講演情報

[27-O-L009-07]訪問リハビリ事業所医師の診察の在り方を考えるアンケート調査で分かったこと

静岡県 豊島 久美 (介護老人保健施設 白梅ケアホーム)
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【はじめに】
訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)の利用には適切なリハビリテーション(以下リハビリ)を提供するために医師の診察が必要である.介護保険の場合は原則3ヶ月内に1回事業所医師の診察を行い,リハビリ計画を作成する.当訪問リハでは事業所医師が利用者の自宅へ訪問して診察を行っている.令和4年度生活期リハビリテーションにおける適切な評価の在り方に関する調査研究事業より,医師の関わりについて介護支援専門員が期待する計画作成医の役割は「身体状況・障害に関する予後の説明や助言」「在宅生活における見通しやリスクの説明や助言」「関係医療機関の医師との連携・情報共有」であったと述べている.介護支援専門員の記述はあるが,利用者や利用者家族が訪問リハに関して医師へ期待することについての文献は少ない.
【目的】
今回,利用者にとって自宅に事業所医師が訪問して診察することに対して実際どのように思っているのか,また何を期待しているのか等を調査して,診察の在り方について考えていきたい.また,期待されていることが明らかになることでリハビリに対して利用者の意欲向上につながると考える.
【方法】
当訪問リハの利用者で1年以上利用を継続している方を対象に,医師の診察に関するアンケート調査を実施した.なお,対象の利用者はアンケートの内容に理解があり,意欲的にリハビリを受けている方を選定した結果,女性5名から協力を得られた.アンケートの内容は「医師が訪問する診察についてどう思いますか」「医師が訪問する診察は有益だと感じたことは何か.また期待していることは何ですか」「満足度を教えてください.その理由は何ですか」と自由記載形式、5段階の満足度調査とした.
【結果】
5名の利用者から協力を得て,アンケート調査を実施することが出来た.以下に気になった記載のみを示して報告する.
「医師が訪問する診察についてどう思いますか」に対して記載は「訪問してくれてとても有難い.自分で動けないし,精神的に安心する場所にきて頂けるから助かる」「とても有難いです.以前は病院に行って診察していましたが,1時間半待って診察1分,そして行く度に先生が変わってすごく不思議に思っていた」「しっかりとした医師の話が聞けて安心して良いなと思いました」「とても丁寧,具合悪いときに相談出来たことが安心して良かった」.
続いて「医師が訪問する診察は有益だと感じたことは何か,また期待していることは何ですか」に対して記載は「病気やリハビリに関して相談出来て知識が豊富だから信頼できると思った,とても助かる」「せっかく来て頂いているので色々と提案,助言をして頂きたい.自分の身体について判断できない部分を意見してほしい」「家族は自分に遠慮して何も言えないことがあるので,第3者で関係ない人から助言してもらえることが嫌ではない」「歳を取ると褒められなくなるから微笑んで褒められると嬉しいです」「もっと評価してほしいし,現状維持でも褒めてもらいたい」と述べられている.
最後に「満足度を教えてください.その理由は何ですか」に対して「大変満足.内科の先生より長く時間をとって説明して下さるから」「満足.とても丁寧だからこれからリハビリを良くしてくれると期待した」「大変満足.医師による知識で言ってもらえるから」「大変満足.安心できる場所で説明して下さるので助かる」と大変満足と回答する方が多かった.
【考察】
アンケート調査の結果より,医師が訪問する診察について全体的に満足度は高く,自由記載のアンケートで理由を明確に回答されていた.有難さと感謝の認識がみられ,利用者にとって負担なく,かつ安心できる自宅で医師と1対1で話が出来る事が精神的安定になっていることが分かった.また,代弁してほしい,医療知識が豊富な医師に対し信頼できるという記載からも精神的安定を得たい心理が働いていると伺える.
今回もっとも印象深かったことは「褒められたい」という部分である.高齢者はさまざまな機能の低下により,どうしてもケアの対象としての立場に立たされがちである(榎本,2006),人から世話を受けなければならない,つまり自立できない存在であると自分自身を認めざるを得ないとき,人は卑屈になったり,自尊心を低下させたりしがちである(榎本,2006).これまで社会的に自立して地位等を確立してきた存在がさまざまな喪失を経験する中で,現状維持でも何でも自身が頑張っていることを褒められることで自尊心の回復を自然に図っていると考える.
今回家族や他の医療従事者ではなく,先に述べた信頼できる存在である医師に褒めてもらうことがポイントである.患者との信頼関係の構築について生活習慣の改善に頑張った患者を褒めることは患者のポジティブ・フェイス(親近欲求:他者から理解され,共感され,称賛されたい欲求)を満たし,行動変容を後押しする(吉岡,2008).よって医師が訪問する診察は利用者にとって精神的安定,自尊心の回復を図る時間になると推測する.診察の在り方を考える上で事前に健康状態,生活状況,リハビリ内容とその成果等の利用者の置かれた現状や日々の取り組みを把握する必要がある.今回の調査で自尊心の回復からリハビリに対して利用者の意欲向上につなげるよう医師と情報を共有し連携することが大切であると改めて理解することが出来た.
【終わりに】
今回アンケートに答えられる利用者を限定したことで女性だけとなり,偏った調査となってしまう.また質問の「診察についてどう思うか」と「満足度の理由」について内容が似ており回答が重複する形となり,今後アンケート内容について検討する必要があり,次に活かしたい.