講演情報

[27-O-L009-02]歩行予備能における評価指標としての有用性

長野県 笠原 健稔, 大兼政 亮起, 寺澤 翔也, 牛山 保乃花 (社会福祉法人 サン・ビジョン 大型デイケアセンター グレイスフル下諏訪)
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はじめに当施設では運動成果の可視化を目的に体力測定を開始した。3ヶ月置きに開催し、10m歩行テスト(Walkimg Time:以下WT)を実施した。測定結果はカットオフ値や前回、結果との比較を行い、快適速度(Comfortable Walking Time:以下CWT)と最大速度(Maximum Walking Time:以下MWT)の差について振り返りを行った。通常機能と通常機能以上に発揮される最大機能との差を予備能と言い、1)橋立らは歩行予備能と称し、生活範囲、生活機能と密接に関連する指標であると報告した。先行研究では他の応用歩行検査を用いての研究が多く、WTにおける予備能への報告は少ない。本研究ではWTにおける予備能を評価指標としての有用性について検討した。方法検査項目WTの測定は測定回として2024年度に計4回実施した。CWT、MWTそれぞれ1度行い、歩行速度(m/s)快適歩数(Comfortable Walking Time Steps:以下CWTS)最大歩数(Maximum Walking Time Steps:以下MWTS)を測定した。CWT、MWT計測前には「いつも通り、普通に歩いて下さい。」「先程より転ばないように早く歩いて下さい。」と説明し、計測した。歩行予備能は最大機能に対する至適機能との差を示す指標とした(WT Reserve:以下WT-R)。WT-Rは下記の式に基づいて算出した。WT-R=(MWTーCWT)/MWT*100/MWT対象測定回参加者を対象者とし性別、年齢、介護度、歩行形態を調査した。分析方法WT-RとCWT、MWT、CWTS、MWTSのPearson積率相関係数を算出し、関連性を検討した。また性別、歩行形態、介護度それぞれのWT-RについてWelchのt検定を用いて比較した。統計処理はNumbers、Stats tester miniを用いて、両側検定で危険率5%未満を有意水準とした。結果対象者は73名(男性27名、女性46名)。平均年齢は全体86.95歳(男性86.15歳、女性87.41歳)。平均介護度は要介護0.97。歩行形態では独歩29名、杖22名、歩行器22名。WT-RとCWT、MWT、CWTS、MWTSとのPearson積率相関係数では有意差は見られなかったものの全測定回においてMWT、MWTSに負の相関が見られた。性別のWT-RにおけるWelchのt検定では2回の測定回で有意差が見られた。歩行形態のWT-RにおけるWelchのt検定では杖・独歩にて2回の測定回で有意差が見られた。また独歩・歩行器においても1回の測定回で有意差が見られた。介護度のWT-RにおけるWelchのt検定で要介護1・2また要支援1・2にて1回の測定回で有意差が見られた。考察本研究ではWTにおける予備能を評価指標としての有用性を検証することを目的とし、測定及び分析を行った。WT-RにおけるWelchのt検定では歩行形態及び要介護度が低いことで有意差を認めた。2)大塚らは平均的な至適歩行速度が低下することで要介護発生リスクが上昇することを報告している。WT-Rの経時的な変化は歩行形態の低下、要介護状態への移行の予測となる指標として有用性が考えられる。WTの測定、WT-Rの算出を行い、経時的な変化を観察することが重要である。Pearson積率相関係数では有意差が見られなかったものの全測定回においてWT-RとMWT、MWTSに負の相関が見られた。3)森らは歩幅の低下は下肢筋力、動的バランス低下の判別をするスクリーニング指標となることを示唆した。4)関屋らは歩幅の増大には歩行率に比べて歩行速度の増大が影響することを報告している。WT-Rの明らかな増加、低下は容易に振り返りを行える。しかし微増、微減といった明確な振り返りが行いづらい場合でも利用者への振り返りをしなければいけない。その中でMWT、MWTSに着目し、WT-Rの振り返りをすることで明らかな変化がない利用者へもMWT、MWTSを用いて具体的な解釈、考察が出来るのではないかと考えた。今後の展望今回の研究を踏まえてWT-Rの測定、最大発揮について述べる。CWT測定前の説明では「普通に、いつも通り」と主観的な判断を基に測定した。MWTも同様に「今より早く」と主観的な判断であるがCWTとの比較が出来ることから再現性の高い測定値であると言える。しかしWT-Rを測定するにあたって現状のMWTの測定が最大発揮したと断定出来る要素が乏しい。MWTを実施した後の borg scale、恐怖感、Vas、Nrsを用いて最大発揮が行えているかの検証も必要であると考えた。本研究ではWT-Rとの関連がMWT、MWTSに示唆された。そのため最大発揮出来る人の特性にはどのような要素があるのか、WT-Rへ影響するのか調査する必要がある。まとめWT-Rの評価指標としての有用性を調査、分析し、考察した。WT-Rの経時的な変化を確認することで歩行形態の低下、要介護状態への移行を予測となることが考えられた。またWT-Rが低下している場合にはMWT、MWSTの影響が示唆された。予測としての指標が立証されているのか、WT-Rが上昇するためにはどのような要素があるのか引き続き、調査、分析を行っていく。引用文献1)橋立博幸:地域高齢者における応用歩行予備能の有用性と生活機能との関連 20062)Otsuka R:Twenty-year prospective cohort study of the association between gait speed and incident disability 20223)森耕平:地域在住女性高齢者における歩幅と身体機能との関連 20244)関屋昇:正常歩行における歩行速度、歩行率、歩幅の相互関係 1994