重要である。
老健からの在宅復帰のためには、移動・歩行支援、ADL支援が重要である(中村,2016)と述べている。
老健における個別リハの提供時間は20分/回以上、週3回以上と制約があるが、どの程度の時間数を行えば在宅復帰に有効かは明らかになっていない。
当施設は「超強化型」を取得し、入所者や家族が希望する場合に在宅復帰を目指している。個別リハのスタッフの業務量を明確にするため、管理上、1人あたりの個別リハを20分または40分/回に設定している。この選択は、若年層、在宅復帰を希望する方、症状が重度で介護度が高く介護に支障がある場合に40分/回で介助量軽減を図れるよう科内で共有されている。ただし、施設ベッドの稼働状況や業務状況に依存するため、各スタッフの判断に委ねられている。
【目的】
本研究では、当施設から在宅復帰した入所者の個別リハを実施した時間が在宅復帰に影響するかどうかを確認することを目的とした。
【方法】
対象者は2023年10月から2025年3月に入所し、自宅又は特別養護老人ホーム(以下、特養)へ退所した者とした。レジストリデータを用い、分析に必要なデータとして年齢,性別,疾患名,介護度、入所から3か月間の個別リハの時間数(短期集中リハ加算・認知症短期集中リハ加算の対象期間)、3か月経過後の個別リハの時間数、認知症短期集中リハの有無を調査した。
分析方法については、特養へ転院した群(A群)と自宅退所した群(B群)を対象に、機能的アウトカムの群間比較を行った。「短期集中」、「3か月超過」の2パターンに分類し、それぞれにおいてA群・B群を比較した。各群のアウトカム値についてShapiro-Wilk検定により正規性を確認し、正規性が認められない場合はノンパラメトリック手法としてMann-Whitney U検定を用いた。有意水準は5%とした。加えて、中央値と四分位範囲(IQR)を記述統計として算出し、群間差の傾向を視覚的に示すために箱ひげ図を作成し分析した。
【結果】
対象者は62名(83.2±8.4歳)、男性20名、女性42名、疾患の内訳として、脳血管18名、運動器19名、その他25名であった。認知症短期集中リハ加算の対象者は全体で39名であった。
「短期集中」の分析結果では、A群(n=23)とB群(n=39)の群間比較を行ったところ、B群が有意に高値を示した(U=243.5, p=0.0029)。記述統計として、A群の中央値は29.04(IQR: 22.71-35.89)、B群は36.53(IQR: 33.13-42.76)であった。箱ひげ図においても、B群の値が全体的に高く分布し、中央値・範囲ともにA群より上回る傾向が示された。
「3か月超過」の分析結果では、A群(n=22)およびB群(n=36)について群間比較を行ったところ、B群が有意に高値を示した(U=217.5, p=0.0043)。A群の中央値は23.0(IQR: 20.0-26.5)、B群の中央値は31.3(IQR: 22.8-38.7)であった。箱ひげ図においても、B群の方が中央値およびばらつきが大きい傾向が確認された。
【考察】
「短期集中」「3か月超過」の2パターンにおいて、B群(自宅退所群)のアウトカムが有意に高い結果が得られた。これは、個別リハにかける時間を増やしたことが、日常生活動作に必要な介助量を軽減させ、入所者の在宅復帰に影響していることを示唆する。老健からの在宅復帰は、歩行を見守り又は一部介助で出来ることが在宅復帰に繋がる(加賀山、2022)と述べており、動作の介助量軽減が在宅復帰と関連することが考えられる。この結果は、個別リハの提供時間が入所者のADL能力向上に寄与し、それが介助量の軽減、ひいては在宅復帰の可能性を高めるという我々の仮説を強く支持するものである 。特に、入所初期の「短期集中」期間における集中的な個別リハが、その後の在宅復帰に向けた基盤作りに極めて重要で、十分な時間が必要であることを示している 。
一方、「3か月超過」期間においても、B群が有意に高値を示したことは、短期集中期間以降も継続的な個別リハが在宅復帰の維持・促進に貢献することを示唆している 。これにより、退所後の生活を見据えたADLの維持・向上、そして生活環境への適応訓練が、在宅生活に繋がる可能性が考えられる 。当施設のように「超強化型」として在宅復帰を目指す施設にとって、リハ提供時間の柔軟な設定と、入所者の状態に応じた最適なリハ計画の策定が、在宅復帰率向上に不可欠であることが推察された。
今回の研究では個別リハの時間数と在宅復帰に焦点を当てたが、ADLとの関係も大きく影響すると考えられる 。例えば、時間数の違いがADLにどのように寄与するかを今後の研究で深掘りすることで、より個別化されたプログラムの開発に繋がると考える。
【倫理的配慮について】
本研究は所属施設の倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:2025-3)。