講演情報
[27-O-L009-01]屋外歩行強化で在宅高齢者の屋外活動を支えたい!
大阪府 ○山住 恵, 西山 晃秀, 面谷 知一, 塩田 敏久 (松下老人保健施設はーとぴあ)
【背景と目的】
当施設は大阪府守口市にある。守口市は高齢者世帯に占める一人暮らしの割合が38.7%と高い傾向にあり、在宅生活継続のためには、買い物等の屋外活動を高齢者自身が行う必要が多い。市域は概ね平坦な地形で、リハビリ会議では買い物や通院の移動手段として屋外歩行の耐久性の向上が課題に挙がることが多い。一方、通所リハビリで自立歩行ができるようになっても、生活圏では外出しない利用者が少なくないように感じていた。そこで、多職種連携で屋外歩行の取り組みを強化し、生活圏での活動性向上をめざして様々な取組みを行った。それらの取組みを振り返り、実践の効果と今後の展望について考察したので報告する。
【対象および方法】
取り組み期間:2024年4月~2025年5月
1.歩行距離延長を意識した屋外歩行の取組みを行った。
a)屋外歩行マップを作製した。施設周辺の屋外歩行コースの距離を計測し、地図上にコースを図示して施設内に掲示した。屋外歩行コースは、約300m、約500m、約750m、約1000mと段階づけて設定した。
b)リハビリ職の個別リハビリ時に屋外歩行を積極的に実施した。屋外歩行マップを用いて、何m歩いたかを利用者へフィードバックした。
c)介護職が集団歩行を実施した。猛暑期と寒冷期を除く2024年4月~6月、10月~11月、2025年3月~5月に「屋外歩行週間」と称し、雨天以外の毎日14時から30分間、集団屋外歩行を実施した。屋外歩行路は、屋外歩行マップで定めた約300mコースまたは約500mコースを歩いた。
d)トレッドミルを活用し、天候が悪い時期にも連続歩行距離を意識した活動を継続した。歩行速度ごとに何分歩くと500m、1kmに到達するかを表にして掲示し、利用者自身で連続歩行距離を意識しやすいよう環境設定をした。
2.利用者の自己効力感を高める取り組みを行った。
a)リハビリ会議を活用し、買い物や通院等の外出先を具体的に聞き取り、自宅からの距離をスマホアプリで算出し生活圏での目標歩行距離を設定した。また、屋外歩行練習で実施できた連続歩行距離と照らし合わせて生活圏での移動能力を判定し、利用者と家族にフィードバックした。
b)自主トレをイベント化し、表彰する取り組みを実施した。年末には、年間で歩行機能が向上した人を表彰した。
3.取り組み開始以降に通所リハビリを利用開始した全ての利用者を対象に、バーセルインデックスの平地歩行のスコア(以下BI平地歩行と略)、生活空間評価(Life Space Assessment,以下LSAと略)、連続歩行距離、転倒不安尺度の4つの項目について、利用開始時、利用開始3か月後、利用開始6か月後のデータを取組み期間内に蓄積した。
【結果】
屋外歩行の取組みには、個別リハビリの屋外歩行と介護職の集団歩行をあわせて一日あたり約10人、期間中延べ約1600人の利用者が参加でき、屋外歩行の反復経験に役立った。自主トレでトレッドミルもよく活用され、「あと何分で1kmになるから」と利用者自身で歩行時間を延長する行動変容が見られた。リハビリ会議にて連続歩行距離が生活圏で必要な屋外歩行距離に十分に達していることをフィードバックしたことにより、利用者の外出範囲拡大につながったケースや、家族の不安を解消でき利用者単独での散歩を再開できたケースがあった。
取り組み開始後に利用開始し6か月以上利用継続した利用者は62人で、そのうち利用開始3か月後に向上が見られたのは、転倒不安尺度14人(23%)、LSA12人(18%)、連続歩行距離8人(13%)、BI平地歩行5人(8%)の順だった。利用開始6か月後では連続歩行距離17人(28%)、LSA16人(26%)、転倒不安尺度16人(26%)、BI平地歩行7人(13%)の順に向上が見られた。LSAが6か月後に向上した16人の、他の項目変化との一致率は、転倒不安尺度向上が15人(94%)、連続歩行距離向上8人(50%)、BI平地歩行向上5人(31%)だった。
【考察】
利用者が通所リハビリで獲得できた歩行能力を生活圏での活動につなげるためには、屋外歩行の反復経験と歩行能力向上による連続歩行距離延長が、転倒不安を減らし生活圏を拡大する基盤になると仮定して取り組みを実施したが、結果から、転倒不安の解消が先立ち、連続歩行距離が後から延長する傾向がわかった。また、6か月後にLSA向上がみられた利用者16人の他の項目との一致率を見ると、転倒不安尺度が94%と非常に高いことからも転倒不安の軽減が利用者の活動性向上に直接影響することが示された。
転倒不安尺度の改善が身体的な項目の改善よりも早期から見られることから、利用者の生活圏での活動が縮小した要因は、筋力体力の低下よりも、活動経験不足による影響が大きかったと考える。通所利用開始と屋外歩行の反復経験によっておのずと活動が増え、活動不足で衰えた運動制御の再構築ができるようになった、あるいは心理的効果により活動に対する転倒不安が改善したと考える。
心理的効果としては、自己効力感を高める取り組みが効果的だったと思われ、生活圏で必要な距離を意識した歩行の取組みは、利用者個々のモチベーションを上げ行動変容を促すきっかけになり、相乗効果として屋外歩行の反復経験を積み重ねることができたとも考えられる。また、自主トレイベントや表彰式は利用者同士が日頃の努力を称え合い目標達成を意識する機会になったと考える。これらの取り組みは、多職種で利用者に寄り添い支える通所リハビリの得意分野であり、今後は、転倒不安を減らすアプローチ方法を具体化する取り組みを追加し、さらに生活圏拡大、外出活動の支えへと繋げていきたい。
【結語】
通所リハビリでの多職種での屋外歩行経験は、高齢者の転倒不安の軽減に役立つ。その結果、生活圏が拡大し、6か月以上の通所リハビリ利用は連続歩行距離の延長にも有効だった。今後、多職種連携で転倒不安の解消のアプローチを推進することが高齢者の外出活動の支えに繋がる。
当施設は大阪府守口市にある。守口市は高齢者世帯に占める一人暮らしの割合が38.7%と高い傾向にあり、在宅生活継続のためには、買い物等の屋外活動を高齢者自身が行う必要が多い。市域は概ね平坦な地形で、リハビリ会議では買い物や通院の移動手段として屋外歩行の耐久性の向上が課題に挙がることが多い。一方、通所リハビリで自立歩行ができるようになっても、生活圏では外出しない利用者が少なくないように感じていた。そこで、多職種連携で屋外歩行の取り組みを強化し、生活圏での活動性向上をめざして様々な取組みを行った。それらの取組みを振り返り、実践の効果と今後の展望について考察したので報告する。
【対象および方法】
取り組み期間:2024年4月~2025年5月
1.歩行距離延長を意識した屋外歩行の取組みを行った。
a)屋外歩行マップを作製した。施設周辺の屋外歩行コースの距離を計測し、地図上にコースを図示して施設内に掲示した。屋外歩行コースは、約300m、約500m、約750m、約1000mと段階づけて設定した。
b)リハビリ職の個別リハビリ時に屋外歩行を積極的に実施した。屋外歩行マップを用いて、何m歩いたかを利用者へフィードバックした。
c)介護職が集団歩行を実施した。猛暑期と寒冷期を除く2024年4月~6月、10月~11月、2025年3月~5月に「屋外歩行週間」と称し、雨天以外の毎日14時から30分間、集団屋外歩行を実施した。屋外歩行路は、屋外歩行マップで定めた約300mコースまたは約500mコースを歩いた。
d)トレッドミルを活用し、天候が悪い時期にも連続歩行距離を意識した活動を継続した。歩行速度ごとに何分歩くと500m、1kmに到達するかを表にして掲示し、利用者自身で連続歩行距離を意識しやすいよう環境設定をした。
2.利用者の自己効力感を高める取り組みを行った。
a)リハビリ会議を活用し、買い物や通院等の外出先を具体的に聞き取り、自宅からの距離をスマホアプリで算出し生活圏での目標歩行距離を設定した。また、屋外歩行練習で実施できた連続歩行距離と照らし合わせて生活圏での移動能力を判定し、利用者と家族にフィードバックした。
b)自主トレをイベント化し、表彰する取り組みを実施した。年末には、年間で歩行機能が向上した人を表彰した。
3.取り組み開始以降に通所リハビリを利用開始した全ての利用者を対象に、バーセルインデックスの平地歩行のスコア(以下BI平地歩行と略)、生活空間評価(Life Space Assessment,以下LSAと略)、連続歩行距離、転倒不安尺度の4つの項目について、利用開始時、利用開始3か月後、利用開始6か月後のデータを取組み期間内に蓄積した。
【結果】
屋外歩行の取組みには、個別リハビリの屋外歩行と介護職の集団歩行をあわせて一日あたり約10人、期間中延べ約1600人の利用者が参加でき、屋外歩行の反復経験に役立った。自主トレでトレッドミルもよく活用され、「あと何分で1kmになるから」と利用者自身で歩行時間を延長する行動変容が見られた。リハビリ会議にて連続歩行距離が生活圏で必要な屋外歩行距離に十分に達していることをフィードバックしたことにより、利用者の外出範囲拡大につながったケースや、家族の不安を解消でき利用者単独での散歩を再開できたケースがあった。
取り組み開始後に利用開始し6か月以上利用継続した利用者は62人で、そのうち利用開始3か月後に向上が見られたのは、転倒不安尺度14人(23%)、LSA12人(18%)、連続歩行距離8人(13%)、BI平地歩行5人(8%)の順だった。利用開始6か月後では連続歩行距離17人(28%)、LSA16人(26%)、転倒不安尺度16人(26%)、BI平地歩行7人(13%)の順に向上が見られた。LSAが6か月後に向上した16人の、他の項目変化との一致率は、転倒不安尺度向上が15人(94%)、連続歩行距離向上8人(50%)、BI平地歩行向上5人(31%)だった。
【考察】
利用者が通所リハビリで獲得できた歩行能力を生活圏での活動につなげるためには、屋外歩行の反復経験と歩行能力向上による連続歩行距離延長が、転倒不安を減らし生活圏を拡大する基盤になると仮定して取り組みを実施したが、結果から、転倒不安の解消が先立ち、連続歩行距離が後から延長する傾向がわかった。また、6か月後にLSA向上がみられた利用者16人の他の項目との一致率を見ると、転倒不安尺度が94%と非常に高いことからも転倒不安の軽減が利用者の活動性向上に直接影響することが示された。
転倒不安尺度の改善が身体的な項目の改善よりも早期から見られることから、利用者の生活圏での活動が縮小した要因は、筋力体力の低下よりも、活動経験不足による影響が大きかったと考える。通所利用開始と屋外歩行の反復経験によっておのずと活動が増え、活動不足で衰えた運動制御の再構築ができるようになった、あるいは心理的効果により活動に対する転倒不安が改善したと考える。
心理的効果としては、自己効力感を高める取り組みが効果的だったと思われ、生活圏で必要な距離を意識した歩行の取組みは、利用者個々のモチベーションを上げ行動変容を促すきっかけになり、相乗効果として屋外歩行の反復経験を積み重ねることができたとも考えられる。また、自主トレイベントや表彰式は利用者同士が日頃の努力を称え合い目標達成を意識する機会になったと考える。これらの取り組みは、多職種で利用者に寄り添い支える通所リハビリの得意分野であり、今後は、転倒不安を減らすアプローチ方法を具体化する取り組みを追加し、さらに生活圏拡大、外出活動の支えへと繋げていきたい。
【結語】
通所リハビリでの多職種での屋外歩行経験は、高齢者の転倒不安の軽減に役立つ。その結果、生活圏が拡大し、6か月以上の通所リハビリ利用は連続歩行距離の延長にも有効だった。今後、多職種連携で転倒不安の解消のアプローチを推進することが高齢者の外出活動の支えに繋がる。
