講演情報

[27-O-L012-06]訪問言語聴覚療法の動向と失語症者の支援について

鳥取県 佐々 智彦 (介護老人保健施設さかい幸朋苑)
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【はじめに】
全国に失語症者は推定50万人いるといわれており1)、新規発症数は年間およそ6万人と推定されその中で3万6千人程度が後遺症を残すと考えられている。2)
今回訪問言語聴覚療法(以下訪問言語リハ)の各年の総件数、失語症者の件数について調査した。訪問言語リハの失語症者の動向を調査し、社会支援に繋ぐ橋渡しの役割としてSTに出来る事について考察を交え報告する。
【方法】
2020年~2024年当施設で訪問リハビリテーション、訪問看護ステーションの訪問言語リハにおける各年の訪問件数、年齢、性別、介護度、失語症者の割合、重症度、タイプ分類、疾患別、リハビリ内容、発症後介入開始までの期間をカルテ、聞き取りから調査した。
【結果】
男性81名女性51名(男61%女39%)平均年齢80.3±2.2歳であり平均介護度要介護3.1失語症者では要介護1.4であった。原因疾患別は脳血管疾患75名神経筋疾患41名頭部外傷6名精神疾患5名であった。
訪問介入件数は年平均26.4件、失語症者介入7.8件であった。5年間の障害別内訳は嚥下障害55名(42%)失語症39名(30%)構音障害35名(26%)認知症3名(2%)であった。
失語症者の割合は2020年7名(23%)であったが2023年は11名(38%)であった。2020年~2024年失語症者の重症度平均は、軽度13名(33%)中等度12名(31%)重度14名(36%)であり、軽度失語症は2020年1名(14%)であったが2024年は4名(50%)に増加した。2020年~2024年のタイプ分類別平均は運動性失語28名(76%)感覚性失語9名(24%)であった。
失語症者年齢は2020年59歳以下は0人で60代1人(14%)70代以上6人(86%)であった。2024年は59歳以下2人(25%) 60代2人(25%)で全体の半数であり低年齢層の増加がみられた。
発症後リハビリ介入経過年について2020年は3年未満で介入になった失語症者は無く3年~5年以上経過した失語症者が6名(85%)いたが2024年は経過3年未満での介入が6名(75%)であり、発症後の介入までの期間が短縮する傾向であった。
【考察】
当施設のある鳥取県内通所事業所では言語機能評価、訓練、地域社会への復帰を要する軽度失語症、要支援1~2の利用者が多く認められている3)事や介護保険関連施設では年齢、障害程度問わなければ失語症者は30万人に達する可能性がある4)事から今後も訪問言語リハの需要は潜在的にもあると考える。
今回の調査においても各年一定数の失語症者がおり軽度失語症者が増加している結果から、当施設のある鳥取県境港市において、通所、施設、在宅でのSTリハビリを包括的に実施できる事業所が無い点が要因と考える。
また、社会復帰に至るまでの支援サービスの拡充や失語症者向け意志疎通支援事業といった社会資源が徐々に認知されるようになった事で、必要な課題が明確なり、目標となる足掛かりとして訪問言語リハが選ばれる要因になっているのではないかと考える。
失語症者の年齢が~59歳と若年化している結果から、背景にコロナ禍での生活習慣、食事の変化による脳血管障害の発症低年齢化5)による一因もあったと考える。
また若年軽度失語症者において、年齢層の違いや複数の他者とのコミュニケーションが必要とされる通所リハビリに比べて、個別での訪問言語リハビリに対しての需要が高いのではないかと考えられる。
近年は発症後早期の介入開始に繋がっている結果から、失語症は長期改善が見込め退院後の生活を見据えた切れ目のないリハビリのニーズがあると考える。加えてケアマネージャーを中心とした多職種への広報活動等から訪問言語リハビリの必要性と存在が地域に徐々に認知されつつある事も早期介入の要因ではないかと考える。
また、早期介入し社会復帰や社会支援に繋げる為のニーズが出てきているのではないかと考える。失語症者では発症前後で対人交流の推定人数は10分の1程度に減少することが示されている。6)また失語症者の54%当事者家族の72%が社会参加に困難さを感じている7)事からも若年軽度失語症者にとって社会参加の足掛かりの場が必要ではないかと考える。
現状、社会資源の一つとして失語症者支援者事業の会話パートナーや失語症友の会、当施設での失語症特化型デイケア「げんごろう」言語交流会「ことのはカフェ」等地域資源はある。
当事者や家族には徐々に認知はされつつあるが、介護事業者において失語症者に関わる職種は主に介護福祉士,看護師である8)事からST自身が社会支援の制度や、事業についての知識を深め、必要な資源を提供する役割もあると考える。
【まとめ】
当施設のある鳥取県境港市では失語症者支援者数、定期的に集える場の不足等、課題はある中、多職種や地域に対して失語症者への理解を促し、意志疎通支援者への指導助言、社会支援の周知と多職種への情報共有等、失語症者、家族、地域に対しての橋渡しとしてSTとして多くの事が出来る事が示唆された。
【引用文献】
1)特定非営利活動法人日本失語症協議会2020
2)4)種村純 失語症患者の障害者認定に必要な日常生活制限の実態調査及び実数調査等に関する研究
3)8)小谷優平 種村純 鳥取県西部圏域の介護保険事業所における失語症者支援に関する実態調査 59,2022
5)厚生労働省令和5年患者調査概況2023
6)船山道隆,中川良尚.失語症者の対人交流はどれだけ減るか.臨床神経心理 15-19.2016
7)松田江美子,地域における失語症者への社会的支援2019