講演情報
[27-O-L012-08]老健施設でのHAL腰タイプ介護自立支援用の活用事例
大阪府 ○中井 一行, 松浦 直希, 杉山 樹加 (介護老人保健施設パークヒルズ田原苑)
【はじめに】
Hybrid Assistive Limb(以下HAL)は、人の運動意思を反映した生体電位信号に基づき、人と一体化して機能する世界初の装着型サイボーグである。人が身体を動かそうとすると、指令信号が脳から神経を通じて筋肉へ送られ、その動作を実現するように筋肉が動く。その際、微弱な「生体電位信号」が皮膚表面から漏れ出てくる。 これをHALが皮膚に貼ったセンサーで読み取り、パワーユニットを制御することで「装着者の意思」に従った動きをサポートする。
高齢者にとって、ベッドからの移動やトイレなどで行う立ち上がり動作はとても重要である。
HAL医療用下肢タイプは、神経・筋難病疾患に対しては保険適用が認められており、医療機関での治療が行われている。また、適用疾患外のパーキンソン病や脊髄疾患に対する HALの効果なども医療機関からは報告されているものの、介護老人保健施設などの高齢者施設でのHALの使用効果についての報告は少ない。
今回、当施設でHAL腰タイプ介護自立支援用(以下HAL腰タイプ)を使用し、立ち上がり動作の改善を目的にリハビリテーションを行った事例について報告する。
【方法】
対象は施設入所中の方で、1.65歳以上の高齢者、2.立ち上がりや歩行が見守りまたは自立で行える方、3.ペースメーカーを装着していない方、4.HAL腰タイプを使用してのリハビリテーションに理解が得られた方、以上の4つの基準に当てはまる方を対象とした。今回、右人工股関節置換術後の方(事例1)とパーキンソン病の方(事例2)を事例として紹介する。方法は、HAL腰タイプを装着し、1.骨盤前後傾、2.体幹前後屈運動、3.立ち座り、4.スクワット、以上の4つの運動を各10回×2set実施した。頻度は週2回で、回数は全10回とした。評価は、5回立ち上がりテスト、Timed up and Go(以下TUG)、とし、開始前、5回終了後、10回終了後の3回測定した。測定は各2回ずつ行い、平均値を測定値とした。また立ち上がり動作や立位姿勢の変化と運動実施中の生体電位信号の変化について、評価を行った。
【結果】
事例1、2ともに5回立ち上がりテスト、TUGともに数値の向上を認めた。HAL腰タイプ実施中の生体電位信号については、随意的な筋活動の発現・弛緩に応じた補助出力のオン・オフ制御が従来よりも適時・適切に行えるようになり、利用者の動作意図に沿った円滑な動作支援が行えるようになった。事例1については、立ち上がりの伸展相での膝伸展のタイミングが早かったが、股関節と膝関節が協調して伸展できるようになり、動作が円滑に行えるようになった。また立位姿勢では体幹、股関節ともに伸展した立位がとれるようになった。
【考察】
今回、HAL腰タイプ自立支援用を用いたリハビリテーションにより、事例1、2ともに5回立ち上がりテストおよびTUGにおいて改善を認めた。これは、生体電位信号を選択的に制御出来るようになったことにより、利用者の随意的な動作意図を適切に捉え、補助出力のオン・オフが適切なタイミングで行われた結果と考える。特に事例1では、従来みられていた膝伸展の先行が改善し、股関節・膝関節の協調した動作パターンが獲得された点は、HALの特性を活かした動作学習効果の現れと推察される。また、施設入所者を対象としたHAL腰タイプ使用例は限られているが、本事例より、高齢者施設においてもHALを活用した自立支援リハビリテーションが十分効果を期待できることが示唆された。さらに、動作意図に応じた補助出力制御がより円滑に行えることで、リハビリ場面において利用者が不安なく動作に集中できる環境が提供できたと考えられる。一方で、事例数が少ないこと、長期的効果の検証が行えていないこと、ならびに適応範囲の明確化が課題であり、今後はより多くの対象者に対する効果検証と、運動負荷や実施頻度・回数の最適化についても検討が必要と考える。
【結論】
HAL腰タイプを用いたリハビリテーションは、高齢者施設入所者においても、動作意図に応じた適時適切な動作補助が可能であり、立ち上がり動作や歩行能力の改善に寄与することが示唆された。今後、より多くの症例を対象とした効果検証と、実施方法の標準化を図ることで、高齢者施設における自立支援の新たな手段としての活用が期待される。
Hybrid Assistive Limb(以下HAL)は、人の運動意思を反映した生体電位信号に基づき、人と一体化して機能する世界初の装着型サイボーグである。人が身体を動かそうとすると、指令信号が脳から神経を通じて筋肉へ送られ、その動作を実現するように筋肉が動く。その際、微弱な「生体電位信号」が皮膚表面から漏れ出てくる。 これをHALが皮膚に貼ったセンサーで読み取り、パワーユニットを制御することで「装着者の意思」に従った動きをサポートする。
高齢者にとって、ベッドからの移動やトイレなどで行う立ち上がり動作はとても重要である。
HAL医療用下肢タイプは、神経・筋難病疾患に対しては保険適用が認められており、医療機関での治療が行われている。また、適用疾患外のパーキンソン病や脊髄疾患に対する HALの効果なども医療機関からは報告されているものの、介護老人保健施設などの高齢者施設でのHALの使用効果についての報告は少ない。
今回、当施設でHAL腰タイプ介護自立支援用(以下HAL腰タイプ)を使用し、立ち上がり動作の改善を目的にリハビリテーションを行った事例について報告する。
【方法】
対象は施設入所中の方で、1.65歳以上の高齢者、2.立ち上がりや歩行が見守りまたは自立で行える方、3.ペースメーカーを装着していない方、4.HAL腰タイプを使用してのリハビリテーションに理解が得られた方、以上の4つの基準に当てはまる方を対象とした。今回、右人工股関節置換術後の方(事例1)とパーキンソン病の方(事例2)を事例として紹介する。方法は、HAL腰タイプを装着し、1.骨盤前後傾、2.体幹前後屈運動、3.立ち座り、4.スクワット、以上の4つの運動を各10回×2set実施した。頻度は週2回で、回数は全10回とした。評価は、5回立ち上がりテスト、Timed up and Go(以下TUG)、とし、開始前、5回終了後、10回終了後の3回測定した。測定は各2回ずつ行い、平均値を測定値とした。また立ち上がり動作や立位姿勢の変化と運動実施中の生体電位信号の変化について、評価を行った。
【結果】
事例1、2ともに5回立ち上がりテスト、TUGともに数値の向上を認めた。HAL腰タイプ実施中の生体電位信号については、随意的な筋活動の発現・弛緩に応じた補助出力のオン・オフ制御が従来よりも適時・適切に行えるようになり、利用者の動作意図に沿った円滑な動作支援が行えるようになった。事例1については、立ち上がりの伸展相での膝伸展のタイミングが早かったが、股関節と膝関節が協調して伸展できるようになり、動作が円滑に行えるようになった。また立位姿勢では体幹、股関節ともに伸展した立位がとれるようになった。
【考察】
今回、HAL腰タイプ自立支援用を用いたリハビリテーションにより、事例1、2ともに5回立ち上がりテストおよびTUGにおいて改善を認めた。これは、生体電位信号を選択的に制御出来るようになったことにより、利用者の随意的な動作意図を適切に捉え、補助出力のオン・オフが適切なタイミングで行われた結果と考える。特に事例1では、従来みられていた膝伸展の先行が改善し、股関節・膝関節の協調した動作パターンが獲得された点は、HALの特性を活かした動作学習効果の現れと推察される。また、施設入所者を対象としたHAL腰タイプ使用例は限られているが、本事例より、高齢者施設においてもHALを活用した自立支援リハビリテーションが十分効果を期待できることが示唆された。さらに、動作意図に応じた補助出力制御がより円滑に行えることで、リハビリ場面において利用者が不安なく動作に集中できる環境が提供できたと考えられる。一方で、事例数が少ないこと、長期的効果の検証が行えていないこと、ならびに適応範囲の明確化が課題であり、今後はより多くの対象者に対する効果検証と、運動負荷や実施頻度・回数の最適化についても検討が必要と考える。
【結論】
HAL腰タイプを用いたリハビリテーションは、高齢者施設入所者においても、動作意図に応じた適時適切な動作補助が可能であり、立ち上がり動作や歩行能力の改善に寄与することが示唆された。今後、より多くの症例を対象とした効果検証と、実施方法の標準化を図ることで、高齢者施設における自立支援の新たな手段としての活用が期待される。
