講演情報

[27-O-M001-01]集中治療専門医が老健に勤務する意義

岡山県 田村 暢一朗, 鍛本 真一郎, 田辺 紀子 (老人保健施設老健あかね)
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目的日本では高齢化が進行し、医療と介護の連携がますます重要になっている。介護老人保健施設(以下、老健)は在宅復帰を目指す中間施設として、医療機関との密な連携が求められる。本演題では、集中治療専門医である筆者が老健において診療支援を行うことの意義と実際の活動内容について報告し、集中治療医の専門性が老健においてどのように活かされるかを検討する。方法筆者は急性期医療の最前線である救命救急センターに勤務する一方で、週1回、診療支援として医療療養病棟や回復期リハビリ病棟、老健を有する病院に赴き診療を行っている。老健において筆者が実際に関わった臨床場面や支援内容を記録・整理し、ICUでの知見との関連性を分析した。結果【1】感染症対応の支援COVID-19のクラスターが老健内で発生し、酸素10Lを必要とする患者が8名に達した。看護師1名で約50床を担当する体制の中、ゾーニングや抗ウイルス薬使用のプロトコール作成、TEL MEDICINEによるオンライン診療支援を実施した。【2】褥瘡や熱傷のデブリドメント在宅や他院から入所した利用者の皮膚トラブルに対し、積極的な感染管理とデブリドメントを行い、リハビリの停滞を防いだ。【3】体位ドレナージの提案誤嚥性肺炎や無気肺への対応として、腹臥位を含めた体位ドレナージの導入を提案。経管栄養・リハビリ計画を含む1日のスケジュールを作成し、チーム全体で意思統一を図った。【4】看取り支援看取り加算の導入を受けて、老健における看取りの質向上を目指し、本人・家族との面談を行った。特に介護士の経験不足や薬剤管理の難しさ、看取りに対する不安に対して、説明・教育・心理的支援を行った。考察集中治療室と老健では対象こそ異なるが、いずれも全身管理を必要とする高齢患者が中心である。ICUで培った全身管理能力、ACP(Advanced Care Planning)の実践経験、感染制御の知識は、医療資源が限られた老健において極めて有用である。また、地域包括ケアの一環として、急性期後のケアプロセスに関わることで、集中治療医自身が患者のその後の生活までを見通す視点を得られるというメリットもある。結論老健は地域包括ケアにおける重要な役割を担っており、急性期に近い医療対応が求められる場面も多い。一方で、医療リソースは限られており、対応の困難さが存在する。集中治療医の知識と経験は、老健で求められる医療に合致しており、診療支援は地域医療の質向上に資するのみならず、集中治療医自身の臨床的視野の拡張にもつながる。今後、急性期医療と介護施設との橋渡し役として、集中治療医の新たな関わり方が期待される。