講演情報

[27-O-L004-04]認知症を呈した訪問リハビリ利用者に対する介入工夫

北海道 工藤 貢1, 白木 誠一1, 田林 洋樹1, 佐久間 建太3 (1.医療法人 聖仁会 介護老人保健施設 ジョイウェルス桔梗, 2.医療法人 聖仁会 訪問リハビリテーション桔梗, 3.居宅介護支援事業所 そよかぜ桔梗)
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【はじめに】令和6年度の介護報酬改定後より、当施設訪問リハビリにおいても認知症短期集中リハビリテーション実施加算(以下認知症短期加算)を算定する運びとなった。今回新規で対応した認知症利用者について、訪問リハビリで何か特色を活かした関わりが出来ないかと検討し、進め方を工夫して対応した経過を報告する。
【目的・方法】研究目的は認知症を呈した利用者に対して、従来的な認知症患者への対応から一歩踏み込み、認知症短期加算に見合うリハビリ対応を検討・実践し、今後に活かす事で当事業所の認知症利用者への対応方法を確立する事にある。方法はリハビリ介入時の経過観察と展開される会話の記録をベースに、認知症の追加評価と家族への経過記録を提示、リハビリ計画は生活行為向上リハビリテーションの書式にて説明し理解を得た。
【症例紹介】80代女性。診断名はアルツハイマー型認知症。既往歴は心房細動・期外収縮。現病歴はX-10年、隣人に対する「庭の花を枯らされる」という被害妄想出現し、トラブルによる警察介入も数回あった。X-3年、上記診断にてメマリー内服処方され経過。現在まで同居の息子や近所の親切な住民からの支援を受けて在宅生活を継続できている。キーパーソンは次男様で、生活歴は酪農家の末っ子として生まれ、家の手伝いをしながら地元の呉服店の店員としての職歴がある。教職員である夫と結婚後は、専業主婦として2人の息子をいずれも教職員へ育てる。趣味は夫との共通の趣味である木彫りを長年行ってきて、生活雑貨は手作りの物が多い。同時に池坊生け花教室に通い、師範の免許も持っている為か花や植物を育てるのも好きである。訪問リハビリの利用は、元々通っていた運動系のデイサービスを拒否するようになり、自宅にこもって認知症状も進み、周囲が今後を心配しケアマネジャーの相談にて当訪問リハビリ開始となった。
【工夫した点】ご本人への工夫としては、運動に関してはデイサービスを拒否した経緯があるため、運動という言葉は使用せず、散歩・庭作りとした。生活上では落ち着きなく動き回るといった行動が目立った為、少しでも集中できる時間をと考え、ご本人の趣味である手工芸や花と連動させながら簡単な手作業を提供。その中では自信の回復とご本人らしさを引き出すために、正のフィードバックや回想を意識した会話を展開し精神面への安定化を図った。ご家族への工夫は、認知症のリハビリとしてどんな内容を実施しているのか、どんな効果を狙っているのか等を可視化・明確化するためにリハビリ経過記録を毎回作成し、訪問時に次男様に手渡し、これを基に会話する機会を持てるよう依頼した。リハビリの目標やプロセスに関しては生活行為向上リハビリテーション計画書を利用して説明し、了承の上サインを頂いた。
【使用した評価】リハビリテーションマネジメント加算の評価であるTUG・MMSE・BIに加え、興味チェックリスト・アルツハイマー型認知症であるためFASTの分類・キーパーソンへのDBD13を使用した。TUGの結果は初回17.10秒が最終で14.42秒、MMSEは初回が14点で最終が16点、BIは95点で変化なし。FASTの分類はステージ5で変化なし。DBD13は初回39点から42点に悪化した。
【実施プログラム】基本は運動目的での庭作り・散歩・神社参拝と、集中できる時間の提供という目的で塗り絵や切り絵をベースに実施した。手作業に関しては、木彫り作品の手入れ・ビータッチアート等の作業も展開したが広がらなかった。会話は全工程共通として活動中の関わりとして意識的に実施した。
【リハビリ経過】運動としての散歩は当初は「歩けなくなった」「早く父さんの所に行きたいから」と拒否的であったが、庭いじり・花を見に行く・お参りに行くなどの名目で歩行範囲を拡大し、最終的には「散歩に行くものだ」と歩く事にも慣れて歩行距離は伸びていった。協力してくれるご近所さんとの散歩も要因として大きい。手作業も当初は「手が痺れる(原因不明)」「目が見えない」と拒否的だったが、花が好き・手作業が得意という側面を活かして簡単な塗り絵や切り絵を提供。最終的には作業にも慣れてこの時間を楽しみにするようになり、集中時間が拡大し、自ら作品を展示するようになった。活動中の会話についてもご本人の行動を受け入れ、活動を通じながらじっくりと語りに耳を傾けた。結果として話の内容が「遠い過去の話」から「近所の人と散歩に行った」「ケアマネがいなくなった(変更)」「息子と昼ご飯を食べた」等、最近の状況を思い出して話す事が増えていった。次男様への経過記録については「こういうのがあれば助かります」と話され、これを通じてご本人と買い物に行ったり、花火大会に連れて行ってくれたり、忘れてしまう薬を飲むように促してくれたりと、より気にかけて動いてくれるようになった。DBD13の結果は悪化したが「最初に比べると頻回にあった落ち込みは無くなった」と話された。
【考察・終わりに】ご本人の介入結果として評価結果の改善が認められたが、これは機能的な向上というよりは、担当者との関係性構築と慣れによるものが大きいと考えられる。3カ月という期間はあるが、基本はじっくり寄り添い、対象者理解を深める事が大切であると感じた。ご家族については、経過の可視化や生活行為でまとめた事で、こちらの介入目的や考え、そもそも対象者と何をしているのか等が明確となり、安心と理解が得られ「一緒に関わる」という動きに繋がったと考える。今後、認知症患者様を担当する機会があれば、今回の実践を踏まえた上で、さらなる研鑽と工夫を加えて効果的にリハビリを提供していきたい。