講演情報

[27-O-L004-03]通所リハビリテーション中の座位行動とその中断の実態

大阪府 高尾 耕平1, 石垣 智也2, 平田 康介3, 知花 朝恒3, 村上 達典1, 小出 純子1 (1.社会医療法人慈薫会 介護老人保健施設大阪緑ヶ丘, 2.畿央大学 健康科学部 理学療法学科, 3.川口脳神経外科リハビリクリニック リハビリテーション科, 4.大阪河﨑リハビリテーション大学 理学療法学専攻)
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【背景】近年、高齢者の身体活動量を増やすことが健康寿命の延伸やフレイル予防に寄与することは、多数の前向き研究で示されている。世界保健機関(WHO)は、2020年に「身体活動・座位行動のガイドライン」を公表し、定期的な身体活動は、心血管疾患、2型糖尿病、特定のがんなどの非感染性疾患の予防と管理のための重要な要因であることを示している。また、身体活動は認知機能低下やうつ病・不安の症状の予防、健康的な体重の維持、幸福感の向上にも有益であると報告している。同ガイドラインでは、65歳以上の高齢者や、慢性疾患を有する成人および高齢者、障害のある成人に対して、1)中強度(3.0~5.9METs)の有酸素性の身体活動を少なくとも150~300分/週、または高強度(6.0METs以上)の有酸素性の身体活動を少なくとも75~150分/週、または中強度と高強度の身体活動の組み合わせによる同等の身体活動を行うこと、2)座位行動(1.5METs以下の活動)の時間を減らし、座位時間を身体活動に置き換えることの2つを推奨している。また、60分以上持続する座位行動(以下、座位Bout)や、座位行動を立位や歩行などの身体活動により中断すること(以下、Break)が、身体機能に関連することも報告されており、これらに着目することは重要である。一般的に高齢者は座位時間が延長しやすく、特に心身に障害を持つ要介護または要支援認定者は、その傾向が強くなると言える。通所リハビリテーション(以下、通所リハ)はその役割の一つとして、自宅では不活発な生活になりがちな利用者に対し、利用時間中は活動的に過ごすように働きかけることが挙げられる。ただ、利用時間が7~8時間といった長時間の利用であれば座位行動の機会もあり、座位Boutの増加が懸念されるが、通所リハ利用中の座位行動の実態は明らかになっていない。そこで本研究の目的は、通所リハ利用中の座位行動を調査し、60分以上座位BoutとBreakとの関連および利用者特徴を検討することとした。
【方法】対象は当事業所の利用者84名とし、包含基準はデイルーム内の移動手段が歩行補助具の有無を問わず、自立または一部介助レベルの歩行が可能な者とした。基本属性として年齢、性別、要介護度を調査した。座位行動の測定には、加速度センサを内蔵した身体活動量計(Active style PRO HJA-750C、オムロンヘルスケア社)を使用した。来所時から退所時まで腰部に身体活動量計を装着し、入浴時間を除く10時から15時までの5時間分のデータを解析対象とした。得られたデータから、座位行動時間(1.5METs以下)、座位行動時間の計測時間に占める割合(以下、座位行動割合)、60分以上連続した座位行動の累積時間(以下、60分以上座位Bout時間)、座位行動の中断回数(以下、Break回数)、を算出した。さらに、60分以上座位Boutが生じずBreak回数が高頻度であった対象者の特性について情報収集を行った。なお、当事業所の通所リハは個別リハ20分と、マシントレーニング6種各10分で構成されるサーキットトレーニングを基本としている。統計解析は60分以上座位Bout時間とBreak回数との関連を、正規性の確認後にSpearmanの順位相関係数を用いて検討し、この関連における個々の特徴について考察を行った。
【結果】包含基準を満たした29名を分析対象とした。基本属性は年齢85.0[80.0-89.5]歳、女性21名、要介護度は要支援1:2名、要支援2:3名、要介護1:8名、要介護2:14名、要介護3:2名であった。歩行補助具の使用状況は、歩行器:6名、四脚杖:1名、一本杖:15名、補助具なし:7名であった。デイルーム内での歩行自立度は、自立:9名、見守り:11名、一部介助:9名であった。認知症の診断を受けている者は7名であった。座位行動に関する各指標の中央値[四分位範囲]は、座位行動時間241[227-257]分、座位行動割合80.1[75.4-85.4]%、60分以上座位Bout時間96[0-169]分、Break回数14[11-21]回であった。Break回数の度数分布は0~9回:3名、10~19回:19名、20~29回:4名、30~39回:3名であり、いずれの区分においても歩行自立度が自立、見守り、一部介助の者が混在していた。また、60分以上座位Bout時間とBreak回数との間には有意な負の相関が認められた(ρ= -0.64, p<0.05)。このなかで60分以上座位Boutが生じず、かつBreak回数が20回以上であった者は7名であり、その特徴は1)他利用者との交流に伴う自発的な移動が多い者:2名、2)リハ中の自主トレーニングを積極的に実施している者:2名、3)頻尿によるトイレへの移動が多い者:3名、4)認知機能低下に伴い立ち上がりが多い者:2名であった。なお、これらの分類には重複があり、複数の特徴を有する者も含まれていた。
【考察】通所リハ利用時間中の座位行動時間の割合は約8割と高く、Break回数の多寡が長時間連続した座位行動である60分以上座位Bout時間(座りっぱなしの状態)と関連していた。つまり、座位行動の中断を意味するBreakを頻回に行えれば、座位行動時間は多くとも座りっぱなしの弊害を緩和できる可能性がある。そして、このBreak回数が高頻度であった者は、他利用者との交流や自主トレーニングに伴う自発的な移動が多い特徴が観察されたことから、Breakを自然発生させるサービス内容や環境整備の必要性が示唆された。具体的には、デイルーム内に自発的な移動を誘発するようなガーデニングや展示スペースを配置する、立位・歩行を伴う自主練習スペースやマシンをデイルームにも設置する、配膳・片付け・清掃など役割的業務を利用者に委ねるといった関わりが有効と推察される。一方、頻尿や認知機能の低下に由来する者も存在するため、座席をトイレの近くに配置し身体的および心理的負担を緩和することや、活動機会の増加に伴う転倒リスクや、スタッフの業務負担の増大への配慮も必要である。そのため、リハ専門職はリスク評価を行い、環境整備を看護師や介護職員と協働して検討することが求められる。