講演情報
[27-O-L012-04]痛みの軽減はちぎり絵から~小集団活動での経験~
京都府 ○柴田 景子1, 加藤 直子1, 中 聡之1, 布施 春樹1 (1.介護老人保健施設すこやかの森, 2.介護老人保健施設すこやかの森)
【はじめに】
集団療法には、治療者と援助者との二者関係で成り立つ個別療法と比べ多くの因子が肯定的に働くことがある。今回認知機能も身体機能も高いが痛みの訴えがあり、不安や否定的発言が多い入所者に対して集団活動を定期的に開催した結果、痛みの訴えが減り活動意欲が高まった。その経過について報告する。
【目的】
入所者は93歳女性で介護度2。Barthel Index80点、長谷川式認知症スケール29点。自立度は高いが起床時に腰痛があった。慢性的な痛みに対し筋力トレーニング、コンディショニング、プーリー運動を実施していたが慢性痛の改善が乏しく、Numerical Rating Scale(以下、NRS)8であった。鎮痛剤は使用しておらず。いつも不安や否定的発言が多かった。余暇の充足や不安の緩和のため、その入所者にちぎり絵の会に入ってもらった。
【方法】
当施設では、週に1回5~6名程度の小集団でちぎり絵創作活動を実施している。会では季節にちなんだ花や生き物、食べ物などから題材を選んでいただき制作する。作品は玄関に近いエリアに掲示する。人に見てもらい褒めてもらい自信に繋がることも目的としている。週1回時間を設けてはいるが、各々が作品を持ち帰り余暇時間にお部屋で取り組むこともできる。
【結果】
1か月ほど経過する中で、「退屈やから部屋でもやりたい」「図案の参考となるものがほしい」といわれるようになった。ちぎり絵をデイケアの友人、そして夫への誕生日プレゼントとして渡したいと、それぞれに手紙を添えて渡された。その次には打ち出の小づちでみんなが幸せになれますようにと広く人々の幸せを願って小づちの作品を作られた。氏からは不安よりも自信にあふれる発言が聞かれるようになった。「施設では家事をしないので献立を立てることもない。ちぎり絵の題材を考えることは、次は何を作ろうかと楽しみを考える機会になる」とおっしゃったこともあった。会を定期的に開催して3か月ほど経過した頃、腰痛の訴えが軽減した。腰痛に関してNRSが8から2へ軽減した。
【考察】
腰痛がNRS8から2へ軽減したことに関して考察を行った。
山根によると、集団療法では他者と同じ場所や活動を共有するなかで自身の安心感や他者との親密感が生まれるという。普遍的体験や、人と触れ合い人の役に立ったり自分の考えを認められたり褒められたりする愛他的体験を通じて自信が生まれ、現在を生きる希望をもたらす効果があると考えている。氏は小集団活動を通して、また日々の生活の中での人との交流を通してこれらの快刺激を得ることができたと考える。
森岡によると、近年慢性痛は脳の機能不全によるもの、心理社会側面の影響が大きく社会的役割が損失されることは痛みの悪循環を生み出すと言う。内側前頭前野の過活動は痛みの増強に影響し、背外側前頭前野の活性化は痛みを抑制し目標志向的に行動を起こすためには重要である。人間には脊髄レベルで疼痛を抑制する下行性疼痛抑制系の働きが備わっているが、その抑制が正常に作動するためには人との関わりの中で社会的役割を持ち、快刺激を得ることが重要である。
この入所者は、施設に入所してからご自宅で過ごしていた頃のような季節を感じる体験や知人との交流が少なくなり社会的役割が低下した。しかし、ちぎり絵創作活動をする中で、自身の巧緻動作遂行能力を確信されただけでなく、人から褒められる体験や人を喜ばせる体験を得た。これらが快の気持ちを生み、自信となった。また目標や計画を立てる機会が増え、前頭野の活性化につながり自ら楽しみを作り出せるようになり、余暇が充実したものに変わったのではないかと考えた。これらはアイデンティティーの確立や社会的役割を生み出し慢性痛の軽減にもつながったのではないかと考えた。
【結語】
今回、歩行が自立されており自立度が高いが、不安や腰痛のみられる方に対し、運動療法に加えてちぎり絵の創作活動を行ったことが腰痛の軽減にもつながったとの一考察を行った。老健に来られる高齢者は、これまでの社会のつながりを離れてご入所されている。新たなコミュニティーの中での人とのつながりや役割を生み出すことのきっかけを作る橋渡しが我々職員には必要であると痛感した。また、普段個別理学療法をする機会が多いが小集団活動の大きな効用と可能性が見いだされ、大変貴重な経験となった。
集団療法には、治療者と援助者との二者関係で成り立つ個別療法と比べ多くの因子が肯定的に働くことがある。今回認知機能も身体機能も高いが痛みの訴えがあり、不安や否定的発言が多い入所者に対して集団活動を定期的に開催した結果、痛みの訴えが減り活動意欲が高まった。その経過について報告する。
【目的】
入所者は93歳女性で介護度2。Barthel Index80点、長谷川式認知症スケール29点。自立度は高いが起床時に腰痛があった。慢性的な痛みに対し筋力トレーニング、コンディショニング、プーリー運動を実施していたが慢性痛の改善が乏しく、Numerical Rating Scale(以下、NRS)8であった。鎮痛剤は使用しておらず。いつも不安や否定的発言が多かった。余暇の充足や不安の緩和のため、その入所者にちぎり絵の会に入ってもらった。
【方法】
当施設では、週に1回5~6名程度の小集団でちぎり絵創作活動を実施している。会では季節にちなんだ花や生き物、食べ物などから題材を選んでいただき制作する。作品は玄関に近いエリアに掲示する。人に見てもらい褒めてもらい自信に繋がることも目的としている。週1回時間を設けてはいるが、各々が作品を持ち帰り余暇時間にお部屋で取り組むこともできる。
【結果】
1か月ほど経過する中で、「退屈やから部屋でもやりたい」「図案の参考となるものがほしい」といわれるようになった。ちぎり絵をデイケアの友人、そして夫への誕生日プレゼントとして渡したいと、それぞれに手紙を添えて渡された。その次には打ち出の小づちでみんなが幸せになれますようにと広く人々の幸せを願って小づちの作品を作られた。氏からは不安よりも自信にあふれる発言が聞かれるようになった。「施設では家事をしないので献立を立てることもない。ちぎり絵の題材を考えることは、次は何を作ろうかと楽しみを考える機会になる」とおっしゃったこともあった。会を定期的に開催して3か月ほど経過した頃、腰痛の訴えが軽減した。腰痛に関してNRSが8から2へ軽減した。
【考察】
腰痛がNRS8から2へ軽減したことに関して考察を行った。
山根によると、集団療法では他者と同じ場所や活動を共有するなかで自身の安心感や他者との親密感が生まれるという。普遍的体験や、人と触れ合い人の役に立ったり自分の考えを認められたり褒められたりする愛他的体験を通じて自信が生まれ、現在を生きる希望をもたらす効果があると考えている。氏は小集団活動を通して、また日々の生活の中での人との交流を通してこれらの快刺激を得ることができたと考える。
森岡によると、近年慢性痛は脳の機能不全によるもの、心理社会側面の影響が大きく社会的役割が損失されることは痛みの悪循環を生み出すと言う。内側前頭前野の過活動は痛みの増強に影響し、背外側前頭前野の活性化は痛みを抑制し目標志向的に行動を起こすためには重要である。人間には脊髄レベルで疼痛を抑制する下行性疼痛抑制系の働きが備わっているが、その抑制が正常に作動するためには人との関わりの中で社会的役割を持ち、快刺激を得ることが重要である。
この入所者は、施設に入所してからご自宅で過ごしていた頃のような季節を感じる体験や知人との交流が少なくなり社会的役割が低下した。しかし、ちぎり絵創作活動をする中で、自身の巧緻動作遂行能力を確信されただけでなく、人から褒められる体験や人を喜ばせる体験を得た。これらが快の気持ちを生み、自信となった。また目標や計画を立てる機会が増え、前頭野の活性化につながり自ら楽しみを作り出せるようになり、余暇が充実したものに変わったのではないかと考えた。これらはアイデンティティーの確立や社会的役割を生み出し慢性痛の軽減にもつながったのではないかと考えた。
【結語】
今回、歩行が自立されており自立度が高いが、不安や腰痛のみられる方に対し、運動療法に加えてちぎり絵の創作活動を行ったことが腰痛の軽減にもつながったとの一考察を行った。老健に来られる高齢者は、これまでの社会のつながりを離れてご入所されている。新たなコミュニティーの中での人とのつながりや役割を生み出すことのきっかけを作る橋渡しが我々職員には必要であると痛感した。また、普段個別理学療法をする機会が多いが小集団活動の大きな効用と可能性が見いだされ、大変貴重な経験となった。
