講演情報

[27-O-L004-05]舌部振動刺激の効果およびその臨床的可能性の検討口腔機能向上サービスを利用する要介護高齢者への介入

長崎県 田口 義久1, 前田 大2, 神田 志穂3 (1.介護老人保健施設 末広荘, 2.介護老人保健施設 リハビリセンターふくえ, 3.介護老人保健施設サンライズ・ビュー)
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【はじめに】高齢者の自立支援には、運動・口腔・栄養に関する複合的な介護サービスの提供が必要である。通所サービスにおいて算定可能な口腔機能向上加算もその一端を担っている。近年の摂食嚥下分野の研究では、口腔への振動刺激が嚥下機能の賦活に有効であるとされている。そこで我々は、3施設共同で、通所リハビリテーション(以下通所リハ)を利用する要介護高齢者のうち、口腔機能が様々な要因で低下した方を対象に、舌への振動刺激を行った。口腔刺激が嚥下運動を誘発する可能性に着目し、刺激前後の嚥下閾値を反復唾液嚥下テスト(以下RSST)で評価したため、その結果を報告する。【対象】対象は2025年1月から3月の期間に、3施設の通所リハを利用し、かつ口腔機能向上加算を算定していた要介護高齢者のうち、指示理解が可能であった63名(男性24名、女性39名、平均年齢83.79±8.47歳、平均介護度2.14±1.08)である。【方法】使用機器は、創通メディカル社製RIBIVE MINIに独自開発の口腔刺激用アタッチメントを装着し、そこに舌圧子を取り付けたものを用いた。刺激前にRSSTを実施し、舌背前1/2部に対し約50Hz、振幅7mmの低周波・高振幅の振動を5秒間与え、1秒休息を挟みながら計10回刺激を行った。刺激後に再度RSSTを実施し、前後で比較を行った。各施設の言語聴覚士が刺激および評価を担当した。【結果】RSSTのカットオフ値である「30秒間に3回以上の嚥下」が可能であった割合は、刺激前が約23%、刺激後には約62%と有意に増加した。また、RSSTの値は、増加が約68%、変化なしが約27%、減少が約5%であった。ウィルコクソン検定による比較では、刺激前後のRSSTにおいてP<0.001となり、1%水準で有意差を認めた。効果量も0.891と大きく、強い効果が示された。【考察】多くの文献では、嚥下運動の誘発には末梢の感覚受容器から脳幹の孤束核への感覚入力が重要であり、有効なトリガーポイントとして前口蓋弓、奥舌、喉頭蓋谷、梨状窩、喉頭口が挙げられている。しかし、高齢者においては、トリガーポイントがより下部の咽頭領域に移行していると報告されている。今回使用した低周波・高振幅の振動刺激は、舌背への刺激が舌全体から咽喉頭部にまで伝わる特性を有しており、これが咽頭下部の感覚受容器への入力を促し、嚥下運動を誘発したと考えられる。通所リハを利用する在宅高齢者の多くは重度の嚥下障害は有していないものの、軽度のムセがみられることは少なくない。その要因として、加齢や機能低下によるトリガーポイントの変化や嚥下閾値の低下が関係していると考えられる。従来の通所リハにおける口腔機能向上の介入では、ムセに対してトロミや食形態の調整・指導が中心であり、徒手的な対応は限られていた。しかし、利用者の中にはトロミの使用や食形態の変更を拒否するケースもあり、現場での対応が困難となる場面も多かった。本研究では、舌への振動刺激を用いて嚥下機能の賦活を試みた結果、嚥下反射閾値の改善が認められた。今後さらなる検証が必要であるが、通所リハの限られた時間内で行える新たな介入手段として、舌への振動刺激は短時間で効果を示す可能性のある嚥下アプローチであると考えられる。